第58話 サキさんの決断
えー? ジローさん『銃の世界』を辞めちゃうの?
学校から帰る途中の電車の中で、ジローからの『移動になっちゃいました』メールを見て、愛は驚いた。せっかく気の合う仲間(将来の夫)とも知り合えて、これからも(色々な意味で)冒険が出来ると思っていた矢先だった。
確かに、今回のようなトラブルは別としても、運用する側の人間と運用される側の人間が直接会話した事が公になるのは、本来ならば有ってはならないことだった。
それは愛にも理解出来た。
だからこそ『結婚します』宣言までして、永遠に秘密を共有する事で、ジローさんを安心させたかったのに。私の苦労は無駄だったのかしら?
ジローさんと話をすると、ホンワカして落ち着くのだけれど『結婚します』発言は兄を安心させたかった意味合いの方が強かった。あの時『ジローさんが本気になって私の体を求めて来ることは無い』という確信が有ったからこそ、あのバクチが打てたと思っている。
仮想世界では経験豊富な女戦士であっても、所詮は花も恥じらう現役女子高生だ。同級生の『既に彼氏とエッチしちゃった!』みたいな話を、どこか違う世界の話として聞いている愛としては結婚なんてまだまだ実感が無い。
男の人と、あんなことや、こんなこと、をするなんて全然想像さえ出来ない。だって、クラスメートの噂話を聞くと、男の人のアレってエッチする時は凄く大きくなるらしいから、私にはチョット無理かも、と思っているぐらいだ。
ああ、それはそれとして。困った、どうしよう?
ジローさんのいない『銃の世界』をこれからも続けるには、この間のトラウマを乗り越える必要があるけど、正直私に自信は無いわ。これからもジローさんが、あそこのバーにいてくれる前提でいたから、あのゲームに参加し続けるつもりでいたけど。
やはりここは一度、ジローさんに相談してみようかな? 一緒に美味しいケーキも食べたいし。
良し、決めた。週末にデートに誘っちゃえ! ジローさん、喜んでくれるかな? ジローさんのメールに対して、返信しちゃおう。
―――
to : ジロー
from : 愛
subject : 週末の予定
ジローさん、メールありがとうございます。
愛です。
ジローさんも、お仕事場所が変わるので大変ですね。でも、そうなると私としては「銃の世界」でこれからも生きていく自信がありません。
これからも仮想世界でゲームを続けるかどうかも含めて、一度ご相談したいです。もしも、週末にお時間が取れるようであればケーキを食べに行きませんか?
愛するジローさんへ、愛より。
……
よーし。これで、送信っと!
ピ!
……
プピッ!
え? もう返信が来ちゃった。
to : サキさん
from : ジロー
subject : 週末はオッケー
サキさん、今日はジローです。
週末の件、オッケーです。
それでは、土曜日の午後に駅で待ち合わせしましょう。
楽しみにしてますね。
ジローより。
……
すっごーい、ジローさん。文面が短いとはいえ、私が送信してから1分も経たないうちに返事が返って来ちゃった。
よーし。これで少し元気が出たから、週末まで勉強頑張れるかな。
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