第23話 捜索

「急がなきゃいけないって、どういうことですか!?」



声を張り上げながら彼女に風船の様に引っ張れるだけの体勢を立て直す。



「先ほどのお告げで頂いた情報は先ほど言った通り


 主に2つ、


 私のこととアメルのことです」



やっと足並みが揃って手が放されると一息ついて問う



「じゃあアイリスさんの力について何か分かったんですか?


 今の状態を見ると復活したように見えますけど」



人通りの多い道路を避けて日の差さない暗い脇道を走って行く。


彼女が先導しているが、

どうやら行く先までの最短ルートが分かっているかのようだ



「それなら良かったのですが、


 今の私の状態も所詮は一時的なものです。


 それも力を戻して貰ったというより

 与えられた分を引き出して貰っただけに過ぎません。


 今もこんなに飛ばして走っているのですからすぐに衰弱することでしょう」



「え!?


 なら、アイリスさんはあんまり体力を使わない方が――」


「そうは言ってられません。


 私はいち早く貴方をアメルの元に連れて行かなければならないのです」



当たり前のように突き当たる建物の屋根の上に飛び乗って


連なる住宅街の上をジャンプして突っ切って行きながら、


次の質問に移る



「じゃあ、そのアメルのことはどう言われたんですか!?」


「......」



ここに来て彼女は目的地への道筋に集中しているのか返答が無かった。


それが余計アメルの身が心配になってくる



共に無言でひたすら向かうこと数分、


広い街の半分を縦断したところで


そのまま中心部の広場にそのまま着地した。



賑わっていたので大騒ぎにならずに済んだ



「確かこの辺りで......」



アイリスは周辺を見渡して何かを探しているようだ



「目印とかを教えて貰ってるんですか?」


「ええ、記憶には川の近くがアメルの居場所だと」



随分とアバウトなヒントに不安が募る中、


彼女は思い出したかのようにサッと振り返った先を指さして



「あっちです、着いて来てください」



颯爽と走り出したのを見失わないように


急いで俺も後を追った。



走って行くと石造りの風情ある橋が見えて来た。


つまり橋があるということは......



「あの下の川だと思われます」



目的地の指標にやっと着いた。


川沿いには人が歩けるくらいの道が作られており、


これを辿って行けば何か分かるかもしれない



「水の集まる路から彼女への道が分かる、と


 お告げではありました」



読み通りの情報に活路が見えてきて勢いよく


川の近くに降り立った。


と、そこまでは良かったのだが......



「それで......右と左にありますけど、どっちなんですか?」



前にいて背を向けるアイリスに問いかけたが


彼女は振り向かなかった。



また容態が急変したのか、と顔を覗いてみると


教会での礼拝の時のように眉間にしわを寄せて


何かに集中しているような感じだ。



「あの~......今探ってる感じですか?」


「......すいません」


「ああ、いえ謝らなくても――」


「違うんです」



キッパリとそう言うと苦悶の表情で目を開けた。



「探知しようとしたのですが、近くに数え切れない反応があって


 どれなのかが......判別が着かないんです」


「えっと、それは......アメルの気配がたくさんあるってことですか?」



我ながら馬鹿らしい質問だが、


それ以外に解釈の仕様がない。



「はい、そうです」



しかし意外にもそれで合っていた。


アメルは量産型であるというのか......?



「えっと......どういうことですか?」


「言ってみると......私の察知は細かく気配をキャッチできません。


 貴方を探し出した時もあまりにも強い力場を感じたから分かったんです。


 でも本来、

 普通の人はそんな気配が色濃く遠くでも

 分かるほどの力を持つ人なんていません。


 その例にアメルも漏れるはずがなく、


 とりあえず彼女の魔力を探ろうとしたのですが......」



そう言って彼女は俯いた。


そこで俺も合点がいった



「なるほど......この街には大量の人間がいるから、


 魔法使いなんてそこら中にいる。


 だから、アメルの魔力だけを探すのは無理なんですね?」


「違います」


「......え?」



まさかの不正解で若干へこみつつ、


気を取り直して



「では、どうして......?」



そう聞くと彼女は広場の時のように行く先を指さした。


その先は



「この地下からアメルの使う魔法に


 よく似た性質を持つ反応が沢山感じられるんです」


「......はい?」



アイリスはうな垂れて頭を下げていた訳ではなく


その地面の下を見ていたというのか......



それよりもどうやって



「アメルが地下に......?」



首を傾げて何の変哲もない地べたを眺める。



するとアイリスが決心したように大きく息を吐いた



「ウィン」


「は、はい」


「私とはここから別行動です。


 避けたい事態でしたが、二手に分かれて捜索しましょう」



その指示出すとすぐに彼女は走り出した。



「え、でも地下への道が――」


「必ず道沿いを走っていれば見つかります!


 何も発見が無かったら引き返してください!」



もう見えなくなるほど遠くまで走りながら


振り返ってそう残すと彼女が見えなくなった。



完全復活したかに思えるアイリスの行動力に呆気に取られてから


自分も逆の方向に走り始めた。



こんなに必死に探し回る羽目になるなんて......




アイツは何をしているのか?



疑問が疑問を呼ぶ中、


徐々に速度を上げてひたすら探して走る

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