第28話 エリカの答え


「行ってしまいましたね・・・」


「・・・」



あの後、残されたカエデとエリカはしばらくカフェの席に残っていた。



「どう・・・しますか?先ほどの話・・・」


「どうするもなにも、あんな条件・・・無理だ」



カケルが出した、剣術けんじゅつを教える為の条件。

カケルが一人前と認めるまで、魔物を攻撃、殺さない事。

それはハンターとして活動している彼女では無理な話だ。

ハンターは魔物を討伐する仕事なのだ。それを一時的とはいえその活動かつどうを止めろと言われているものだ。



「私は、あの条件を飲んで剣術を教えてもらった方がいいと思います」


「え?」



エリカは唐突とうとつに発せられたカエデの言葉に反応せざるをない。



「ど、どうしてだ?しばらく、ハンターとして活動出来なくなるんだぞ?」


「それでも、です。ハンターとしてしばらく活動出来なくなったとしても、エリカは彼から学び、強くなってください」


「でも・・・っ!」


「ここで力を付けなければ、私たちノーティスは先に進めません。エリカもそう思ったのではないですか?」


「それは・・・そうだけど」



「私なら大丈夫です。エリカが強くなるまで待ってますから。この2年間でお金の方も余裕よゆうがありますから、しばらく何もしなくても問題ありません」



エリカはなやんでいた。

別にカケルに教わらなくても良いのだ。

彼がダメだったら他の人に頼もうと思っていた。元々はダメもとでカケルに剣術を教えてほしいと頼んだのだ。


しかし、パートナーであるカエデがここまでエリカの事を思って、ここまで言ってくれている。

エリカは人生で一番、悩んだ。

自分の欲求よっきゅう。自分の未来。カエデの思い。カエデの未来。自分達、ノーティスの未来。

そして結論をだした。



「・・・わかった。オレ決めた!彼に教わってくる!」


「エリカ・・・!」


「カエデには待たせちゃうけど・・・」


「私なら、しばらく大丈夫ですから!・・・でもなるべく早くお願いしますね」


「ああ!わかってる!できるだけ早く、強くなって帰ってくる!」


「その時は、彼とどこまで言ったか聞かせてくださいね?」


「どこまで・・・?」



エリカはカエデの言葉を理解するのに時間が掛かる。そして、カエデの言葉の意味を理解すると、エリカの顔は赤く染まっていった。



「これは・・・あまり期待しない方がいいかしら?」


「なっ!?」



その後、恋愛関係の事でカエデがエリカをからかい、エリカが顔を真っ赤にして言い争っている状況が続いた。

しばらくすると2人とも落ち着いたのか静かに顔を見合せ、笑った。



「では、返事を言いに行きましょうか」


「おう!」



そう言って2人はカップに残っていたものを同時に飲み干した。



「すっかり冷めてしまってますね」


「そうだな」



2人は仲良さそうに笑いあっていた。




カフェを後にした2人はカケルに返事をしようと、思い歩いていた。

そこで、2人はあることに気づいた。


それは待ち合わせの場所や時間などを指定されてなかったのだ。どこでどうやって会えば良いのかわからない。2人は考えた結果、とりあえずハンター組合に向かう事にした。


しかし、組合のどこにも彼の姿は見えなかった。組合内でカエデが今朝けさ、出会った気持ち悪い男に再び出会う、というトラブルがあったが、今回は近くにいた女性ハンターがその気持ち悪い男をボコボコにしてくれたので、大した事はなかった。


その後、組合を出た2人は大通りに出て、カケルを探し回った。

道中、待ち合わせの指定などをしなかった事に対して「以外と抜けてる所もあるんですね」と2人が話していた。



「今日は一旦、宿屋に戻りましょうか。また明日、探しましょう」


「そうだな」



結局カケルは見つからず2人はいつもの宿屋、ブリスロード亭に戻って来た。入り口から受付に行く。



「えっ!?」



ブリスロード亭の受付に1人の男が立っていた。それは彼女達がさんざん探し回っていた人物。瞬殺のカケルだった。

そう。カケルもこの宿屋を利用していたのだ。


このブリスロード亭は安い。だが、もちろん安いため品質ひんしつは値段相応だ。ブリスロード亭のように安い宿屋は駆け出しのハンター達が良く使っているが、Bランク以上になってくると皆、報酬の額も上がるため、寝床も高い品質の場所を求めて、値段が高くても品質が良い宿屋に移るものだ。それに、高いランクのハンターが低い品質の宿屋に泊まっていると、ケチ臭いと思われる風潮ふうちょうがある。これも品質の高いハンターが宿屋を品質の高い宿屋に移す理由の1つだ。


だから、Sランクハンターのカケルがこの宿屋を利用している事に、2人は驚いた。

カケルとしては寝床の品質などはどうでもいいに等しいため、ただ単に安いから利用しているだけだ。



「あ、あの!」



エリカがカケルに話掛ける。カケルは声に気がつくと2人の方に向く。カケルは特に表情を変えずに、返事を返した



「・・・お前らか。返事は決まったのか?」


「はい!」



エリカ決意した表情で、カケルに自分達の答えを言った。



「オレは、あなたに認められるまで魔物を攻撃しないし、殺しません。だから、オレに剣術を、いや!オレを強くしてください!」



エリカの答えを聞いたカケルは特に驚きもせずに、表情も一切変えなかった。だが―――



「わかった。明日から始める。今日は休んでおけ」



そう言ったカケルの言葉は何処か嬉しそうだった。


その後それぞれが明日にそなえて、部屋で深い眠りについた。








翌日、エリカはいつもより早く目が覚めた。

エリカは今日の事を楽しみにしており、そのため目が覚めてしまったのだ。

エリカがふと、ベットを見ると隣でカエデが寝ている。

しばらくその整った容姿を眺めていると、カエデも目を覚ました。

お互いに「おはよう」と挨拶をする。

その後、色々と雑談という名のカエデによる、エリカいじりが繰り広げられていた。



「そろそろ行ってみてはどうですか?」



カエデの発言に先ほどまで、顔赤くしていたエリカも冷静になる。



「そ、そうだな」



彼女達が行こうと話している場所は、カケルが泊まっている部屋の事だ。

カケルは例のごとく、時間の指定はしなかった。

明日から始めるとだけ言ったが、何時から始めるとかの指定はしていない。

そこで、昨日、部屋に入るときにカケルの部屋の場所を知ったエリカは直接、部屋に行き何時から始めるか聞こうと思っているのだ。



「い、行ってくる!」


「頑張ってください!」



勇気をだして男性の部屋に行くエリカをカエデは応援する。カエデの顔は笑顔だが、その笑顔の裏には何か面白いあればいいな、という黒い笑顔が見え隠れしていた。



―――コンコン



「す、すみません。オ、オレ・・・で、す」



エリカは部屋の前まで行きノックしたは良いが、なんて言えばいいかは決めてなかった。そのため、新手あらてのオレオレ詐欺さぎみたいになってしまっていた。


10秒もしない内に、ガチャリと扉が開く。



「・・・なんだ、お前か」



そう言ってカケルは出てきた。

しかし、ここでエリカに異変が起こる。顔を真っ赤に染めてなぜか、カケルの上半身を凝視ぎょうししている。


なぜなら、部屋から出てきたカケルは上半身がはだかだったのだ。

エリカはそれを見た瞬間、あまりに突然の不意討ふいうちだった為、声はあげられずだまったまま男性の生身の上半身を、でダコのようになった顔で見ていた。



「あと少ししたら行くから、受付の所でまっててくれ」



カケルは特に気にした様子もなく、エリカに受付で待ってるようにげた。

エリカはカケルの上半身を凝視しながらも静かにうなづいた。



その後、茹でダコ状態のまま部屋に戻ったエリカはカエデに、「一体何があったのですか!?」と驚かれ、受付でカケルを待っている間、カケルが来るギリギリまで質問攻めにうのであった。




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