第23話 チーム[アネット]



「なぁ聞いたか?」



ハンター組合のテーブル席、その1ヶ所に3名のハンターが座っている。

そこに座っているハンターはチームで活動している一組だ。彼らは3名の内2名が女性で、1人が男性というチーム構成こうせいだ。



「何をだ?」



男の質問に片方の女性が返す。男は鎧を着込んだりはしてないが防具は整えてあり、杖ではなく剣を腰にぶら下げている。一目ところ彼は戦士だと思える格好だ。


そして返事をした女性は男とは違い鎧を着込んでおり、大剣を後ろに背負っている。彼女はその見た目どおり戦士だ。その腕の細さにに反して彼女は大剣を扱う。



「あれじゃない?Sランクがもう1人増えたーって噂になってるはなしー」


「そう!その事だよ!」



もう1人の小柄な女性が話に入ってくる。

彼女は動きやすそうなラフな服と三角型の帽子を、被っている。彼女の近くには彼女と同じくらいの杖が立て掛けられている。彼女は魔法使いだ。

このチームは戦士2名、魔法使い1名というバランスが取れたチームだ。



「ああ、そのことか。それならアタシも耳にしてるよ」


「確かチームじゃなくで単独たんどくでSランクなんでしょー?まるでーどこかの誰かがもう1人増えたみたいだよねー」


「おい、やめろデイジー!あの野郎の話をすんじゃねぇ。ただでさえ、いけ好かないあの野郎がもう1人増えたなんてたまったもんじゃない」


「あはは。コリンズはペェスタのこと嫌いすぎー」



デイジーと呼ばれた女性はコリンズと呼んだ男をバカにしたように笑った。

しかし、本当にバカにしている訳ではなく一種の冗談だ。その事は皆、理解している。

これは彼女達のコミュニケーションの一環だ。



「ったりめぇだろ。あんな野郎にいいとこなんてねぇよ」



コリンズと呼ばれた男はそっぽを向いて、返事返す。彼はどうやらペェスタの事が気にくわないようだ。その気にくわないペェスタの事を思い出しているのか、コリンズの顔はどんどん怒りに満ちた表情に変わっていく。



「まぁそれはさておき、実際に単独でSランクになるのは凄いことだぞ。今までの単独でSランクなのはペェスタだけだったんだからな」


「ねー!普通に考えれば凄いよね!わたし達1人じゃSランクの任務にいったってすぐにやられちゃうよー」


「・・・まぁ、実際に凄いのは確かだ。それは認めてやろう」


「それで、その新しいSランクの人がどうかしたのー?」


「ん?お前らの聞いた話はそれだけなのか?」



コリンズが2人に質問する。コリンズは新しくSランクが増えたという話以上のこと知っているようだ。



「アタシは単独のSランクが1人増えたって事しか聞いてないぞ」


「わたしもー」


「そうか、なら俺が手に入れた、その新しいSランクの人物の情報を話してやる」



コリンズは少し自慢気な顔をし、「ふっふっふっ」と笑っている。コリンズは先程話した新しいSランクのハンターの事について色々調べたようだ。



「そいつは何と、Aランクから僅か1週間ちょっとで、Sランクになったらしい」


「ええええええー!?」


「それは本当か!?」


「ああ、最初はその辺のハンターに聞いたんだが、確認の為に、仕方なくあの可愛い受付嬢ちゃんにも話を聞いて確認した」



コリンズは現在受付に立っている1人の受付嬢を指差して言った。どうやら彼女がコリンズ一押しの受付嬢のようだ。



「凄いなそれは、アタシ達では2年半かかったはずの事を一週間でか・・・」


「あのときは大変だったよねー。ジラもケガだらけで私の魔法で回復してもすぐに行っちゃってたなー」


「そ、その話はもういいだろ。今はその新しいSランクについて話そうじゃないか」



ジラと呼ばれた大剣を装備している女性は話を過去の自分から新しいSランクの人物についてに露骨ろこつに逸らした。

デイジーは「あー話をそらしたー」と文句を言ってるが、コリンズも今はジラをいじるのではなく、新しいSランクのハンターについて話を続けた。



「それに、だ。そいつは依頼をこなすスピードが尋常じゃないらしく、1日に3つの依頼をこなしているらしい」


「ええええええー!?」


「それは本当か!?」



コリンズの言葉に先程と全く同じ驚き方をする2人。そしてコリンズも、先程の受付嬢を指差し、仕方なく確認を取ったと先程と同じ事をいっている。



「仕方なくとかいっているがお前があの受付嬢と話したかっただけだろ」


「そのとおりだ、よくわかったな」


「コリンズはおいといてー、その人ちょー凄いじゃん!もう凄いどころじゃないよー!」


「確かに。そこまでくるともはやバケモノだな」


「ああ、俺も初めて聞いた時は信じていなかった。だが、あの受付嬢が本当だって言ったんだ。事実に決まっている」


「私達もー頑張らないとねー?」



ここまでの彼らの会話を聞いて分かる通り。彼らは、この国でわずか4組しかいないSランクのハンターチームだ。4組というのはチーム3組とソロのペェスタを入れて4組だ。もっともこれからは新しくソロでSランクに上がった者が居るため、この国のSランクハンターは5組という事になる。


彼女らはそんな数少ないSランクハンター、アネットというチームだ。お互いの事を良く知っており、連携が上手い事で有名なチームだ。



「ああ、そうだな。こんな所で暇してる場合じゃないな」



そう言って2人の女性はコリンズをにらんだ。

コリンズは体をビクッと跳ねさせると2人から目を逸らした。



「いやーそれについては謝ってるだろ?俺が全面的に悪かったって。それに新しいSランクの奴が依頼をいくつも受けてるってさっき言ったろ?俺らの依頼がないのはきっとそいつのせいなんだ。そう考えるとやっぱ俺はなんも悪くないな!前言撤回ぜんげんてっかい!」


「いや、宿から出るときお前が通りすがりの女性ハンターを必死に口説いていたからだろ?普通に気持ち悪かったぞ。つまりお前のせいだ。謝るより依頼がないか確認してこい。お前のせいで今暇してるんだからな」


「珍しい綺麗きれいな黒髪で、赤いひとみをみたらビビっと来たからさぁ・・・つい。いやー運命だと思ったんだけどなぁ違ったかぁ。あと、今普通に気持ち悪かったって言ったよね?どこら辺が?」


「いいから確認してこい!新しく依頼があるかもしれないだろ!」


「へいへい、わかりやしたよ。受付嬢ちゃんに確認してきますよーだ」



ジラに怒鳴られふて腐れながらも、渋々コリンズは立ち上がった。その時、コリンズは回りの雰囲気ふんいきがおかしい、いや、異様な事に気がついた。



「なぁ・・・なんか、やけに静かじゃないか?」


「・・・確かに、いつもは常に騒がしいぐらいなのだが」


「んー、なんか嵐のまえーって感じー」



ここは、いつも数多くのハンターが集まり話しているので、それ相応そうおうに騒がしかった。

だが、今は騒音を80%ほどカットしたような感じだ。いつもは回りの事を気にせず話しているハンター達だが、まるで何かに気づかれないようにしているとでもいえばいいのか、皆小声ではなしており、聞き耳を立てている感じだ。

勿論一部は騒がしいままだが、周りの雰囲気に気づいた者から少しずつ小声で話ようになっていく。



「何がどうなってんだ?」



異常な雰囲気に3人は辺りを見渡す。

すると、デイジーが見つけたのか小声で「あれ見てー」と指を指して2人に言った。

2人はデイジーに言われた方向を見てみる。


そこには2人の男が対面していた。



「あいつは!」



それを見てコリンズが小声で驚く。そう、その片方はコリンズが毛嫌いしている男。ペェスタ・プラクターだ。コリンズはその男が嫌いだからよく知っている。金髪の髪に、白銀の鎧。そして白銀の魔剣。あれはどこからどう見てもペェスタ・プラクター本人だった。


それに対して片方の男をコリンズは全く知らなかった。鎧も防具も何もつけていない。とてもハンターとは思えない身なりだが、腰につけている細い剣がハンターだという可能性を完全には否定しない。

彼は先程まで彼女らが話題にしていた人物。

新しくSランクになった男だ。


そしてそんなSランクでもソロ活動をしている2名の男が、立ったまま対面している。


一体何があったかは解らないが、その周りにただよう雰囲気は、まるで起爆きばくしかけの爆弾ばくだんのような一触即発いっしょくそくはつの雰囲気だった。

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