第22話 試食という文化を持ち込みました!

売り子は可愛い2人に任せる。カリンが菓子パンを、カールは裁縫コーナーだ。


「このパン、ちょっと高くないかしら?」


1人の御婦人から質問が来る。


確かに高いのだ。


いわゆるプレーンなパンは家庭でも作れるし、町ならパン屋で売っている。

食パンの様なものやフランスパンの様なハードパンでも小銅貨1枚から3枚くらいの値段だから、この菓子パンの大きさで5枚は高いのだ。


「ご試食をどうぞ」


カリンには小さくカットした物を味見させるように言ってある。


爪楊枝は村の人に作ってもらったものだ。だいぶ大きい爪楊枝だが、手が汚れないというのは大事。回収も忘れない。(使い捨てにはできない…)


味見できるとわかると、周りの御婦人方がわっと手を出してくる。


あっという間に1個分が無くなる。


「……あら、…これは…」

「美味しい!」

「ホントに甘いわぁ」

「中のクリームが…」

「今まで食べたことないわ!」

「ナッツの食感もいい!」

「私、買うわ」

「私は3個よ!」


味見した8人がそれぞれ買い出した。

あっという間に持ってきた半分が無くなる。


それを見ていた若い女の子たちも集まる。


「カリン、試食させてあげてくれ」


再び繰り返す争奪戦。


そして瞬く間に売れていく。

中には友達と分けて食べる娘もいた。

高いからシェアしているのだ。


程なく売り切れてしまった。


すぐにパンの看板を下げる。

裁縫コーナーを広げるのだ。


その手際にお隣さん達が驚いている。

ふふふ。

文化祭のバザーコーナーもやった事もある俺だ。見ておれ。


布地だから1つを見本に広げるのだ。

カールが家畜用のベルを鳴らす。


カラン、カラン!


「安いよーー!綿100パーセントで赤ちゃんにも優しいよ!縫ってよし、染めてもよし、気になったら見ていってよ!」


村の御婦人に作ってもらった見本をさらに置いておく。エプロンとカラー(襟元に着けるものだ。こちらではこれだけを交換して同じ服を長く着る。毎日洗濯するのは下着とカラーなどになる)を見て、立ち止まる御婦人が増える。


「いいわね、コレ。カラーはこれだけ?」


そっち?

仕立てておいた方が売れるのか。


「すいません、今日は布の方を持ってきたんで」


カールがそつなく答える。


「私は布を見たいわ」


別の御婦人が声をかけてくれる。

良かった。そういう人もいた。


「悪くないわねぇ」


「今日は初めて出品しに来たんです。良ければオマケしますよ」


上手いな、カール。


「あら、いいの?」


「はい、父に言われました。その日一番初めのお客は大事にしろって。その人がいなくちゃ始まらないからな、と」


なるほど。

たしかに誰もいない店は入りにくい。ましてや初めの店なら尚更だな。


「針か糸、お好きな方をオマケします」


「あらっ、この針…綺麗ねぇ」


日本製です。

授業以外で使ってないから新品同様です。


「この布ひと巻きで銅貨7枚。針は1本小銅貨3枚。針を2本オマケします」


「うーん…よし、買った!」


御婦人のひと声に3人で万歳する。


「やったー!」


つづく

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