第25話 奇策と帰郷
「クッソ!ちょこまかと!」
俺とギーブが参戦してかかったが、やはり一撃も加えられない。
デビルタートルは攻撃能力がないのか、向こうからは攻撃してこない。
「男どもが情けないわね。」
それを見ていたケイトも参戦したがやはり何も当たらない。
「私に、任せてもらっていいかな。」
シャルルだった。
一体どうしようというのか。シャルルがみんなを集めて作戦を伝える。
「うん、それならきっといける!すごいよシャルル」
「えへへ」
そしてシャルル以外の4人がタートルに突っ込み、部屋の角へと少しずつ追いつめる。
そこでシャルルの魔法が発動される。
聖魔法: ホーリーシールド
マナでできた壁を作り、物理攻撃を僅かだが、一定時間無効化するというすごい魔法だ。俺の買った魔法の本に書いてあった。
本来味方の援護や防御に使うものだが、これでタートルを囲ってしまおうというのだ。
一定時間が過ぎると壁は消えてしまうので、続けざまに壁を作り続け、かつその囲う範囲を段々と狭くしていく。
マナの大放出になってしまうので心配したが、シャルルの努力のおかげかあの白杖のおかげか(多分両方だろう)マナはなんとか足りるようだ。
俺たちも狭くなるにつれて一人ずつ範囲から抜けていく。
そしてついに人二人入れるぐらいのスペースにギーブとタートルだけが入っており、タートルは高速移動しながらも、壁に弾かれ続けて、カンカンカンカンと面白い絵面になっている。
「これでしまいだあああーー」
カリーンッという音とともにギーブの武器によって甲羅を砕かれたタートルは動かなくなった。
「ふぅ。」
「シャルル!大丈夫?」
それを見届けたシャルルが崩れるように座り、ケイトが駆け寄る。
やはり相当のマナの消費があったんだろう。
ギーブがドヤ顏でタートルの死骸を持って歩いて来た。
「やってやったぜ。ほれ。」
俺は魔臓を取るから、死骸担当とでも思われているのだろうか。なぜか死骸を渡された。
まあもちろん、魔石と一緒に魔臓も抜き取るが。
「これで終わったんだよね…」
シャルルが再び安堵の溜め息をこぼす。今度のは、9区での旅の終わりを言っているんだろう。
おなじみの宝箱にはお金と、今回は魔道具は入っていなかった。
貴重な物とは知っているが、ケチと心の中で思ってしまった俺を責めれる人はいまい。
「んだよーこの遺跡はケチだな。」
ギーブの素直さは尊敬に値する。
ボスを倒したことで現れた出口を辿り、俺たちは世界の端へと向かった。
「やっぱこの先がシーラス村だなんて信じられねえよなあ。」
ギーブたちにとって世界の端の魔法の壁は遠い存在ではない。シーラス村の近くにもそれはあったのだ。だからこそ、オリバーさんの話が実際に見るまでは信じられないのだろう。
「じゃあ、使うぞ。」
金属のコースターを壁に貼り付けると、そこを中心に人が1人通れるような穴が空いた。
まず俺が通って、安全を確認してから全員が通る。
しばらくすると、その穴は塞がって、元の壁に戻った。
「まじかよ。」
そこは見渡す限りの草原に、ぽつぽつ見える小動物。人工物と呼べるものは何一つ見つからなかった。
懐かしい光景だった。俺ですらそう思うから、3人にとっては相当なものだろう。
「こっちよ!」
シーラス村出身勢はここからでも村の位置が分かるのか、一目散に同じ方向へと駆けていく。
俺とクロウは苦笑しながら、その後を駆けていった。
「おう、悪ガキども。ずいぶんと早い帰りじゃな。おや、知らん子がおるのう。」
若干デジャブな気もするが、今回はクロウのことだ。
「じっちゃん帰ったぜ。このチビはクロウっていってな、俺たちのパーティの一員だぜ。それで…」
するとルータス村長は嬉しそうに笑い、言った。
「立派なパーティじゃな。それで、8区へ行くんじゃろ?」
「ああ!みんなでな!」
こんな早よお帰ってくるとは思わなんだがな。
お前たちの顔を見る限り、資格は手に入ったんだろう?
こんなに嬉しいことはあるまいて。」
「じっぢゃぁーん」
「おじいぢゃーん」
3人がルータス村長に抱きついた。ギーブとシャルルは孤児だし、3人にとって村長は唯一の家族のようなものだろう。この時間を大切にしてあげよう。
しばらくして、村長こちらを向く。
「アスカよ、そしてクロウといったかな。お主たちがこいつらを支えてくれていたのだろう?礼をいう。どうかこれからも仲良くしてやってくれ。」
「はい!」
「まあ、頼まれてやる。」
俺たちは村で一泊したのち、3つの魔石を持っていよいよ森の遺跡へと向かった。
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