第51話
土井と繁村は広い屋敷の中を逃げ回っていた。
どこに何があるのかなんて良くわからないまま、屋敷の中を二人でさまよう。
もう玄関がどこなのかも、出口がどこかも分からなくなり、いつ行き止まりにぶつかってもおかしくない状況だった。
「クソッ! まだ追ってくるぞ!」
「そりゃあそうだろ……あっちから見たら俺たちは不法侵入者だぞ……」
「まぁ、そうだけどよ……走るのもつかれたぞ! どこかに隠れられれば……」
「おい、そこの部屋はどうだ?」
「ん? おお! 確かに、ここなら隠れられそうだ!」
繁村と土井は直ぐ側にある部屋に咄嗟に隠れた。
部屋は真っ暗で何の部屋かは分からなかった。
『くそっ! 一体どこに……』
『探せ! まだそう遠くには行ってないはずだ!』
ドアの向こうから聞こえて来る執事達の声を聞きながら、土井と繁村は安堵する。
「はぁ……ひとまず安心だな……」
「だけど、こんな状況じゃ高志を探すのも大変だぞ?」
「うーん……ところで土井、ここって何の部屋?」
「さぁ? 咄嗟に入ったし……ちょっと照らしてみようか」
土井はスマホに付いている懐中電灯の機能を使って部屋の中を照らした。
どうやらここは、誰かの寝室らしい。
「寝室か? それにしても随分広いなぁ……」
「あんまり人の部屋を勝手に見るのは嫌だけど………状況が状況だしなぁ……」
土井と繁村は、そんな事を言いつつもスマホを片手に部屋の中を見て回る。
「ん? これってアルバムか?」
繁村は机の上に置いてあった、一冊のアルバムを発見しページをめくる。
「どうした? 何かあったのか?」
そんな様子を見て、土井も繁村の方に寄ってくる。
「おい、見ろよ土井……」
「何?」
「この人メッチャ美人」
「あのねぇ……今はこんな事をしている場合じゃないんだよ……」
「いやいや! やべーだろ! メッチャ美人だぞ! お前も見てみろよ!」
「わかった、わかったから、繁村もこの状況をどうするか考えてよ」
土井はそう言うと繁村から離れて、部屋の外の様子をドアの隙間から確認する。
「よし、今なら外に出ても大丈夫そうだ」
「外に出たらまた追いかけられるぞ?」
「そうならないように、直ぐに別な部屋に入ろう、そうやって部屋を転々としていけば見つかるリスクは減る」
「なるほど……で、次はどの部屋に入るんだ?」
「それは廊下に出てから決める」
「適当かよ……」
「しょ、しょうがないだろ! ドアの隙間からじゃ部屋の場所まで確認出来ないんだから!」
ため息を吐く繁村に土井はそう反論し、再び外の様子をうかがう。
「よし、今のうちだ行こう!」
「おう!!」
そう言って土井は部屋のドアを開けて外に出る。
「あだっ!」
「イデッ!!」
しかし、ドアの開けて外に出た瞬間、土井は誰かとぶつかり尻餅をついてしまった。
「いてて……」
「おい、大丈夫か? 土井」
「あぁ……ってそんな場合じゃない! 早く逃げない……と……って高志?」
「イテテ……ん? 土井!? それに繁村も!」
土井が扉を開けてぶつかったのは、今土井達が探している高志本人だった。
高志自身も土井達を見て驚き、目を見開く。
「お、お前ら……なんでここに?」
「お前を探しに来たんだよ! てか、本当に居た……」
繁村が驚きながら高志にそう言った。
高志は立ち上がると土井と繁村に尋ねた。
「な、なんでお前らが……ここに? しかも侵入者って……まさか……」
「俺らだよ! たく……迷惑掛けやがって……さっさと行くぞ」
「ど、どこへ?」
「決まってるだろ! 帰るんだよ」
繁村はそう言うと、高志の手を取って引っ張る。
しかし、高志はその場を動こうとはしない。
「高志? どうした?」
「……行けない」
「は?」
高志のその言葉に、繁村は思わず間の抜けた声を出す。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます