第35話 突然の襲撃

 

「おーい準備はいいか?」


「おっけー」



 あれから5日後、準備を整えた俺達は魔物の村に向かう事にした。

 移動はドライグに頼む。

 ドライグはワイバーンというドラゴン族で、ある依頼を受けた時に魔物に襲われている所を偶然、助けたのだ。

 その時の事がきっかけで俺達になついてしまった。それからは現在進行形で俺達3人の足として絶賛活躍中だ。

 そもそも何故ドラゴン族が魔物に襲われていたかというと、ドラゴン族は青龍国で信仰されていたり、過去に人間と共闘し魔物と戦った歴史がある。そのためドラゴン族は魔物側からも人間同様に敵だと認識されているそうだ。今は昔より数が減った為、見かけることすらなくなってきていたらしい。



「よーし頼むぞドライグ」



 俺達はドライグに乗った。

 ドライグはワイバーンの中でも特別大きいらしく、人を3人乗せて飛ぶ位は余裕だ。

「グルルルル」と今では可愛らしく思える鳴き声を上げる。



「じゃあ行くか」



 ドライグは翼を広げて、俺達3人を乗せたまま空を舞った。

 ドライグの飛行速度は詳しくはわからないが、全速力の馬より早い。

 馬の走る速度は、確かに時速80kmぐらいだったけか?

 この曖昧あいまいな知識が正しければドライグの飛行速度は時速90kmぐらいだろうな。



「そういえば、その魔物の村ってどこら辺なの?」



 唐突とうとつにメグミが聞いてくる。そういえば場所については言ってなかったな。



「場所はアイタル森林だ」


「ふーんアイタル森林か、言った事ないけどドライグ君の速度なら10分ぐらいで着く場所ね」


「ねぇ!そこを見つけた時になんかレアな魔物とかいなかったの?」


「レアねぇ・・・」



 あんまり詳しく見てないからわからねぇな。

 スケルトンやらのアンデットは多く見えたが、対して珍しいのは確認出来なかった。

 いや、まて、実際には見てないが恐らく強そうなのがいるな。あの闇属性の魔法を使ったと思われるやつが。



「どんなやつかは見てないが、闇属性の魔法を使ったと思われるやつがいるな」


「へぇー闇属性の魔法!それってメグミちゃんはまだ使えないだっけ」


「そうね。他の属性は問題ないけど、師匠いわく闇属性の魔法は人間には無理らしいわよ?」



 そうなのか?メグミは色んな魔法使えるから闇属性の魔法も使えるのかと思ってた。

 なんせ数が多いからな、魔法の名前と効果を覚えるのは大変そうだ。

 そう考えると、俺は戦士系のスキルで良かったな。神様ありがとう。



「ほう、そりゃ初耳はつみみだな」


「なんでも、魔物しか使えない魔法属性らしいわよ?それでも闇属性の魔法を使える魔物自体が滅多にいないらしいけど」


「それなら、さっき俺が言っていたやつはレアものだな。それに魔法の規模から見ると強い可能性が高いな」



 俺が見たあのドーム状の衝撃を見る限り、ただの雑魚ではないだろう。

 あれは俺があの村に目をつけた切っ掛けでもある。あれを見たからこそ、今回あの村に襲撃しに行くんだ。

 もしかしたら本当に魔王が、強敵がいるかもしれない。



「へぇ、私の魔法とどっちが上だったのかしら?」


「そりゃ、メグミさんの魔法方が凄いに決まってるじゃないですかー」



 前に全力で魔法を使ってみたいといって、放った魔法が山を消し飛ばした時は、流石に腰を抜かしたね。メグミを怒らせないようにしようと思った瞬間だ。


 そんないつも通りの他愛もない会話をしながら空の旅を続けていると、いつも間にか目的地のアイタル森林が見えてきた。



「おい、そろそろ着くぞ?一応気を引き締めておけよ」


「ほーい」


「わかってるわ」



 俺も未だ見ぬ敵に期待を寄せながら気を引き締める。

 アユミの返事が少しマヌケだが、これはいつも通りだ。問題ない。



「ん?なんかいるぞ」



 アイタル森林に近づいていくと、付近の上空にチラチラと何か飛んでいる物を発見した。



「ギリガル・ビートルね」



 遠視の魔法を使って確認したメグミから状態が伝えられる。

 ギリガル・ビートルか、普通ならこの付近には生息してないハズの魔物だ。

 ギリガル・ビートルの討伐ランクはBだったけか?いや、Aランクの時にも依頼を受けた気がするな。

 まぁどっちにしたって、今の俺達からしたら雑魚同然だな。



「あ、こっちに気付いたみたいだね」



 ―――ギシャァァァ!!



 こちらに気付いたギリガル・ビートルがデカイ羽音を立ててこちらに向かって飛んでくる。



「ここは俺がやるよ、お前らは念のため魔力を温存しとけ」



 ギリガル・ビートルは確かマヒ攻撃を中心に仕掛けてくる敵だったよな。



「相変わらず虫系の魔物は鳴き声が気持ち悪いな」



 ―――ギシャァ!



 ギリガル・ビートルの射程距離に入ったようで、攻撃を仕掛けてくる。

 日本原産のスズメバチの針なんて目じゃないぐらい大きい針が飛んできた。

 ギリガル・ビートルとドライグもお互いの距離を縮めているので、針が飛んで来る速度も心なしか早く見える。いや、実際には早くなっているだろうが、今の俺ならその程度は誤差の範囲内だ。



「スキル!《聖剣召喚》!」



 俺は自分のやや後ろに現れた魔法陣に手を突っ込む。突っ込んだ先で剣の柄の部分を握ると、それを一気に引っ張りだした。



「光聖剣ベガ=ルタ!」



 取り出したのは光聖剣ベガ=ルタ。

 この聖剣は俺のスキル《聖剣召喚》で呼び出す事ができる3つの聖剣の内の1つだ。

 他2つの聖剣に比べると破壊力が物足りない。しかし、この聖剣には他2つにはない能力があるのだ。

 それは―――



「おらぁ!」



 ―――ギ、ギシャ!?



 俺が剣をその場で振ると剣先から白い斬撃ざんげきが生まれる。その白い斬撃はこちらに飛んで来ていたギリガル・ビートルの針を2つに切断し、その勢いのままギリガル・ビートルまでをも2つに切断した。



「こんなもんか」



 2つに切られたギリガル・ビートルは浮力ふりょくをなくしたため、重力に従い落下していく。

 虫特有の神経節しんけいせつが、死に行く間際も鳴き声を漏らす働きをする。

 短い鳴き声を発しながら死んだ虫は落下していった。



「森に着いたな」



 アイタル森林の上空に着いた。真下は木々が生い茂っており、地面が見えない。

 この森は他の森とはスケールが違うほど巨大なのだ。



「えーっとどこら辺だったけかな」



「グルル」とドライグがのどを鳴らす。

 どうやらドライグも正確な位置を覚えていないらしい。

 目印になるものが少ない所で正確な位置を覚えて置くなんて無理だろ。



「ちょっと、しっかりしてよ」



 メグミが俺の頭を心配する声が聞こえる。

 大丈夫だから。空から見下ろしているから、見つけるのは簡単だから!



「あー確かこっちだったような」



 5日前の記憶を脳内の引き出しからなとなく発掘する。

 ドライグもそんな気がしていたのか「グルル」と喉を鳴らして答えてくれる。


 少し飛んでいると、『ヴヴヴヴヴ』と何かが振動するような音が聞こえてきた。



「この音なに?」



 音は360度の全方位から聞こえて来ている。

 なんだ、とドライグから少し身を乗り出して下を見てみる。



「うわっ」



 そこには大量のギリガル・ビートル、そしてそれと同じ昆虫系の魔物であるヘラクレス・ビートルがいた。

 先ほどから鳴っている何かが振動するような音はこいつらの羽音だったのだ。



「うわっ」


「うーわっ」



 俺が下を確認して声を上げた事により、女性陣2人も身を乗り出して下を確認したようだ。

 感想は俺と同じだ。



「これは少しだけ面倒だな」



 俺はもう一度、光聖剣ベガ=ルタを構える。

 雑魚も流石にこれだけいると面倒だ。それにここは空中。地上ならともかく、空中では他2本の聖剣が使えない。



「どいてイツキ。私が範囲魔法で蹴散けちらすわ」


「おいおい、もしもの為に魔力は残しておいた方がいいだろ?」


「そうだけど、問題ないわ。一発しか魔法は使わないから、魔力も誤差の範囲内よ」



 まぁ今回はいいか。こんだけの量がいるなら俺が体力使って処理するより、メグミの魔法で一気に数を減らして細かい残りを俺が潰していった方が効率がいいか。



「わかったよ、ここは任せた」


「ええ、任されたわ」



 なんだこいつ、いつになくテンションが高めだな。

 もしかして、これだけの量の魔物相手に魔法を撃ち込めるから楽しみなのか?

 そうか、確かにこの量を1つの魔法で一掃するのは気持ちだろうな。やっぱり少し羨ましいな魔法ってのは。



「ふぅ。さて、いくわ!《竜巻による猛威/トルネード・クロス・レイジング》!」



 メグミ魔法を唱えたとたん俺達を中心として、回りに巨大な竜巻が生まれた。その竜巻は辺りのギリガル・ビートルとヘラクレス・ビートルをブラックホールの如く吸い込み、まるでミキサーのように片っ端からバラバラに砕いていった。









 時間は少しさかのぼる。イツキ達が最初のギリガル・ビートルを倒した事により、その異常に気付いた2人の魔物がいる。



「ナッ!!コレハ!」



 1人目はこの森のこことなら全てを把握はあくできる力を持つトレントである、ジャック。

 ジャックは上空から、ギリガル・ビートルの死体が落ちてきた事に気付いた。

 そのことから何者かが上空にいる事を理解したのだ。

 ジャックは森のことならなんでもわかるが、森の上空、つまりこの森の木より高い位置の事はわからない。

 そのため、前回のオーガの襲撃の際に警戒を強化して森の回りに見張りと警備としてギリガル・ビートルズを数名配置したのだ。


 そして、その見張りの1人が何者かに殺された。



「緊急事態ダ!」



 ジャックはこの事をスライムさんに伝えるべく、やぐらに向かった。



 櫓に着くとジャックより、先にギリガル・ビートルのダニーがスライムさんと話していた。

 どうやらジャックと同じで仲間の死により、異変に気付いたらしい。



「ドウシマスカ?」


 ―――ギシャァァァシャシャァァ!!



 ジャックがスライムさんの指示をあおぐが、ダニから怒りの怒号どごうが飛ぶ。

 仲間を殺された怒りで、今すぐ反撃するべきだと怒鳴っている。


 しばらくの沈黙のあと、スライムさんから指示が出される。



 ―――プル!プルプルプル !


 ―――ギシャァァ!!


「ワカリマシタ。デハ、早速伝エテキマス」



 スライムさんが出した指示はこうだ。


 敵は上空にいるため、とりあえず空を飛べるビートル族をダニーが率いて対処を試みる。

 その間に、ジャックはこの緊急事態を皆に通達。

 ダニー達の様子をみて、各自最悪の状況を想定して動くべし。


 そう指示を受けた2人は指示に従い行動を開始する。

 ダニーは自分の種族であるビートル族の全軍を率いて出陣しゅつじん。仲間であり同族である仲間のかたきを討つべく、上空の敵に向かって飛翔ひしょうしていった。


 その間にジャックは村の全体に緊急事態である事を通達。

 最悪の事態を想定しながら、ダニーとその侵入者の戦闘の行く末を地上から見守る。



「ナンダ!?」



 その時。この森の上空に巨大な竜巻が現れた。

 自然現象ではあり得ないほどバカデカイ竜巻だ。

 その竜巻はダニー率いるビートル族を飲み込み、その竜巻が消滅するころには上空にビートル族の姿はなくなっていた。



「ソンナ・・・!?」



 大儀式でも用いたかのような、高威力、広範囲な魔法。

 魔法に長けたトロルでも100人ぐらいあつめて、儀式魔法を行使しなければいけないような、明らかに異常な魔法。



 その魔法を受けてこの時この村にいたビートル族は、ほとんどが死亡した。



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