第32話 進化したゴーレム



オーガが来るとわかっている方向にアンデット・ナイトが村を守るようにならぶ、そしてその前にはオーガの無力化をまかされたザイル達サンド・ゴーレムが待機している。


アンデット・ナイトの後ろには、ダニー率いるビートル族とダスト率いる悪魔族が待機している。

その更に後ろには建物の屋根にスライムさんが待機している。指揮役であるため高い所から全体を見渡している。



―――プルプル


「モウスグ確認デキル所マデ来マス」



ジャックが敵の位置を報告すると、魔物達は身構えた。そしてそのあとすぐにオーガの接近が目に見える所まできた。

どんどんとオーガ迫ってくる。



「ゴゴゴォ」



ザイルが無機質な声を上げると、それに迎え撃つ形でサンド・ゴーレム達が動き出した。

敵のオーガは全部で17体。対してこちらのサンド・ゴーレムは20体以上。数ではこちらが上だが、戦力的には負けている。



「サンド・ゴーレムだと?そんな低級な魔物でオーガをどうにか出来るわけないだろう」



オグルの反応は当然である。

サンド・ゴーレムはゴーレムの中でも体力がもっとも少ない種類だ。確かに体力がおとっている代わりに、ストーン・ゴーレムやアイアン・ゴーレムなどよりは素早いという特徴がある。

だが、ゴーレムが素早いと言ってもたかが知れている。

オーガからしたらはっきり言って雑魚だ。そして、その雑魚がこちらに向かって来ている。



「オーガども!目の前のゴーレムを蹴散らせ!」



そんな雑魚に警戒する必要はない。もし、警戒するなら後ろのアンデット・ナイト達だろう。

だが、それでもオーガが負ける可能性はほとんどゼロなのだ。


「グォォォ!!」とうなり声をあげながら手に持っている武器でサンド・ゴーレムをはらった。リーチの長いトゲ付きの鈍器はサンド・ゴーレムの攻撃射程に入る間もなく攻撃がヒットする。オーガの圧倒的な腕力わんりょくで繰り出されるその攻撃は一撃で意図いとも簡単にサンド・ゴーレムを砂に変えた。


「ゴゴォ」と無機質な声を上げながらサンド・ゴーレムは当たり前のようにオーガの攻撃に耐えきれず、次々にやられていく。やられたサンド・ゴーレムは体をたもつ事ができなくなり、自分の元の物質である砂の山になっていく。



「ふんっ、やはりただの雑魚だったか」



オグルが一撃でやられていく、サンド・ゴーレムを見て自分の思った通りの結果になった事を言う。これは当然の事だ。この世界では常識なのだ。



「・・・ド、ドウシマスカ」



一方、魔物側でも少し混乱が起こっている。

オーガを何とか出来ると名乗りをあげたザイル率いるサンド・ゴーレム達が、ものの数秒で、砂の山に変わっていった。

会議の時は自分で進化したとかなんとか言っていたが、そんなところは見られなかった。


アンデット・ナイト達の後ろでサンド・ゴーレム達をサポートするべく構えていた、ビートル族と悪魔族も、作戦は失敗したのではないか、という雰囲気をだしている。

ジャックその雰囲気の中、指揮役スライムさんにどうするか、と聞いたのだ。



―――プル!


「エ?デスガ、カレラハ・・・」


―――プル、プルプル!



そう、スライムさんが言っている通り、彼らはまだ終わっていない。

彼らは進化している。魔物のエネルギー原でもある魔の力より濃いエネルギーを取り込み続けた結果。

彼らの体はゴーレムのいきを超えたのだ。普通のサンド・ゴーレムならこのまま、砂の山のまま死亡していただろう。だが、彼らの進化した力はここから始まる。



「な、なんだ!」



まず、オグルが異変に気づいた。

サンド・ゴーレムは倒して砂の山になった。ここまではいい。だが、その砂が動き出したのだ。

砂が水のように流れるように動き、一本のへびのようになる。

そして、それがオーガの体ににまとわりつく。



「オーガども、自慢の力でそれを壊せ!」



オーガ達は命令通りにに自身に纏う砂を壊そうとする。

しかし、その砂はサンド・ゴーレムの時とは違い、固まっている訳ではない。

そのため、いくら力を込めて砂を握ろうが、いくら砂を払おうが、破壊はできず、払った砂は戻ってくるのだ。


次第にオーガは全身を包まれ、身動きが出来なくなっていく。

何とか抵抗しているオーガもいるが、それはビートル族のマヒ攻撃や悪魔族のデバフ効果の魔法で次第に動かなくなった。



「そんな・・・オーガが!最強の魔物が、こんな雑魚なんかにっ!」



オグルが信じられないとばかりに声を荒げる。

だが、事実は事実。オーガがサンド・ゴーレムにやられたというのは紛れもない事実だ。


こうなったらオグルは撤退するしかないと思い、逃げようとする。



(くそっ!俺が甘かった!我々全員で掛かるべきだった!)



無力化されたオーガを見捨て、身体能力を上げる魔法を使いながらオグルは逃走した。

しかし、それは叶わなかった。

目の前に白い円が現れたからだ。



転移門てんいもんだと!?」



転移魔法の中で、自分を移動させるタイプの転移魔法でなく、空間と空間を繋げるタイプ転移魔法の場合、転移門と言われる円がその空間と空間を繋ぐ。

ベテランの魔法使い数人で儀式ぎしきを行わなければ、転移門を使う転移魔法は発動しないと言われている。

そんなものが目の前に現れた。


そして、その転移門の中から出てきたのは死者アンデットだった。



「くそっ!!」


「お前はここで死んでもらう」



スパーダはオーガを操っていた男にそう言って刀を向けた。

スパーダはそう言っているが、オグルには言葉として聞こえていない。きっと目の前のリビングデッドが恐ろしいうめき声をあげたように聞こえているのだろう。


スパーダの刀がオグルを襲う。

しかし、その攻撃ははじかれた。



「ほう」



オグルがとっさに防御魔法を使ったのだ。

彼の得意な魔法はオーガを操る魔法ではなく、防御魔法だ。

彼はオーガの攻撃をも防ぐ防御魔法と、オーガを操るという2つの魔法を駆使して、魔王教の8人の中でも最強をほこっていた。


事実、その戦術は強い。魔物を操っており、操る事が出来る魔法に射程距離が存在する以上、モンスターテイマーはその射程距離にいなければならない。

つまり、操っている魔物から長距離離れる事ができない。そのため、モンスターテイマー自身が狙われてしまう可能性がある。

それを狙われてやられてしまえばおしまいだ。モンスターテイマーは本体が重要なのだ。

しかし、オグルのように防御魔法が使えるのなら、狙われても問題ない。防御魔法を使いながら、安全に魔物を操ることができるのだ。



「ふむ、なかなか硬いな」



スパーダがその防御魔法を2回ほど攻撃するが、防御魔法は壊れない。

スパーダという特別製のリビングデッドの攻撃を耐える時点でオグルの防御魔法の凄さがうかがえるだろう。



(くそっ!これじゃ逃げれねぇ!)



防御魔法は破られてないが、この魔法は停止しながらでないと使えない。動きながらは使えないのだ。魔法もそこまで万能ではない。



(仕方ない、一回限りだから使いたくなかったが、これを使うしないか)



オグルはふところに入れてある転移魔法が込められた魔道具まどうぐに意識を向ける。

これは前回、ジュディアが使ったものと同じものだ。使用者をあらかじめ設定している場所に転移させるものだ。しかし、これは使い捨てだ。この魔道具の価値も効果からかなり貴重なものだということがわかる。

しかし、オグルは絶対絶命の状況。背に腹は代えられないと、その魔道具を使用することを心に決める。


そうと決まれば使うタイミングだ。

この魔道具を使うとなれば一度この防御魔法を解除しなくてはならない。

解除して、魔道具を使用するまでのわずかすきに攻撃されてはまずい。



(次にこのリビングデッドがこの魔法に攻撃してきた弾いた瞬間に解除して、魔道具を起動させる!)



そのタイミングなら間に合う。次に攻撃を、仕掛けてくるタイミングでやると決めて、オグルはそのタイミングを待った。



「確かに硬い。これなら並大抵なみたいていの事では破壊できないだろう」



スパーダがオグルの防御魔法を見ながら話始めた。だが、オグルにはうめき声にしか聞こえない。



「だが、今回は相手が悪いというやつだな」



そういうと、スパーダは刀に具現化した殺気を纏わせていく。刀は禍々まがまがしい色に包まれていった。



(なんだ!?このリビングデッドは何をしている!?)



見たことも聞いたこともない謎の行動にオグルは混乱する。

スパーダはその禍々しい刀を大きく上に振りかぶると。


勢いよく振り下ろした。



―――ドガァアァァァン!!



爆音が森に鳴り響き、地面が揺れ、辺りに土煙が舞う。



「後で、ジャック達に言っておかんとな」



そう、一言ひとことつぶいてスパーダは村に戻っていく。


オグルが防御魔法を展開していた場所は、地面がえぐられ、まるで隕石でも落ちてきたと思われるようなクレーターができていた。


そんな攻撃に耐えられるハズもなく、オグルは自慢の防御魔法と共に消滅した。









魔物の村がある森から少し離れた所の上空に飛行物体が飛んでいた。それはドラゴンと言われるものだ。

よく見ると上に人が乗っている。



「なんだありゃ?闇魔法でも失敗したのか?」



その男は先ほどスパーダが放った一撃で禍々しいオーラの爆発が起きた所を目撃していた。



「ドライグ、ちょっとあそこにいってみてくれ」



男は自分の乗っているドラゴンに指示をする。

ドラゴンも男の言うとおりの場所に飛んで行った。



「にしても、あらためてすげぇ世界だなこの世界」



男はドラゴンの背中にのりながら空の絶景ぜっけいを楽しむ。



「魔物はうじゃうじゃいるけど、そういうファンタジーものじゃ定番な魔王とかいねぇのかな?」



1人でそう呟いた男は、クセルセス宗教国しゅうきょうこくのSランクハンター。


悟と同じ転移者の1人だ。


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