第31話 第一回緊急会議


翌日カケルはアドルフォン王国に戻る前に、まだ代表が正確には決まっていない種族に大して、代表を決めて自宅の前に来るように伝えた。


しばらくすると5種類の魔物が集まった。

ギリガル・ビートル、オーク、サンド・ゴーレム、アモス・デビル、そしてリビングデッド。


彼ら今後、それぞれの種族の代表になる。

ただし、リビングデッドは別だ。アンデットにはリックという代表がすでにいる。

このリビングデッドは特別だ。このリビングデッドはカケルの師匠から生まれたので、特別に名前をつけるとのことだ。


前回ジャック達に名前を付けだ時のように、1人1人に名前を付けていく。



「まずはゴーレムから」


「ゴゴゴ」



サンド・ゴーレムは無機質むきしつな声を出して一歩前にでる。サンド・ゴーレムの体の砂が小刻こきざみに動いているあたり、緊張しているのがうかがえる。



「お前はザイルだ」



名前を貰ったサンド・ゴーレムの"ザイル"は嬉しそうに無機質な声を上げた。

次に名前を貰ったのはギリガル・ビートルだ。

彼は"ダニー"という名前を貰った。「ギシャァァァァァァ」と喜びの声を上げて体の節々ふしぶしをメシメシ言わせている。

続いてオークは"エクロス"。アモス・デビルは"ダスト"。という名前をそれぞれ付けられた。


そしてこの命名式もラストだ。最後はリビングデッド。彼に名前を付ける。



「よろしくたのむ」



リビングデッドが一歩前に出る。

彼は骨だけなので表情の変化は一切わからないが、表情にでないぶん声にワクワク感があった。



「お前はスパーダだ。スパーダは剣という意味の言葉だ」



その後すぐに「どこの国の言葉だったかはわからないが」と小声でカケルは呟いたが、"スパーダ"はそんな事は気にしなかった。



「そうか、"剣"か・・・私にとっては最高の名前だ」



スパーダは自分の名前を大層たいそう気に入ったようだ。

こうして各種族の代表プラスαの第2回命名式は終了した。





「それじゃ、俺は行くから、あとはよろしく頼む」


―――プルプル



カケルはアドルフォン王国に戻るため、転移魔法に足を掛ける。行きの見送りはスライムさんとその護衛のリビングデッド、改めスパーダだ。


2人に見送られながら、カケルは転移魔法の中に入って行き、村を後にした。








「転移魔法で居なくなったか・・・今がチャンスか?」



魔物の村がある森の外から、遠視の魔法で村を覗いている男がいた。

男は黒服を来ており、周りにはオーガという種族が十数体。全てのオーガは中国の打撃武器だげきぶきの一種である狼牙棒ろうがぼうに似た武器を手に持っている。


男の名前はオグル・トラウルド。魔王教の8人の中の1人である。


男は先日の夜、カケル達が魔物と食事している

時に遠視の魔法を使用してこの魔物の村を発見した。


前回、魔王教の8人の内の1人であるアンデット使いのジュディアが何者かにアンデットの軍団を奪われ、作戦が失敗したと報告した。

そのあと、その男の正体は我々よりすぐれたモンスターテイマーだと結論づけ、その男についての話し合いが行われた。

その結果、その男は交渉してなんとしでもこちら側、つまり魔王教に引き入れる事ができれば引き入れる方がいいという意見いけんが4人。

我々の目的達成の邪魔になるその男は即刻排除はいじょした方がいいという意見が4人。と綺麗に意見が2つに別れた。


ジュディアは直接見たからなのか、すっかり意気消沈いきしょうちんしてしまっており、魔王教に引き入れるスカウト派の4人の内の1人だ。

対してこの男は即刻排除した方がいいという、抹殺派の4人の内の1人だった。



そしてカケルが転移魔法で出掛けた今、襲撃するなら今が好機こうきと考えている。

それはモンスターテイマー同士で戦闘した場合、その勝敗を分けるのはテイムしたモンスターの数や質ではない。

モンスターテイマーの実力で決まるのだ。


なぜなら、相手のテイムしたモンスターをテイムする事が出来れば、それは事実上の敗北だ。

戦力が丸々奪われてしまった状態では勝てる訳がない。

前回、ジュディアはこれをされたのだろう。


だが、今この魔物の村を作っているモンスターテイマーの男は転移魔法で居なくなり、この場に居なくなった。

これで戦闘になった場合、こちらの戦力を奪われる心配はなくなった。

それ加え、こちらの戦力はあのオーガだ。今、仕掛ければあの男の戦力を大幅にけずれる、それどころか相手の戦力を奪えるかもしれない。そう考えた結果、今襲撃するのが好機なのだ。



「やるなら、今だな。行くぞオーガども!」



「グォォォ!」とオーガは唸り声を上げて、オグル・トラウルドと共に魔物の村を目指し、森の中に入って行った。


オーガは全魔物の中でも上位に位置するの存在だ。

そのスペックはそこらの魔物では相手にならず、別の種族の上位の魔物と戦闘しても8割ぐらいの高確率で勝利できるほどだ。

オーガは魔法こそ使えないが、それ以外のスペックがずば抜けて高いのだ。

素早く動けて、攻撃力も高く、防御力も高い。正に戦闘力でいえば魔物の最高峰に位置するともいわれている魔物だ。

そんなオーガが十数体いれば、たとえ中位の魔物が何体居ようが、勝てるのだ。


正に最強の魔物軍団だ。









「コレハッ!!」



トレントのジャックが森に侵入してきたもの達を感知する。

この森はトレント達が完全に支配しているため、この森に1歩でも何者が侵入してくれば、それがどんな種族で、数はどのくらいいるのか、具体的に何処にいるかが、リアルタイムでわかるのだ。

この森全体が探知結界のような役割を果たしている。


異常に気づいたジャックはすぐにスライムさんの下に向かった。




「ハイ、コチラニ真ッ直グニ向カッテ来テイマス」


―――プルプル!


「向カッテ来テイル者ハ、オーガガ17体。人間ガ1体デス」


―――プル!



スライムさんはこの異常事態について考える前に各種族の代表を大至急だいしきゅう集めるようにジャックに指示した。



「ワカリマシタ。大至急呼ンデ参リマス」



ジャックが自身の能力をフル活用した結果、5分も掛からずに皆集まった。

彼らはスライムさんを囲むように、グレム、サイゴン、リック、ジャック、ザイル、ダニー、エクロス、ダスト、そしてスパーダという。10体の魔物が集まった。

そしてこの村、初の緊急会議きんきゅうかいぎが始まる。



「ドウシマスカ?」


―――プル


「ジャック・・・ソイツラハ・・・ナゼ・・・ココ向カッテ・・・イル?」


「恐ラクダガ・・・前ニ魔人サマニ助ケテモラッタスケルトン達ガ言ッテイタ者ダロウ」



ジャックが行ったのはジュディアと彼女に操られていたアンデット達の事だ。

今回もその時のように何者かがオーガ達を操っているかもしれないのだ。



「グガァ!?」


「ギシャ!ギシャシャシャ!!」


「という事はここに向かって来ているオーガ達は操られているという事か」


「ヴォォヴォオ!!」


「ゴゴォォ」


「ソォノォ人間ヲォ殺セバ、オォーガハ解放サレルノォデハナイカ?」


「確かにその可能性はあるな」


「ブモォブォォブモォブモォ?」


「ギシャシャ、ギシャァァギシャァ」


「確・・・かに・・・」



ダニーとサイゴンが我々では魔人様と同じように、操られている魔法を解く事ができないのではないか、という可能性を口にする。彼らは魔人様がアンデットを解放したという事実は知っているが、魔人様がその時どうやってアンデット達を解放したのかまではしらないのだ。



―――プル!プルプルプルン


「ソレガ、私ノ枝ハ魔人サマガ地面ニ指シタ時ニハ話セルノデスガ、コチラカラ、魔人サマニハ伝エラレナイノデス」


「グガガガァ」



つまり、ジャックの枝は一方にしか掛けられない電話のようなものだ。これではこちらから今回の襲撃の事を伝える事はできない。運よく、魔人様の方から連絡をもらわなければ連絡できないのだ。



―――プル!プルプルン


「ダガ・・・ドウスル・・・相手ハ・・・オーガダゾ」



スライムさんが、魔人様と連絡が取れない以上こうなったら我々だけで何とかしようとする。だがそこで問題になるのはオーガの事だ。



「私が相手しても問題ないが、その間に操っている人間が何かしてくるかもしれん」


「ヴォォオォ」



オーガは強く、スパーダ以外の魔物では相手ができない。かといってオーガの相手をスパーダが行うと、その操っている人間が何かしてくるかもしれない。やるなら同時が好ましい。そこでスライムさんはスパーダ以外に何とかオーガを無力化むりょくかできる魔物が居ないか聞いた。



―――プル!プルプルプル!


「ゴゴゴォ」



そこで名乗りをあげたのは先日、露天風呂で大活躍だいかつやくしたサンド・ゴーレムのザイルだった。



「ナニ?ザイル。オ前達ガオーガヲ相手スルトイウノカ?」


「ゴゴゴォゴゴゴォォ」


「ギシャァ?」


「ソウカ・・・進化シタ・・・ノカ」


「ヴォヴォヴォ!」


「ゴゴォゴゴゴゴォォ」



ザイル達サンド・ゴーレムはゴーレムの中では下位の魔物だ。到底とうていオーガ達に敵うはずもない。しかし、ザイルは何か秘策ひさくでもあるらしく、自信に満ち溢れている。

それを見たスライムさんはオーガをザイル達、サンド・ゴーレムに任せる事にした



―――プル、プルプル。プルプルプル、プルプル。プルプルプル、プルンプル



そしてスライムさんはそれぞれの魔物達に指示を与えていく。




「うむ、承知した」


「ヴォ!」


―――プルプル、プルプルン


「リョォカイダ」


「ギシャ!」


―――プルプル、プルプル


「ブモォ」


「了解・・・した」


「ワカリマシタ」


―――プル!プルプル!!



こうして魔物達だけの緊急会議は終わり、魔物達が建てた作戦が実行される。

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