第44話
*
「くそ!!」
優一はイライラしながら、足下の石ころを蹴飛ばした。
高志に何かあったのは間違いないだろうが、それを当の本人が話そうとしない。
聞き出そうとしても頑なに言おうともしない。
相当な何かがあったのだろうと、優一は予想していた。
「……っち……あいつ……本気で殴ってみろよ……」
優一には高志が本気で自分を殴っていない事が分かっていた。
「あの時の方が……痛かったっつの……」
優一は昔の事を思い出していた。
始めて高志と会い、喧嘩をした事……それは何年経っても忘れられなかった。
「俺でダメなら……あとは宮岡だな……」
優一はそう呟いた後、急いで芹那に電話を掛ける。
『もしもし? 優一さんどうしました?』
「お前、今どこに居る?」
『え? 私の家に紗弥先輩と今ついたところで……』
「直ぐに俺も行く、あの馬鹿のところに宮岡を連れていくぞ!」
『え? 紗弥先輩をどこに?』
「良いから、そこで待ってろ! 協力したら、年明けに温泉旅行に連れてってやる!」
『え! 本当ですか!! 協力します! 私の事は雌犬とお呼び下さ……』
優一は芹那が言い終える前に電話を切り、別の番号に電話を掛け始めた。
『もしもし?』
「泉か!」
『うん、そうだけど、ごめん今ちょっと忙しくて……』
「どうした?」
『いや、それが……』
『ひゃっはぁぁぁ!! まつりじゃぁぁぁ!!』
「おい、お前の後ろから世紀末みたいな声が聞こえてくるんだが?」
『あぁ、ちょっと繁村君が……』
「なるほど……丁度良い、それなら繁村も連れて今から言う場所に来い!」
『え!? でも、後二時間くらいでクリスマスパーティーが……』
「頼む!」
優一はただその一言を泉に言った。
泉は何かただならぬ雰囲気を感じ、優一に言う。
『……分かった。どこに行けば良い?』
優一は泉に場所を伝え、電話を切った。
芹那の家に到着した優一は、電話で芹那と紗弥を外に呼び出す。
「優一さん!? その顔どうしたんですか!」
「事情は後だ、宮岡……」
「……何……」
紗弥の瞳は真っ赤に腫れていた。
高志に振られた後、紗弥は涙を流し声を上げて泣いていた。
そんな紗弥に優一は真剣な表情で話す。
「お前……本当にこれで良いのか?」
「え……」
「振られて、簡単に引き下がって良いのかって聞いてるんだ!」
「……そんなの……でも……高志は……」
「高志がどうこうって話しじゃねー! お前自身がどうしたいかだ!」
「私……自身が?」
「あぁ……このまま振られて簡単に終わるほど、お前の高志に対する気持ちは安っぽいのか!?」
「そ、そんな事!」
「じゃあ! お前がどうしたいかを高志に全部ぶつけろ! 諦めるのはそれからだ!」
「……私が……どうしたいか……」
優一はそう言うと、紗弥の手を掴んで引っ張る。
「行くぞ、あの馬鹿の頬を一発殴りにな!」
「え……ちょ、ちょっと……」
「あぁぁぁ!! 優一さん! 彼女の前で他の女と手を!!」
「お前は黙ってろ! 今は緊急だ! 高志を探しに行くぞ!」
「うぅ~……クリスマスなのに……」
「あぁ! 面倒くさい! これが終わったらなんでも言うこと聞いてやる! だから今は手伝え!」
「ほ、本当ですか!? じゃ、じゃあ朝まで一緒とかも……」
「してやる! だから今は手伝え!」
「はい! 分かりました! それと私の事は雌犬と……」
「よし! じゃあ行くぞ!!」
優一は芹那が言い終える前に行動に出た。
まずは泉達と合流する為に、優一はは学校に向かった。
「高志……待ってろよ……」
優一はそう呟きながら、あるところに電話を掛け始めた。
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