第62話
*
学校では当初の予定通り、クリスマス会が行われていた。
赤西と朋華が用意を進め、準備をしてきた。 当時も二人は司会進行や裏方仕事で大忙しだ。
「はぁ……高志の後はクリスマス会か……なんかもう疲れてきた……」
「こら」
「いて」
「サボってないで手を動かしなさいよ」
「西城……」
隅っこで休んでいた赤西に朋華は軽く頭を叩く。
赤西はこのクリスマス会にあまり積極的では無かった。
折角彼女が出来たと言うのに、クリスマスを二人きりで過ごせない事が赤西は不満だった。
プレゼントを買うためにバイトをして、デートコースまで考えていた赤西。
しかし、このクリスマス会のせいで計画が無駄になってしまった。
「はぁ……」
「何ため息吐いてるのよ?」
「別に……なんでもねーよ。さて、空になったペットボトル集めてくるかな」
赤西はそう言って朋華の元を離れた。
そんな赤西の背中を朋華は寂しそうな目で見つめる。
「はぁ……」
「おうどうした赤西、そんなため息吐いてどうした? 失恋か?」
「なんでだよ。幹事の仕事が大変なだけだよ……」
「なんだよ……まだリア充かよ……さっさと別れろよ……」
「そんな殺意の篭もった視線で言われても……」
赤西は繁村からそう言われながら、テーブルに残った空のペットボトルを回収して回る。
「はぁ……にしても疲れたなぁ………」
「高志……上手くやれてっかな?」
「ま、簡単には許して貰えないだろうな」
繁村の言葉に赤西は心配そうに答える。
赤西も学校に戻る道中で、繁村から話しを聞いていた。
「高志にも理由はあったとはいえ……宮岡が可愛そうだしな……」
「まぁ……後はあの二人の問題だろ? 俺たちには何も出来ねーよ」
「それもそうか……」
赤西はゴミ袋を持って、繁村の話しを聞く。 朋華のことで、色々と高志には世話になったこともあり、赤西は高志と紗弥の関係が元通りになってほしいと思っていた。
「健輔! 早くゴミ持ってきて!」
繁村と話しをしていた赤西に、朋華声を掛ける。
「分かってるよ……ちょっと話ししてただけだ」
朋華に言われ、赤西はゴミ袋を持って立ち上がる。
「はぁ……俺怪我人なのに……」
「ギブスは明日外れるんでしょ」
「まぁ、そうだけど……」
空のペットボトルが入ったゴミ袋を赤西と朋華はゴミ捨て場に捨てに向かう。
周りはもう真っ暗で一人で学校を歩くのは少し怖い。
「どうしたの? 疲れたみたいな顔して」
「え? 別になんでもねーよ……」
「何よ、そんなにクリスマスは私と二人が良かった?」
「べ、別に……そんな事は……」
「嘘ばっかり」
「うっ……そんなんじゃねーよ!!」
「うふふ」
図星をつかれ赤西は頬を赤く染めて、朋華から顔を反らす。
朋華はそんな赤西を見ながら、嬉しそうに笑みを浮かべる。
「クリスマスなんて毎年来るのよ? 来年だって、その次の年だって……」
「で、でもよ! 付き合ったその年のクリスマスって……け、結構大切じゃね?」
「そう? どうせ来年も一緒でしょ?」
「……それがわかんねーから不安なんだろ……」
「なんか言った?」
「何でもねーよ!」
二人は外のゴミ捨て場に到着し、ゴミを捨てて教室に戻ろうとする。
「なぁ」
「ん? 何?」
「ほらよ」
「え?」
赤西はゴミを捨て終えると、朋華に小さな箱を朋華に差し出した。
朋華はその箱を受け取り、赤西に尋ねる。
「何?」
「いや、一つだろ! プレゼントだよ! クリスマスプレゼント!」
「え! アンタそんなお金あったの?」
「バイトしたんだよ! そんなにビックリするな! 俺を何だと思ってるんだよ……」
「へぇ~……アンタが私にねぇ……」
朋華はそう呟きながら、赤西から貰ったプレゼントを見る。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます