第35話 地下の親玉VS村人・地上戦4

熱を帯びた空気が辺りを取り巻く。



平和な街の一部分が戦場となった



「だったらお前を尚更、このまま野放しには出来ないな......


 さっさと牢屋に入ってもらうぞ」


「ほう......お優しい坊やだねぇ


 アタイを殺す気で掛かってこないとは」



魔女の大きな顔は増々影の色を濃くしたが、


今度はこちらも笑みを浮かべた




「知ってるんだよ、良い更生所を。


 お前はそこの番長がお似合いだろうな」



挑発と共に姿勢を低くする。


奴の笑みは消え失せ、


眼光からは有り余る殺意を感じた




「ふん......爆ぜろ≪インフィル≫!!」





鼻で笑ってからの瞬時の攻撃の切り替わりは


巨体の割に俊敏であった。



着火点はまるで分かりもしなかったが


地雷のように足元が爆発する前に身体は飛び上がった



「飛べ≪スプリア≫!!」



次にそう唱えて太い腕を振ると


宙に浮いた俺の横から何かに突っ込まれたかのような衝撃を受けて


建造物に叩き付けられる




その後も身体の自由は効かず


身体がゴリゴリと押し当てられて浮いたまま引きずられる。



この魔法は...!



「弾けろ≪ボルク≫!!」



急に引きずるのが終わると


壁に固定されたまま破裂音をさせながら迫る電流を


無防備なままに喰らった



かなりの威力に一帯が土煙をあげた。



それでも魔女は攻撃の手を止めずに、


次々と多彩な魔法を打ち込んできた



おかげで周辺は視界を完全に塞ぐほどの煙をたたせながら


寒いやら、熱いやら滅茶苦茶な状態となった




しばらくそれが続くと


ようやく静寂が訪れ、野太い笑い声が聞こえてきた



「ドッハッハ~ 流石にくたばったか」



その声に応えるように


身体を縮こませていた俺は


真っすぐに飛び掛かった



「なっ!?」



受け身や妨害の魔法を挟ませる間もなく


ほぼ体当たりのような右腕の殴りがドデカい顔に


めり込んだ



「ウッッラアアア!!」



力を入れる毎に腕に掛かってくる巨体の重圧を


気合いで一振りの内に突き放した。



その勢いは大魔女を反対側の壁の方まですっ飛ばした




渾身の一撃の後に着地した俺の呼吸は


自身で驚くほど穏やかなものだった。



見据えた先は巨人の様な魔女が見えないほどの土煙、


自身が受けた以上の強さでやり返したことに


勝利を確信しながらぶっ倒れた奴を回収しようと近付こうとした




後のすぐの事だった。



砂交じりの煙から急に眩く怪しげな紫の光が差した




「ハアアアッッ!!」



力強い掛け声が具現化したような光線が発射されてきた。


レーザーを束ねたような太さで飛んでくるものを


躱すのは訳ないが破壊力の見通しが立っていないことを思うと

街に甚大な被害が出る可能性がちらついた



「くそっ!」



腕を交差して受け止める構えを取ると


身体全体に光線がぶち当たった




はずなのだが、質量は感じなかった



まるで押されるような感覚は受けなかった。



不思議に思って自身の身体に何か変化があったのかと


確認していると



「どうだい、今の気分は?」



いつの間にか目の前に大魔女がぶん殴る手前の構えを宙で取っていた。



それはまるでさっきの自分の攻撃を模倣されたかのようだった

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