第75話 悪魔VSセシル
セシルは闘技場へ来てディアボロスがやってくるのを待っていた。
しばらくすると悪魔の邪悪な気配が段々と近づいてくるのが分かった。
そろそろ来る!
やがてディアボロスは闘技場の上空へ現れ、目の前へゆっくりと降り立つ。
「待たせたか? 聖女。」
悪魔がセシルの前方に立ちニヤリと笑い話しかける。
自分は聖女ではないがエリーゼのところへ行かれても困るのでそこは肯定しておく。
「そうでもないよ。……ディアボロス、貴方随分暴れたね。大勢の人が亡くなってしまった。もうこれ以上殺させはしない。だから全力で戦わせてもらうよ。」
たくさんの人が傷ついた。そして亡くなった。これからこの町には涙を流す人が増えるだろう。こんな悲劇はもう終わらせなくては。
ここなら全力で戦える。悪魔が死なない限りエメリヒも死なないはず。
「望むところだ。精々抵抗して見せろ。」
冷たい笑みを崩さぬままこちらを睥睨している。やってやろうじゃない!
自身に
「シフ、ディーお願い。」
『はーい!』
『任せぇな。』
「『
風の精霊シフと水の精霊ディーがともに螺旋を描きながらぐるぐると回りだす。無数の水刃と風刃を含んだ積乱雲がディアボロスに巻きつく。
積乱雲は雷を呼び辺りは闘技場へ台風が来ているようだ。刃を含む暴風雨が奴を包み、激しい稲妻が貫き無数の刃がその体を切り刻む。
そしてさらにその周囲に魔法で無数の氷柱を作り奴へ向けて発射する。
「なるほど、神殿では全力を出していなかったというわけか。流石に少々痛いぞ。」
ディアボロスは自身に闇のバリアを張る。ダメージがある証拠だ。
このまま力の限り押しまくるよ。
「まだまだぁ! サラ、ノーム来て!」
『おう!』
『ふぁい。』
「『
火の精霊サラと土の精霊ノームが同じく螺旋を描きながら溶け合い地面へ同化する。するとディアボロスの下の地面が溶岩池と化した。そのまままるで生き物のように高く盛り上がり悪魔を包む。
生命全てを飲み込むような業火に包まれ逃げようと闘技場中を飛び回る悪魔を、マグマの丘は素早くその動きに反応しながら追う。
上は刃の暴風雨、下は溶岩の海で囲まれディアボロスの逃げ場はない。風と水の刃、そして纏わりつく粘度の高い灼熱の溶岩から逃げきれずその体に傷が増えていく。
突然悪魔は一度動きを止めてその体の中心に周囲から莫大な魔力を集中させた。
「はああぁーーーッ!!」
悪魔は中心に集中させた魔力による密度の高い闇の塊を次の瞬間爆散させた。
中心から広がる闇の波動に、ディアボロスを攻撃していた精霊術が霧散しセシルの防御強化が切れる。
「くっ!」
すぐさま防御強化をかけしたがその隙を狙ってディアボロスが一気にこちらへ詰め寄ってきた。マズい!
咄嗟に剣を抜き接近されないよう距離を取ろうとするが追いつかれてしまった。
ディアボロスの手には奴がケントとやり合った時に持っていたあの漆黒の剣が見える。掠りでもすればまた魔力と体力を奪われる。そうなってしまえば勝機はなくなる。
――ガキーンッ!
セシルは追いつかれ、ショートソードの剣身で胴をめがけて振り下ろされたディアボロスの剣を防ぐ。
そして奴はニヤリと笑い、一度距離を取るったあとこれまでに負った傷を目を瞠るほどの速度で回復していく。予想はしていたけどいくら傷を負わせてもこの調子で回復されてはキリがない。
それに奴は未だ全く本気を出していない。このまま接近戦に持ち込むのは、ケントにすら力も速度も及ばない自分にとっては不利だ。
先程の全力での精霊術の行使もあって肩で息をしてしまう。
「はぁっ、はぁっ……。」
「そろそろ遊びは終わりだ。私の心の安寧のために死ぬがいい。」
ディアボロスが勢いよくこちらへ詰め寄りその漆黒の剣を振り上げた。
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