第24話 チーム[ノーティス]

「はぁぁぁ!!」



鎧を着た少女が複数のゴブリンに切りかかる。

何体かはその攻撃で絶命ぜつめいする。



「グガッ!」



まだ生きているゴブリンが仲間のかたきつため、攻撃のすきにその鎧の少女を攻撃しようとするが―――



「《稲妻の炎/ライトニング・フレイム》!」



―――それはかなわない。


突如として襲来しゅうらいした、赤い稲妻はそのゴブリンを貫通し、その後ろにいたゴブリンまでの命を焼き切った。

突然、仲間が死んだ事に他のゴブリンは驚く。その隙を見逃さず、鎧いの少女は残りのゴブリンを切りつけた。



「グガ・・・」



短い声を上げてゴブリン達は全滅した。

鎧の少女は「ふぅ」と一息つくと、先ほどの攻撃に使用した剣とは別の短剣を取り出し、倒したゴブリンの死体から組合に提出する用の一部を切り取っていく。そうしている間に後ろにいた魔法使いの少女が彼女に近づいた。



「今日は無傷で出来ましたね」



魔法使いの少女が鎧の少女に声を掛ける。

鎧の少女は部位の切り取りが終わると、返事を返した。



「うーん・・・まだまだだけどなぁ」



彼女達はCランクハンター。カエデ・スライフォールとエリカ・フルソードのコンビでノーティスというチーム名で活動しているハンターだ。





「こちらが報酬になります」


「はい。ありがとうございます」



アドルフォン王国に戻ってきたノーティスの2人は組合に依頼の完了報告をすると、宿には戻らずに、組合のテーブルの1ヶ所に腰掛けた。



「どうしました?エリカ。あんまり浮かない顔をしてますが?」


「カエデはどう思うんだ?オレの事」


「エリカの事・・・ですか?」


「そうだよ。今回はたまたま無傷だったけど、いつもそうって訳じゃない。いつもオレがカエデの足を引っ張ってる。私のせいでもう2年もCランクのままだ」


「そ、そんな事は・・・」



カエデは少し言葉を詰まらせる。カエデとエリカに実力差があるのは事実だ。しかし、それはエリカが悪い訳ではないし、もちろんカエデが悪い訳でもない。エリカは他のハンターと比べるとかなり頑張ってる方なのだ。だが、カエデの魔法の才能がそれを見劣みおとりさせる。



「正直に言ってくれていいぞ」


「足を引っ張るなんて・・・そんな事ありません!エリカは頑張ってます!」



カエデはエリカの言うことを否定する。

確かに実力差はあるが、足を引っ張ってるなんて事はない。エリカが前衛に出てくれるからこそ、後衛のカエデは安心して魔法を打ち込めるし、エリカがカエデを信頼しているからこそ、後ろからの攻撃をカエデに任せているのだ。

彼女達はしっかりお互いの事を信頼し合っており、だからこそ連携がとれているのだ。



「でも・・・」



だが、エリカには自信がない。2年間もの間、ハンターランクは変わらずCのままだ。それにカエデはこの2年間でいくつか新しい魔法を覚えた。それに対してエリカは、いまいち成長していない。身体能力や技術は2年前と比べると確かに上がっている。しかし、実感がない。目に見えての進歩しんぽ、成長が実感できないのだ。



「では、そこまで自信がないのでしたら、誰かに教わるというのはどうでしょう?」


「教わる?」


「はい。自分より強い1人に教わり、そこでなにか技術などを盗んだり出来れば、エリカの自信になるのではないでしょうか?エリカは今まで独学どくがくで戦士をやって来ましたから、技術を得た感覚がないのではありませんか?戦士として成長を感じられないのは、そのせいかもしれません」


「な、なるほど・・・」



カエデの提案に一理あると思ったエリカだが、1つ難点がある。その案は、1人では出来ない。誰かに頼んで教わらなければならない。もちろん、お互いの知り合いに強い戦士はいない。



「教わるにも誰に教わればいいんだ?」


「それは・・・私が提案しといてあれですが、知り合いにはいませんですし・・・」


「オレの知り合いにもいないな。いたらとっくに頼んでるかもしれないしな」


「そうですね・・・あっ!引き受けてくれるかは分かりませんが良い候補こうほがいました!」


「だれだ?」


「瞬殺さんですよ!瞬殺さん!」


「えぇぇぇぇぇ!!?」


「候補としては最有力ではないですか?エリカの想いを寄せている人でもありますし」


「べ、別に好きって訳じゃないから!それに瞬殺は最近Sランクに上がったって聞いたぞ!そんなすごい人がオレみたいな下っ端したっぱ戦士に時間を取ってくれる訳ないだろ!?」


「そうでしょうか?実際に頼んでみなければ分かりませんよ?」


「ムリムリムリムリ!」


「いいじゃないですか!ほら、さっそく受付に彼の事について聞きに行きますよ!」


「ちょ、ちょっと、カエデ!」



カエデはエリカを少し強引に受付まで連れていき、そこで瞬殺についての情報を聞いた。

だが、得られた情報は今日は組合に顔を出していないという事だけだった。



「今日は来てないそうですね」


「なぁカエデ、やっぱり別の人にしないか?」


「いえ、ダメです。エリカの思い人で戦士という条件に当てはまるのは彼しかしいません!」



カエデはエリカの提案を笑顔で却下する。

彼女は何処かこの状況を楽しんでいるようだ。

友人の恋愛事情ともなれば自分にできる事をするのは当然である。8割ほどそんな事を思っている。もちろん、残りの2割は面白がっているのだが。



「今日は仕方ありませんね。宿に戻ってまた明日、聞いてみましょう!」


「なぁ、やっぱり・・・」



エリカは最後までカエデに人選の変更を提案し続けていた。





「お待たせ、カエデ」



エリカの抵抗むなしく、次の日になってしまった。

結局、エリカはカエデに瞬殺の彼に教えて貰う案をあきらめさせる事ができなかった。



「いえ、大丈夫です」



今日はエリカはいつもの鎧を着用しないため、着替えをするのに時間がかかったのだ。その為、こうしてカエデはエリカを待っていたのだ。



「ん?どうかしたか?」



エリカは、待っていたカエデに対していつもとは違う、すこし変わった雰囲気を感じたので聞いてみる。



「いえ、大したことありません。ただちょっと気持ち悪い男にナンパされただけですので」


「そ、そうか」



カエデは、その整った容姿のため、よくモテる。さらにはその綺麗に手入れをされた珍しい黒髪が彼女の魅力を増加させる。そのためナンパされる事も多々あるのだ。

しかし、カエデはそれをかなり鬱陶うっとうしく思っているため、ナンパしてきた彼らは第一印象が底辺ていへんからスタートしているのに気がついていない。


対して、エリカは容姿が悪い訳ではないが、いつも鎧を来ているという事もあり、あまりモテない。そのためカエデの気持ちはいまいちわからないのだ。エリカ本人は、今はモテなくても良いと思っているため、あまり気にしていない。

だが、今日は違う。

エリカは、一切魅力がない鎧を脱ぎ捨て、少しオシャレをしてきている。あれから、瞬殺の彼に頼む事は確定事項になってしまっており、会うならせめて精一杯オシャレをしていこうと開き直ったのだ。


とてもハンターには見えない格好をしている。

だが、今日はこれでいいのだ。今日の目的は依頼じゃないのだから。



「さて、エリカ。行きますよ!」


「おお、おお、おおお、おう!」



ガチガチに緊張しているエリカを引き連れて、2人は組合に向かった。


しかし、組合に足を踏み入れた2人は異様な雰囲気を感じとる。



「なんだこれ?」


「なにか、あったのでしょうか?」



いつも騒がしい組合が異様に静かだ。

異様な雰囲気につい、辺りを見渡す2人。



「あ、あれ!」



エリカがなにか見つけたらしく、その方向を指差し、カエデの肩を叩く。


そこには自分達が会いに来た人物、瞬殺の異名いみょうを持つ彼と、対面しているこの国で最も有名なハンター。ペェスタ・プラクターがいた。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます