第30話 魔法使いの姉弟子VS村人 後編

「まだ死んでなかったのかい......いいさ、今度こそお前の墓を作ってやる」


「安心しろ、ここがいくら地下だからって陰気臭い墓地にする気は無いさ」




魔女の目つきはより一層


鋭いものになった。


奴の夜にでも鈍く光る黒猫のような黄色い目に怒りの色が見えるまで


視覚が冴えてきている



「強がりを言いやがって......!


 アンタら! やっちまいな!!」



幹部の号令に、待ってましたとばかりに辺りに煌めく魔法の光


その全てを掌握する動体視力が俺にはもう備わっていた。



飛んでくる様々な属性の攻撃を捉えると


一つの打ち漏らしも無く弾いた



破裂音と共に魔法は術者の元に返っていき牙を剥いた。



「ぎゃあああッッ!!」


「こ、コイツ! 魔法を弾くなんて、がぁ!?」



周辺は逆流された火や電気で大荒れとなった



「何やってるんだいお前たち! さっさと殺っちまいな!!」




漂う煙で視覚を奪われていたが、


焦りで発した声の位置を聴覚は正確に把握した。



間髪入れずに真っすぐに魔女に向かって行く。


邪魔な手下共は急に高速で走ってきた侵入者の勢いに木の葉のように飛ばされる



人ごみを抜けると魔女とアメルが対峙していた。



「遂にアタシに杖を向けるとは! 堕ちるとこまで堕ちたようだね......!」


「違う! アタシは......新しい生き方を知った、それだけ!」



気が完全にこちらに向いていなかった魔女に横やりを入れるのに


力を入れて突っ込むまでも無かった



「俺はここだ!」



ギョッと振り返った奴の顔は一瞬にして目の前の現実に青ざめた。


咄嗟に取ろうとした構えを取らせるまでもなく、


俺の攻撃は確かに奴に届かせた



胴体に正拳突きを受けて


今度に広間の壁を貫いて吹っ飛んだのは魔女となった。



「ふぅ、何とかなったな」


「ウィン......」



横には目を赤くした魔法使いがいた



「よし、面倒な奴も倒したし帰るか」




俺の一言に彼女が口を開きかけた瞬間、


気配を察知したように横を向いて魔法を放った。



「焔{プラーミア}!」



唱えると同時に傍の空間が爆発した。


黒煙が辺りに広がる



「そうしたいけど、

 最後にここを出て行く者として恩知らずな返礼をさせて欲しいの。


 少し待っててくれる?」


「まあ、仕方ないか」



いつもの小生意気な調子が出てきたことを快諾した



「ただし長々とやったりするな、アイリスもまだお前を探してるだろうし」


「え!? 姉さまが!?」



驚きのあまりこっちを向いたアメルに飛んできた魔法を払ってやる



「そう、だから名残惜しくない程度に別れは済ませろよ」



お互いがニヤリと静かに笑い合って


ここからの脱出を確信し合った時だった。




後ろでとてつもない爆発音と共に分厚い壁が崩落した




同じ場にいる誰しもが地下が崩れたか、


という緊張に動きを止めて静寂になると


先ほど開けなかった大きな扉のあった場所と

広間を隔てていた壁をポッカリと開けた


暗闇から足音が聞こえて来た。




それも巨獣が召喚されてきたような地響きを伴って



「一体、何の騒ぎだい。


 アタイの部屋までマーガが飛んできやがったよ」



現われたのはまさに巨大な怪物だった、


人の皮を被った馬鹿でかい女が出てきた。



さっき吹っ飛ばした魔女を手のひらに乗せた巨人......


あれこそが名を知るまでも無く



「ボス......」



この悪の集団の親玉が姿を見せてしまった

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