第25話 過去の戦争


魔王城に帰って来た魔王は何年も封印されていた事で少しの間、休む事にした。

その間オラクガ達は魔人についての調査を行っている。



「ふぅ」



魔王はベットで横になりため息を漏らした。



「封印を解いてもらい、こうしてまた生きてこの世界を見れるとはな」



魔王は自分が長い封印から解き放たれた事に感謝をしている。封印されていても意識はあったようで、かなり退屈たいくつな時間を過ごしたらしい。

そんな退屈な無限地獄から解放された魔王は安心した表情している。

だが、その安心した表情も次第に怒りに変わる。



「あの勇者どもめ!!俺を封印しやがって!!」



すでに死んでいるであろう勇者達に怒りをぶつける。

魔王が封印されてから百数年が経っているため、すでにその時の勇者は死亡している。

だが、魔王の呪詛じゅそは絶えない。しばらくその時の勇者御一行ごいっこうに対して文句を言い続けていると次第に言葉のレパートリーがなくなり、冷静になった。



「さて、これからどうするか」



魔王はベットから起き上がり、座った姿勢になる。



「封印される前は魔物と人間の共存を目指し、世界平和を目標にしていたのだがなぁ」



そう彼は封印される以前は魔物と人間の共存を目指していたのだ。とても魔王とは思えない考えだ。だが、実際に魔物達はその目標に向かって魔王に付いてきていた。

だが、彼の目指していたものは人間によって壊される。魔王は当時の人間達に協定を結ぶように提案したのだが、当時の人間達はそれを拒否。その時の人間達は魔物の言葉なんぞ信用できないと口をそろえて言った。

そして人間達は魔物を根絶こんぜつするべく、魔王達はそれに抵抗するべくして、戦争が始まった。


結局その戦いは人間側の勝利。魔王は勇者という存在により封印されたのだ。



「くそっ人間どもめ!今度は本気で世界征服してやろうか!!」



魔王はまた封印される前の事を思いだし、怒りの表情になる。

彼、以前の魔王達は世界征服や人間の根絶を目指すものばかりだった。

だが、それは過去一度も成功した事がない。何時いつも、人間と対立し、その戦いに破れてきたのだ。

敗北の歴史は魔王の、魔物の歴史なのだ。



―――コンコン



ふいに魔王の部屋がノックされる。

魔王はすぐさまベットから降りて、用意されている椅子に腰かける。

そして、先ほど一人言を言っていた時より低い声を出して返事をした。



「だれだ」


「私です。オラクガでございます」


「オラクガか・・・なんのようだ?」


「魔人の調査に進展しんてんがありましたのでそのご報告に参りました」


「そうか、よし、入ってこい」



魔王が許可きょかを出し、オラクガが入ってくる。



「失礼します!」


「それで、進展とは何があったのだ?」


「はい。私の部下が、かつて魔王様の幹部であった、リサックの拠点跡地きょてんあとちにて、秘密ひみつの地下への入り口を見つけたとの事です。リサックの拠点跡地には魔人について調べていた痕跡こんせきがいくつか見つかりましたので、地下にはもっと魔人の情報がある可能性があります」


「ほう・・・」



魔王はかつての最高幹部リサックに対して、そんな事してたのか!と内心驚く。だが次には当時のリサックとの思い出がよみがえってくる。


リサックとは魔王軍の4名いる最高幹部の1体だった魔物だ。新たな魔法の習得に熱心だったアンデッドだ。彼はよく調べものをしていた。魔法とは別に魔物やこの世界そのものについて色々な文献ぶんけんをあさり、調べるのも彼の好きな事だった。

彼は魔王の事をよくしたっており、新しく使える魔法を彼が習得したら、魔王に教えていた。

彼としては自分の好きな魔法を自慢しつつ教えるのと同時に魔王の為になることができて、その時間は大変幸せな時間だったのだろう。


だが、彼は魔王の最高幹部という事が人間達にバレて勇者に真っ先に殺された。最高幹部の中で一番最初にやられたのは彼だ。その時は他、3名の幹部達と一緒に胸を痛めたのをよく覚えている。



「ですが、その地下室の入り口は強力な結界けっかいに守られているらしく、私の部下の実力では突破とっぱは困難との事です。そのため私がこれから直接むかいたいと思います」


「ふむ・・・まて、そこには私も行こう」


「魔王様もですか?」


「ああ、私もその地下室を見てみたい。それに私が行けば後で報告する手間もないだろう?」



魔王はそういうが実際の所、暇だっただけである。もちろん魔王の発言に嘘はない。地下室を見てみたいのは本当だし、報告の手間が省略しょうりゃくされるのは事実だ。だが、一番の理由は自分にやることがないからだ。



「わかりました。今から向かいますか?」


「うむ、すぐ行くとしよう」



魔王は城から出ると、魔法を使用する。魔法を使った魔王とオラクガは目的であるリサックの拠点跡地まで飛んでいった。





「ここがそうか」



30分もしないうちに魔王とオラクガはリサックの拠点跡地に到着した。



「お待ちしておりました魔王様、オラクガ様」



拠点の入り口にオラクガの部下が1人待機しており、出迎えてくれていた。



「ああ、ご苦労。さて、さっそく中に入ろう」



リサックの拠点は岩山に横穴を空けて作られた。簡単に言うと洞窟どうくつだ。リサックはそこを拠点として活動していた。だが、リサックが勇者に倒されたあと、当時の人間達はリサックの拠点を発見し、魔王の情報などがないか漁っていた。そのため洞窟内部は所々崩れてしまっており、本や小道具などが埋もれている。



「ここか」



魔王は洞窟内の一部屋まで案内された。

そこの地面には穴があいている。今回、発見した地下への入り口はここの事だろう。穴の左右には土が積もられているのは、ここを掘った為だろう。



「これだな」



魔王達はその穴に降りて行き、そこで扉を見つけた。その扉には厳重に結界が貼られている。

たいして力を持たない魔物や、その辺の人間達では突破できない強度の結界だ。

だが、幹部の中でも唯一、物理特化であるオラクガと、魔王を前にしては、その結果の破壊も容易たやすい。



「魔王様、ここは私が」


「うむ」



オラクガが一歩、魔王の前に出る。

オラクガは目の前の結界に向かってこぶしかまえた。そして拳を放つ瞬間。オラクガは魔法を使った。

彼は1つだけ、魔法が使える。それも彼だけが使える固有の魔法だ。その魔法の名前は《加速させる炎/フレイム・アクセラレーション》。その魔法の効果は加速。対象を加速させるシンプルな魔法だ。


彼はその魔法を自分のひじの部分に無詠唱で発動。拳を放つ方向とは逆の方向に、肘から炎が噴出ふんしゅつされ、彼の拳は加速する。そしてその速度はそのまま衝撃力しょうげきりょくになる。その結果、高速で突き出されたオラクガの拳は結界を意図も簡単に破壊し、扉まで吹き飛ばした。



「・・・やりすぎではないか?」


「も、申し訳ありません・・・」



オラクガは完全にやりすぎていた。だが、それは魔王という自身の使えるべき主人が戻ってきたことで、テンションが上がっていた事。

久しぶりに、魔王に自身の力を見てもらえる事が嬉しかった事。

この2つが合わさりオラクガは張り切ってしまったのだ。きっとその気持ちは彼の部下なら誰だって共感してくれるだろう。


魔王達は扉が破壊された入り口から地下室に入った。

そこは空間は広いが、大したこと物はなく、大量の本棚と、1つのつくえのみがある部屋だった。



「この中から探すのが大変だな」


「我々が探しますので、魔王様はお待ち下さい」


「・・・いや、私も少し気になっている事があるのでな、悪いが歴史関係の資料しりょうがあったら私の所まで持ってきてくれ」


「承知いたしました」



そうして現在の魔王軍による、地下室での情報集めが始まった。


オラクガの部下を増員ぞういんし、片っ端から魔人についての情報がないか調べている。

魔王は個人的に調べてたい事もあるので、歴史に関する物を部下に集めさせて、その中に自分が探している事と、魔人の事がないか探している。



そして情報捜索を開始して1時間ほどたった頃。魔王は気になる事が書かれている資料を発見した。



「これは、魔人戦争の事か・・・」



その資料に書かれていたのは、先々代の魔王と、共に戦った魔人が人間達と行った戦争について書かれていた。だが、この事を戦争の魔王は聞いた事があった。誰に聞いたかはもう覚えてはないが、その時の戦争は魔人が勇者を倒したため魔物側の勝利になったという。

この資料はそれが書いてあっただけだった。戦争で魔物側が勝ったと書いてあるだけで、魔人については書かれていない。



「ハズレか・・・」



その資料をすでに確認した資料が山積みになっている所に投げ捨て、次の資料を手に取る。



「これもか・・・」



そこには先程と同じように先々代の魔王と魔人対人間の戦争の事が書かれていた。

当時、魔物側としては長年敗北してきた人間達にようやく勝てたのだ。そしてその歴史的事実を残しておきたいと思ってしまった魔物が多くいたのだろう。似たような文章でその魔人戦争において魔物側が勝利した事を書いたものがいくつもある。


魔王はそれらの資料を流し読みしていたが、どれにも魔人の事について詳しくは書かれていなかった。



「はぁ・・・」



魔王は似たような内容の資料ばかりに目を通し、確認し終わったらため息と、共に投げ捨てる作業を繰り返していた。

そんな中、たった今。流し読みしていた資料におかしな事が書かれている事を、投げ捨てた後に気づいた。



「ん?」



投げ捨てた資料を再び手に取り、確認する。

そこにはいくつもの資料のように魔人戦争の事が書かれており、魔物側が勝利したとしっかり書かれていた。だが、その資料は他とは違った。

勝利した、という文字の後に敗北した、と書かれていたのだ。



「どういう事だ?」



勝利したのに負けた?

矛盾むじゅんしている2つの言葉について魔王が考えているとある重大な事に気付いた。



(いや、まて!魔人戦争で勝利したのなら!その時点で魔物側が勝利しているのなら!何故、その後の戦争で人間に負けている!?)



魔物側が勝利した歴史は先々代の魔王の時、魔人戦争の時の一回のみである。その前も、それ以降も魔物側が勝利した記録は何処にもない。

だが、これはおかしい。魔人戦争で人間側が一度、負けているのならなぜ、人間はこれほど多く存在している?

なぜ、その次の戦争で魔物側は人間に敗北している?


魔人戦争で人間側に勝ったのなら、人間の数は限りなく少なくなっているか、全滅しているはずだ。世界征服を目指した当時の魔王が人間を多く、いや、人間という種を残しておくだろうか?そもそも勝利した、というのに何故、次の戦争では、魔王が変わっているのだ。


そして、魔王の手元にある資料に勝利という文字後に書いてある。敗北したという文字。


何かおかしい。魔人戦争は何かがおかしい。



「オラクガ、来てくれ」


「何でございましょうか、魔王様」


「ここにらばってる資料とまだ確認していない資料、そしてお前達が確認した資料の中で、魔人戦争について少しでも書かれている物を集めろ」


「魔人戦争ですか?確かにそれなら魔人の事が書いてあるかもしれませんね」


「いや、魔人の事だけではない。その戦争は何かがおかしい。とにかく集めてくれ」


「?・・・承知しました」



魔王が考え事をしている間にオラクガ達は魔王の言われた通りに資料を集めた。


魔人戦争について書かれている資料を、ほかの資料と比べながら確認していく。


そして他とは違う事が書かれている資料を2つ見つけた。



「オラクガこれを読んでみてくれ」



魔王はその異質いしつなものを手に取り、その1つをオラクガに手渡した。



「承知しました」



オラクガは少し戸惑いながらも渡された資料を声に出して読んだ。そこにはこう書かれていた。



『我々は勝利した。人間共との長き戦いに勝利したのだ。魔人が我々に味方し、勇者共を討ち取った事で我々は勝利した。私は、我々のこの歴史的、勝利をここに書き記す。そしてこの戦争の立役者たてやくしゃである魔人様と魔王様に絶対の忠誠ちゅうせいを捧げます。





魔王様と魔人様が亡くなられた。次は我々の敗北だ』



そこには魔人戦争で勝利した事とが書かれており、その下に乱暴らんぼうな文字で魔王と魔人が死亡した事が書かれていた。



「魔王様、これは一体・・・」



オラクガが魔王に疑問を投げ掛ける。だが、魔王は続けてもう1つの資料をオラクガに手渡し、同じく読むように言った。


魔王が手渡したもう1つの資料は内容がほとんど同じだ。だが、その資料にも同じく後から追加された文章が乱暴な文字で書かれていた。



『次の戦いは魔の人間と魔の王が共に上位の意思に挑んだ。結果は我々は敗北した。』



「これは・・・!」


「わかったか?オラクガ」



問題は2つ目の文章だ。2つ目の文章に書かれている。『上位の意思』この言葉が問題だ。

もしこの2つの文章が魔人戦争の次の戦争、先代の魔王の時の戦争を表しているのなら、その相手は人間のハズだ。

資料は魔物目線で書かれている為、魔物が人間達の事を、敵対している者の事を、『上位の意思』なんて言葉を使い、表現するなんてありえない。


よってこの『上位の意思』が示しているなにかは人間ではない可能性があるのだ。



「魔王様!まさか!!」


「そうだ。魔人戦争にはおそらく続きがあった!先々代の魔王と魔人は人間達との戦争に勝利したあと・・・人間ではない別の何かに挑み、そこで敗北した可能性がある!」




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