第40話 そっちは任せた



「つぅ~!」



 スパーダと戦っていたイツキが2人の所に戻ってきた。

 どうやら少し怪我をしているようで、腕を押さえながら少し痛そうに顔を歪めている。



「悪い、回復とリジェネ貰えるか?」


「思ってるより苦戦してるみたいね」


「私達も手伝うよ?」



 メグミもアユミも、イツキの注文通りに回復魔法とスキルを使用してイツキを回復させる。

 イツキはまだ、カケルに気付いていなかったが回復してもらっている時にカケルの存在に気がついた。



「ん?おい、あのおっさんは?」


「うーん、何だか敵っぽい?」



 カケルをおっさん呼ばわりするが、カケルは25歳。彼らからすればカケルは少し老けて見えるのだろう。

 アユミはカケルの魔物を助ける行動を見ていて、恐らく敵だろうと思う。



「敵ぃ?っておい。あいつ・・・あの髪色って!?」



 そこで改めてカケルを見た、イツキが髪色に気づいた。

 その髪色は、この世界では珍しい黒色。

 それは彼らと同じだ。そして、髪の色が黒色だと彼らとの共通点が自ずと増えることになる。



「ってことは、あいつも転移者か!?」


「十中八九ね」



 彼らが同じ転移者と出会うのはこれで、2回目だ。

 同郷どうきょうの人間と会えた事に喜ぶが、イツキは先程のアユミの発言。敵っぽいという言葉を思い出す。



「で、何であいつは敵なんだ?」


「あなたは見てないけど、彼は魔物を助けるように動いたわ。私の魔法を防ぎ、アユミの状態異常を一部の魔物だけだけど、治していたわ」



 メグミはカケルが行った事を説明するが、その光景を見ていないイツキはいまいち信じてない。

 自分等と同じ、異世界からの転移者が何故魔物の味方をしているのかがわからないのだ。

 だがそれも、先程から戦っていたリビングデッドがカケルの下に来た事で、彼女達が言っている事は本当なんだと理解した。



『おお、悟。戻ったか!』


「スパーダ、お前はなんともないのか?」


『ああ、特になんともない。あやつには少し手間取ったが、もう。次からは問題ない』


「お前が手間取ったのか」



 スパーダは先程の戦闘でダメージを負った様子はない。どうやら手間取ったらしいが、ノーダメージだ。

 しかしカケルはスパーダほどの強さを持つ者に少しでも苦戦させた、彼らへの警戒を強めた。

 スパーダとカケルの実力はほとんど同等どうとうみたいなものだ。

 多少の技術の分野の中で得意不得意があるだけで、実力は変わらないと言ってもいいだろう。

 最も、人間とアンデッドという違いがあるから、完全に技術だけの問題とは言えないかも知れない。

 カケルはスパーダに簡単に他の魔物が避難した事を話す。



「なんか話してるっぽいな。って事はマジで敵なのか?」


「あの様子を見るとそうでしょうね。この村を支配していたのかしら?」


「じゃあ、あの人がこの村のボスってこと?」


「恐らく、ね」



 彼らにはスパーダだの言葉は聞こえていない。

 カケルがアンデッドのうめき声に返事をしているように見えている。

 3人はその光景をみて、魔物と話せるスキルか何かだろうと思い、その光景を理解した。



「改めて聞く」



 スパーダと話し終わったカケルは先程の質問を改めて、目の前の3人に聞いた。



「お前らはここに何しに来た」



 カケルの質問。

 女性2人は2回目となるこの質問。

 それに平然と答えたのはイツキだった。



「何しにって。魔物が居たから退治がてらに強い奴と戦えればなぁーっと」


「・・・そうか」



 その質問の、答えを聞いたカケルの表情は怒りをあらわにしていた。

 カケルがここまで感情を表に出したのは初めてかも知れない。

 それほどまでに、この惨状さんじょうとそれを作り出した原因に対して怒りがつのっているのだろう。

 カケルはそっと左手で腰に差している刀のさやを軽く押さえると、スパーダに小声で話しかけた。



「お前にはあの男を任せていいか?後の2人は俺がやる」


『ふむ。以前、悟に負けた私が言うのはアレかもしれないが、大丈夫なのか?あそこの女共の魔法はなかなかに強力だったぞ?』


「魔法か。魔法についてはさっぱりだ。だけど、あいつらは俺に。ジャック達と約束したからな」


『そうか。それなら、あの男は私に。先ほども言ったがあの剣の力には慣れたからな』



 スパーダと話すカケルだったが、イツキ達もイツキ達で会話をしている。

 お互いに小声で相手には聞こえていない。



「お前って俺たちと同じ転移者だろ?こんな所でなにしてんだ?」



 イツキがカケルに対して質問する。

 しかし、カケルは答える気はない。目は3人をとらえたままだが、スパーダと会話をしている。

 やがて会話が終わったのか、次の言葉は小声ではなかった。



「なら」


『では』


「『そっちは任せた!!』 」



 次の瞬間。スパーダはイツキに。カケルは2人の女性に向かって突っ込んでいった。









「なっ!?」


「きゃあっ!」



 男女それぞれの驚いた声があがる。

 瞬時しゅんじにそれぞれの相手の目の前まで行ったカケルとスパーダは、それぞれの相手に攻撃を仕掛けた。

 カケルはアユミの横を通り過ぎ、アユミの後ろにいたメグミを居合いで斬りかかる。

 スパーダはイツキをに対して、斜め下から上に斬り上げるような攻撃だ。



「ぐっ!!」



 イツキはなんとか手に持っていた壊聖剣で防ぐ。だが、それはスパーダの読み通り。スパーダの攻撃はそもそもイツキを斬り殺そうとした攻撃ではない。相手が剣を使って受け止める事を予想した攻撃だ。

 スパーダの攻撃を受け止めたイツキは地上から浮き上がり、足を踏ん張る事が出来なくなる。



「なにっ・・・!?」



 そしてそのまま後方に、おもいっきり吹っ飛ばされ、吹っ飛んでいった。



 カケルの居合いがメグミの首元に迫る。メグミはその早い攻撃をギリギリでなんとか回避した。

 しかし、その過程で長い髪がカケルの放った居合いで切られてしまう。

 メグミの回避より、少し遅く反応していたアユミが《アイテムボックス》からレイピアを取り出し、カケルを背後から攻撃する。

 しかし、その目視もくしもしていない後ろからの攻撃をカケルは難なく回避。力の入った後ろ蹴りで、アユミの腹を蹴飛ばした。



「がはっ!!」



 アユミは腹部を蹴られて吹っ飛んで行く。

 カケルは吹っ飛んでいる間に追撃しようと、具現化した殺気を刀にまとわせ、殺気による飛ぶ斬撃を放とうとする。

 しかし、それは放たれなかった。



(!?)


「《暴発する衝撃/アウトレイジ・インパクト》!」



 魔法が放たれる。

 メグミを中心にドーム状の衝撃波が地面ごと一定の範囲を吹き飛ばす。

 カケルは魔法らしきものを唱えてると分かった瞬間にその場から離れる行動に移したため、その衝撃波はくらわなかった。

 その魔法が地面をえぐった事で、あたりに少し土煙が舞う。



「アユミ!!」



 その隙にメグミは蹴飛ばされたアユミの元に向かった。

 アユミは吹っ飛ばされながらも空中で身をよじり、木に激突する事なく着地していた。



「いたたたた~。本気でお腹を蹴飛ばすなんて、ヒドイ奴だよ!」


「大丈夫?」


「私はリジェネがあるから問題ないよ。メグミは?」


「私はなんとか距離を取らせたからなんとかなったわ。髪は少し切られちゃけど。それよりも・・・」


「うん・・・」



 メグミ達はカケルを見る。先程の魔法による土煙は早くなくなっており、少し先にはカケルが刀を握りしめ、同様にこちらを見ている。

 そこで彼女達は相手が本気で殺しに来ていると認識する。

 アユミが右手でレイピアを構え左手はメグミの手を握る、メグミは杖をかけるに向けて構える。彼女達も本気になった。



「アユミ、やるわよ」


「うん。殺される訳には行かないからね!」



 しばらく両者が見つめ合う。お互いに様子を伺うが、先に動いたのはメグミ達だった。



「《炎の弾丸を連射する球体/フレイム・バレット・スフィア》」



 メグミの前に赤い球体が現れた。その球体はカケルをロックオンする。すると、その球体から30cmほどのサイズの炎の弾丸が連射れんしゃされる。それはまるで本物の銃の弾丸のような速度で、この世界のマシンガンといっても過言ではない。


 その魔法が発射されると同時にカケルは走り出した。ジグザグに走って、その魔法を避けながらメグミ達に接近していく。

 今のところ、メグミの魔法は当たっていない。

 近づいていくとカケルの前からアユミが走ってきた。その速度はカケルに勝るとも劣らない速度だ。

 アユミは手に持つレイピアでカケルを攻撃した。



「さっきのお返し!!」



 炎の弾丸を避けながら、カケルはアユミのレイピアによる攻撃を回避する。

 アユミの攻撃は回避したがその瞬間にメグミの魔法である炎の弾丸が肩をかすめた。



(あの女の魔法はタイミングをいじれるのか)



 どうやら、メグミがアユミの攻撃に合わせて《炎弾丸を放つ球体/フレイム・バレット・スフィア》の発射タイミングをずらしたようだ。



「そら!そら!!」



 アユミがレイピアによる攻撃を続ける。

 カケルが回避や反撃を使用とすると、メグミの魔法が飛んでくる。

 まだ直撃はしてないが、避けきれずに魔法が掠める。


 そこでカケルは魔法を使用している女に向けて、飛ぶ斬撃をおみまいする事にした。

 2人の攻撃を回避しながら、刀に殺気を込める。

 そしてタイミングを見て、メグミに具現化した殺気による飛ぶ斬撃を放った。

 しかし、そのままではない。飛ぶ斬撃を放ったまま流れるように刀を動かして、殺気が纏っている刀でアユミを攻撃したのだ。



「なっ!?」



 アユミは驚くもレイピアを横にして受け止めようとする。だが、カケルはそんな事は想定済みだ。カケルはそのレイピアごと、その女を両断するつもりで殺気と力を刀に込めている。


 だが、何故かカケルの攻撃はアユミが持つレイピアに受け止められてしまった。



「なに?」



 本来なら、レイピアごとアユミを縦に両断するつもりだった。現実は受け止められている。そして次の瞬間。カケルは自分の指先に痺れを感じた。


 それはアユミのスキル《状態異常付与》。

 アユミはカケルの攻撃をレイピアで受け止めようとして、刀とレイピアが接触した瞬間。

 そのスキルを発動したのだ。

 アユミのスキルがレイピアから刀に、刀からカケルの手に伝わった。


 カケルは自分の手から上がってくる異常を感じ、麻痺の類いだと理解するとすぐに左手に刀を移した。

 そして、麻痺が腕から体に回る前に、自分の右腕を切断した。



「ぐ・・・っっっ!!」



 かなりの痛みはあるが耐えられる。腕を切り落とした事で一瞬にしてかなりの出血をするが、

 カケルは切断した腕に力を込める。すると腕の筋肉で血管を圧迫あっぱくし、出血を止めたのだ。

 それらの動作を瞬時に判断して、やってのけたカケルだったが、アユミが自分から距離を取っ手いる事に気づく。



「魔法か!!」



 メグミの方に目を向けると魔法が放たれていた。

 アユミはメグミが放つ魔法に巻き込まれないようにカケルから離れたのだ。

 アユミとメグミの作戦は最初から、アユミのスキルで動きを止めること。そして動きが止まったらメグミの特大魔法を放つことだったのだ。



「《交差する2つの落雷/ダブル・ライトニング・ストライク》!!!」



 一瞬光ったと思うと次の瞬間には、カケルがいた所に2つのかみなりが落ちてきた。遅れて聞こえてきたバリバリッ!という雷が空気中を流れ、空気が震えてでる音がその森全体に聞こえるほど大きな音となり、辺りに響いた。





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