第2章 モンスターシチュエーション

第26話 キッカケ

 


 それは、俺が受付で報酬ほうしゅうをもらった後だった。



「君が今、うわさになっている瞬殺だろ?」



 今日は依頼が少ないとの事だったので、一件だけ受けた。そして、いつも通り依頼を終わらせ、報酬を受け取った。今日の所は宿やどに帰ろうとした時に、こいつに話しかけられた。


 俺はこの男を知っている。こいつは初めてのこの国に来た時に、いきなり攻撃こうげきしてきたやつだ。

 この世界で自分の言葉が人には通じないと知った切っ掛けの男だ。今はリックの魔法で言葉が解るが、あのときは何を言っているかわからなかった。

 結局意識を飛ばした後、完全に放置ほうちしてしまったが、この男はどうやら俺と同じハンターだったようだ。


 初めてのあった時と同じく、大層たいそうな鎧と剣を装備している。今思えば、この男は依頼を受けてる途中だったのかもしれない。依頼の現場に行く途中に俺達に出会ったのかも知れないな。

 まぁ今はそんな事を考えてる場合ではない。

 この状況はまずい。こいつは俺が魔物と一緒に居た所を見ている。もし、こいつがあのときの事をハッキリと覚えていて、話しかけてきたのだとすると。かなり面倒な事になる。



「なにかようか?」


「いや、ようって程でもないんだが・・・新しくSランクになった人物がいると聞いてね。少し挨拶をしたかったのさ」



 どうやらあの時の事は覚えてないか、あのときの人物が俺だとは思ってない、または意識をうしなかったから記憶が曖昧なだけか・・・

 ともかく、あの時の事はバレてはなさそうだ。それならここは適当に話を流しそう。



「なら挨拶はできたな」



 俺はそう言ってその男のとなりを通り過ぎようとした


「まぁ待ってくれないか?」


「・・・なんだ?」


「君の顔を見たら・・・少し聞きたい事が増えてね」



 バレたか?いや、まだわからない。だが、警戒けいかいはしておこう。



「君・・・前にどこかで私と会った事はないかい?」



 まだバレてはなさそうだな。おそらくあの時と今では服装が違うのと、言葉が通じてることで、少し似てるか、見たことがある程度にしか思われてないのだろう。それなら問題さそうだ。ここはシラを切らされてもらう。



「いや、ないな。お前とは初対面しょたいめんだ」


「そうか・・・私の勘違いだったようだ」


「・・・もういいな?」


「まぁ待ってくれ、同じハンターとして聞きたい事がもう1つあるんだ」



 こいつ、まだなにかあるのか。非常ひじょうに面倒くさいが、変にこいつに目を付けられると後々あとあとなにかが原因げんいんでバレるかもしれない。ここは仕方ない。



「なんだ?早くしてくれ」


「時間を取らせてしまって悪いね。聞きたい事というのは、ハンターになった理由だ。君は何故ハンターになったんだい?」


「ハンターになった理由だと?」


「そうだ。例えば私なら、この世界の魔物を全て殺して魔物を根絶するという目標があってハンターになったんだ」


「なに・・・」



 この男の目標は全ての魔物殺し、魔物をほろぼす事だと?

 この男はなにか魔物にうらみでもあるのか・・・はたまた、なにか別の思惑おもわくがあるのか。

 まぁどこの誰が、どんな目標、目的を持っていてもそれはそいつらの自由だ。知らなければ俺にはなんも関係ない事だ。


 だが、こいつは知らないだろうが、俺の仲間を、村の家族を殺したいと思っていて、俺はそれを知ってしまった。今後、おそらくこいつは敵対てきたいすることになりそうだ。



「おいおい、そんなに警戒しないでくれ。ただちょっと個人的に知りたいだけだ。他意たいはないさ」



 俺はどうやら先ほどのこいつの発言を聞いて、少しイラついてしまっていたようだ。

 さいわいこいつには警戒しただけと思われたようだ。俺は苛立ちを押えて、こいつの質問に答えた。



「俺がハンターになった理由は・・・家族の為だ」


「家族か・・・なるほど。わかった、ありがとう。これ以上は聞かないよ、時間を取らせて悪かったね」



 俺の答えに満足したのか、その男はそれ以上話しかけては来なかった。俺はハンター組合を出ていくといつもの宿に向かった。





 魔物か。思えば俺が配下・・・というか村に誘っている魔物以外は今もどこかで誰か知らないハンターに殺されているのだろう。今まで気にしないようにしていたが、さっきの男のせいでまた考えてしまっている。

 この世界に、数多くいる魔物を全てをあの村に誘う事は出来ない。この世界に魔物は全部で何体いるのか見当もつかない。そう思うと、俺と出会った彼らは運が良いといえるのだろうか。


 俺は魔物について考えながら宿に向かって歩いていた。



「あ、あの!すみません。少しいいでしょうか?」



 ふと後ろから声が掛かる。それは男の声ではなく女性らしい高目の声だ。



「なんだ?」



 振り向くと、そこには2人の女性がいた。

 片方はこの辺では珍しい黒髪でひとみが赤い少女だ。もう一人は緑色の髪でショートヘアーの少女だ。

 俺はこの2人は見たことない。初対面だ。そんな俺に一体なんのようだというのか。



「今日はあなたにお願いがあって来ました。少し話したいのですが、少しお時間を頂いてもよろしいですか?」


「先に要件を言え」


「え、えーっと・・・それは・・・」



 なにやら戸惑とまどっている。少女2人からは「ほ、ほら、言いなさいよ」とか、「心の準備がぁぁ・・・」といった言葉をぶつぶつと言っている。


 これはここでは言いづらい話なのかもしれない。正直、こいつらの話を聞いてやる必要はない。だが、今日は依頼を1つしか行ってないため、かなり時間がある。ハッキリ言うと暇だ。この後は宿に一度戻ってまた道具屋などを見に行こうとでも思っていた所なのだ。しかし、街をブラ付いてるだけでは飽きてしまうかもしれない。ここはこいつらの話を聞くのも良い暇潰しになるかもしれない。



「はぁ、わかった。何処か落ち着いた場所で話そう」


「え、あっはい!」



 今日は特別だ。話を聞いてやろう。



「でしたら、カフェなんてどうでしょうか?」


「カフェ?」


「はい、座って話せますしどうでしょうか?」



 カフェだと?この世界にもあるのか?

 いや、元の世界のものと同じものではないかもしれない。

 そもそも、俺はカフェにいった事がない。だからか?少し気になる。



「わかった。案内してくれ」


「はい!付いてきてください!」



 俺は黒髪の少女に案内されて、この世界のカフェに向かった。

 そのカフェは店内席は存在せず、屋外席しかないカフェだった。注文するカウンターが外に出ており、そこでメニューを選び、注文できるようだ。

 大通りから少し外れた所にあるこのカフェは中々良い雰囲気だ。

 少し変わっているが、基本的には元の世界のものと同じものらしい。

 俺達3人はテーブル席の1つに座った



「なにか、頼んできますよ?お金は私が出しますので、気にしないでください」



 黒髪の少女がなにかおごってくれるそうだ。

 しかし、俺はここには初めて来た。そのためこの店のメニューなんてものは知らない。

 せっかく注文しに行ってくれるというのに、わざわざ俺がメニューを見に行くのは面倒だ。ここは適当に選んでもらおう。



「何でも良い。適当に選んでくれ」


「わかりました」



 しばらくすると、トレイに三つのカップを乗せ、戻ってきた。カップの中身は薄い赤色で暖かい飲み物だ。元の世界の紅茶こうちゃに良くにている。

 一口飲んでみると、本当に紅茶の味がした。



「それで、なんのようなんだ?」



 完全に紅茶のそれを啜りながら、改めて先ほどの話の事を聞く。



「ほ、ほら。エリカあなたが言いなさい」


「う、うぅぅぁ」



 こいつら、どれだけ言いづらい事を話そうとしてるんだ?

 紅茶を飲みながら中々話し出さないこいつらを黙って見ていると。ショートヘアーの少女がついに口を開いた。


 

「オ、オレに・・・剣術を教えて下さい!」



 エリカと呼ばれた少女が、やっと口にした内容は、思っていたより大した内容ではなかった。

 なぜ、こんな程度の事を言いづらそうにしていたのか。それぐらいの話なら立ち話でも良くないか?など色々考えた。

 だが、剣術を教えてほしい。と言われた時に真っ先に頭の中に浮かんだのは・・・


 じじいの願い事だった。


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