第14話 女神・フォリア!

「おい」


どこかで聞いた声だ。


「おい、お前」


前もこんな眠たいようなぼんやりした時に話しかけられた覚えがある。


「…?」


声に意識を集中すると、あたりがおぼろげに「見えて」来た。


俺の身体は暗い空間の中を漂っている。自然と夢の中なんだなと思う。


傍に明るく輝く光がある。

光はやがて何かの形を成していく。


「女の子?」


それも幼い子どもだ。

でも身にまとっているものはドレスのような凝った作りの服だ。身の丈ほどもある長い髪は銀色で、その髪にティアラをつけている。瞳の色は宝石のような紫色だ。


「私が誰かわかるか?」


「…もしかして…」


「もしかせんでもお前をこの世界に連れて来たのは私だ」


見た目に反して言葉遣いがキツイ。


「あ、じゃあ俺に何か力を与えるために出て来たとか?」


喜んで聞くと、即座に否定される。


「馬鹿者!今の私にはそのような力はないわ」


ないの?


「お前に持ち物を1つ選べと言った時に、お前は欲張って部屋を丸ごと持って行きたいと言ったではないか!」


ええ?

ダメだったのか?


「もっと遠慮深く家族の写真とか、人の役に立つ薬とか、そういう物を選んでいれば、私だって余力で選ばれし者らしい力を授けてやったわ」


「いや俺だってマンガ本のない生活なんてちょっと考えられないし」


「だから叶えてやってのだから文句なぞ言うでない!」


はい。すいません。


「お主、あの村の事はだいたいわかっておるな?」


「カリンの村の事か?放棄される寸前だったというのは知ってる」


「そうだ。この辺りは魔の者の力が増していて私の加護が届きにくいのだ。私にもっと力があれば良いのだが…」


待て待て待て。

私の加護って言ったな?


「そうじゃ。私が銀の女神・フォリアじゃ」


ぐぅっ。想像と違うぞ。


「い、今は力が弱まっておるのだ。この地の者の信仰心が弱まっておるせいじゃ」


俺のあからさまな落胆に、焦った自称銀の女神・フォリアが言うには信仰心が強い土地ほど、彼女の力が増すらしい。


「つまりこの地の黒い霧を祓うには、女神を信じる力が強くなければならないって事?」


「そうじゃ。飲み込みが良いの」


まぁ、ダテに異世界に憧れていたわけではない。


「あの部屋が物質を増殖させる力を持つとは私も思わなかったが、良い方へ進んでいるようだな」


「それなんだけど、持ち出したものを戻すと初期状態になるのはどうしてなんだ?」


「さてな。私も予想外の事は分からぬ」


「物が初めからあった通りになるのはそういうものだとわかったけど、でも俺は記憶が初期状態には戻らない。これはどう思う?」


幼い女神は可愛らしい小さな顎に手をあてて考える。


「身体が失われても記憶はそのままに蘇る。ふむ…仮説だが生物であるからではないか?あるいは精神を持つ『物』だからか…」


「なるほどな。そういう法則かな」


「それよりもお主はもっと私への信仰心を集めるのじゃ。そうすればあの村に黒い霧や狼は現れず、飢饉もおさまるであろう」


女神は今日の行いは良いぞ、と褒めてくれた。失われかけていた人々の中の信仰心が蘇って来たという。


「おかげでこうして姿を現すことができたのだ」


そりゃ、狼に食われた人が再び現れたり、食べ物をを持って来たりすれば神様を信じるだろう。


「更なる精進を願うぞ、ヒロキ」


そう言って女神は姿を消した。


言いたい事はまだ山ほどあったのに…。


つづく

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