第30話 風呂作り

 


 エリカの訓練開始から次の日。この日はカケルが村に帰る日であった。

 昨日の夜に、エリカに1週間に一度、自宅に帰る事を伝えている。

 カケルは自分がいない間は昨日と同じメニューを続けるように指示をだしておいた。


 エリカは残念がっていたが、今頃1人で素振りをしているのだろう。

 カケルは目の前に現れた転移魔法に足を踏み入れながらそう思った。





 魔物の村に着くと、迎えてくれたのはスライムのスライムさんとあのリビングデッドだった。

 前に来た時、村の魔物が総出そうでで迎えてくれたが、戻ってくる度に全ての魔物が集まる必要はない。とカケルが言った為、スライムさんとその護衛ごえいを担当しているリビングデッドの2人が迎えてくれた。



「ただいま」


 ―――プルプルッ



 スライムさんがカケルの胸に飛び付いた。カケルはスライムさん受け止めると軽く撫でた。

 相変あいかわらずお気に入りのスライムボディを堪能たんのうしていると、カケルは違和感を感じた。



「スラさん・・・最近太った?」


 ―――プルッ



 スライムさんが一回り大きくなっている気がするのだ。



(俺の勘違いか?いや、でも、これは明らかに大きくなっているような・・・)



 スライムさんが太ってしまった事を気にしながらカケルは自宅に帰って来た。


 自宅に着くと、木の床に倒れ込む。ここでは心身しんしんともにリラックスできる場所だ。

 そうしてそのまま、スライムさんを1時間ほど弄ることがもはや恒例こうれいになっている。

 1時間後、自宅から出てきたカケルとスライムさんはツヤツヤしていた。



 カケルは村がどう変化したか見回っていく。今回も解説役としてジャックが共をしている。

 あれからハンターとして依頼をこなしていた為、その依頼で村のメンバーになった魔物が増えている。

 新たな種族はオークを始めとし、悪魔族のアモス・デビル、サタキア・デビル。ゴーレムのアイアン・ゴーレム。ビートル族のヘラクレス・ビートル。


 新しい種族はこの位だ。もちろん、この村に既存の種族の数も増えている。

 村もかなり大きくなってきた。いつもまにか知らない施設とかも増えていたため、トレントに説明をしてもらいながら、カケルは村全体を見ていく。


 村を簡単に一回りした所で今回、村に戻ってきたらやろうと思ってきた事をやろうとする。

 それは風呂作りだ。

 カケルはこの村に露天風呂ろてんぶろを作ろうと思ったのだ。

 今までは川で水浴びか、ファイアスライムに水を汲んできてもらい、それを掛けてもらっていた。

 ファイアスライムが水を取り込むと水はお湯になり簡易的なシャワーになっていたからだ。


 しかし、カケルは最近思ってしまった。風呂に入りたいと。日本人の血がさわぐのだ。

 カケルは早速、風呂作りの準備に取りかかった。








「ふぅー、やはり風呂は良いなぁ」



 数時間後、カケルは出来立てほやほやの風呂につかかっていた。


 石で出来たわくに、スライムが水を入れ、それをファイアスライムが暖める。これで風呂は出来上がった。

 実はこの露天風呂、製作作業は1時間ほどで、どういう作りにするかを何時間も悩んでいたのだ。

 お湯をるのはスライム達にやってもらう事は決まっていたが、肝心のお湯を溜める枠をどうするか悩んでいた。最初は木で作ろうとしたが、今の木の接合技術では、どうしても隙間が出てしまい、お湯が抜けてしまうのだ。


 結構、安易あんいな考えで風呂を作ろうと思っていたカケルは頭を悩ませた。

 そこに、この問題を解決してくれる魔物が名乗りをあげた。


 それはサンド・ゴーレムとストーン・ゴーレムだ。


 ゴーレムの種族はある特性とくせいがある。

 それは体が欠損けっそんした場合に自分の体と同じ物質を体にくっつけて、失った部分にするという特性だ。


 今回その特性を使用してこの露天風呂を作ったのだ。

 まず大量の石を用意した。それをストーン・ゴーレムが、どういう原理かわからないが、石同士を接合。その次にサンド・ゴーレムがその特性を利用して接合された石の細かい隙間を砂で埋め、それを固定。そうして1時間ほどで、石の枠は完成した。さっそくスライム達に水を入れて貰い、そこにファイアスライムを浮かべて、30分。こうして魔物の村の露天風呂が完成したのだった。



「これが、風呂というものか。なかなか良いものだな」


「ヴォォ~」


「グガァ~」


「オァァ~」



 リビングデッドと、サイゴン達トロル数人、グレム達ゴブリン数人、それにスケルトン数人と一緒に風呂に入っている。皆、風呂というものを気に入ってくれたようだ。


 ゴーレム達には広く作って貰ったが、それでも大きさの様々な魔物が入るといっぱいいっぱいだ。

 風呂の入り口は木で作り、女と書かれた入り口と男と書かれた入り口の2つを作った。

 風呂は女湯と男湯に別けた。カケルには性別の見分けがつかないが、トレントに聞くと一応性別はあるらしいので分けたのだ。

 もちろん男湯と女湯の間には木で仕切りを付けてある。


 実際にカケルが男湯の方で使っていると仕切りの向こう側から魔物の声が聞こえるため、女性個体がいるのだろう。



「最高だなぁ」



 カケルは風呂に浮かんでいるスライムをいじりながら、久しぶりの風呂を楽しんだ。








「よし、作るか」



 カケルが風呂を出ると日が落ちてきた頃だったのでカケルが帰って来た時、恒例の料理タイムだ。

 今回はミートフラワーがあるので魚は使わない。


 ミートフラワーはミカンように球状で少し厚い皮に包まれており、それを剥くと中から肉が現れる。正確には肉ではない、あくまでミートフラワーは植物なので、まるで肉のような食材だ。


 ビートル族とアンデット達の働きによって畑で育てていたミートフラワーが大量に収穫しゅうかくされたため、今回はミートフラワーを使った肉料理だ。


 大胆だいたんな丸焼きから味付けして炒めたものまで、様々な肉料理を作った。

 人数も増えたため、料理の種類と量も増やしたのだ。

 今回はスライムやビートル族といった液体しか食事できない魔物のために、スープも作った。


 魔物の食事というか、エネルギー補給ほきゅうの種類は基本的に3種類に別けられるそうだ。


 まず1つ目は基本的に食べれる物なら何でも食べる雑食の魔物。

 これはゴブリンやトロル、新しく入ったオークやデビル族はこれになる。

 2つ目は、液体しか食べる事ができない液体限定の食事の魔物だ。

 これはスライムやビートル族がこれにはなる。

 そして3つ目は食事を必要とせず、何らかの別の方法でエネルギーを補給する魔物だ。

 これはトレント族やアンデット、ゴーレム族がそうだ。

 トレントは本人曰く太陽光でエネルギーを補給しているらしい。

 アンデットとゴーレムはエネルギー補給は必要ないそうだ。そもそもアンデットとゴーレムの種族エネルギーの減少がない種族なのだ。

 エネルギー原である、魔の力と呼ばれるものを取り込む事はできるが、最初からエネルギーは減少しないためあまり必要とはしていない。


 しかし、そんな彼らが取り込める魔の力と呼ばれるもには旨いうま不味まずいの違いがあるそうなので、カケルは旨い旨いと言ってくれるアンデットとゴーレムに自信の具現化した殺気を食わせやっている。


 因みにリビングデッドは自分で殺気の具現化をできるがカケルのものと味を比べた所、カケルの物のほうが格段に旨いそうだ。



 こうしてカケル達はこの日の晩御飯ばんごはんも楽しく、ワイワイと過ごした。





「あれは・・・」



次の日、黒い服を着た1人の男がこの魔物の村を発見した。

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