第23話 対等な夫婦 1

 さて、夫を怒鳴りつけてからというもの私には怖いものはなくなりました。

 とは言ってもそれなりに気を使う生活はしていましたよ。


 夫はやっと友人の伝手で清掃会社に就職しました。50才になって生まれて初めての就職です。

 24才の頃にミシンの会社に就職して一週間で行方不明になってしまったのは数えていません。


 清掃会社といってもいろんな事業に手を出していた会社でしたから、夫が付いた仕事は管理人でした。結婚式場の管理人室で、週に2日か3日、24時間勤務という変わった勤務の仕方でした。


 家にいる夜は、子どもたちとテレビを観ながら

「明日仕事かあー、嫌だなぁ、あー、死んだ方がマシだよ。ハァァァ〜。」

 お酒を飲みながらグタグタ、グチグチ言っていました。

 子どもに聞かせて欲しくないですけど、これが父親なのですから反面教師に使うしかありません。

 子どもたちもパパは頼りにならない弱いと人だと気がつき始めたました。


 私は夫と一緒に居たくないので夜はピアノの練習をすることにしていました。


 夫は仕事の何が嫌って、他人とコミュニケーションを取るのが大嫌いなのです。 

 時間が短ければ我慢出来るのでしょうけれど24時間勤務です。管理人は管理人室に居ることも仕事ですから見廻りや電灯交換、鍵の受け渡しなど諸々の仕事がない時はテレビを観ているらしく暇なようでした。


 結婚式場の管理職の人が、見た目の温和そうな貧乏そうな暇そうな夫に懐いて管理人室に来て駄弁るのが嫌で嫌でならないみたいでした。


 しかし2年ぐらい経つと、やっと家で仕事の愚痴を言わなくなりました。

 不思議と家庭での会話がお酒を飲んでいなくても普通に出来る様になりました。

 世間話が出来る様になったのです。自分から今日はこんなことがあったなどと言うようになりました。


 社会に出ていろんな人と関わり合いを持つことは人を成長させると思いました。


 しかしながら清掃の会社は収入が低く夫が家に入れるお金は13万円程度でした。


 私は小学校の不登校の支援を辞めていましたので、私も夫の会社で清掃のパートを始めました。


 朝8時から12時まででしたので、朝は6時に起きて娘のお弁当を作り家族の朝食を準備して自分の準備をして7時20分に出掛けます。


 12時45分に買い物をして帰宅すると夫が休みだとテレビを観て寝転んでいます。

 朝起きて洗い物をして洗濯をしてあげた。と思っているようでした。家事を手伝う良い夫と思っていたのでしょうね。


 清掃の仕事は重労働ですので汗びっしょりになります。その上自転車で通っていたので帰ってすぐにシャワーを浴びるのでした。それなのに私がお昼ご飯を作るのが当たり前でした。


 そして1時間寝てから、部屋の掃除をして台所をピアノ教室にします。

 ピアノの練習を1時間か2時間して生徒が来たらレッスン。それが終われば晩ご飯の準備、お風呂の準備、子どもたちの予定や学校での話を聞いてやります。


 土日祝日は次女のクラブ活動の試合で朝5時起きでお弁当の準備がありました。


 夫は「いやー!ママは大変だなぁ!」

 と時々言っていました。本人は労いの言葉を言っているつもりのようです。

 えっ?わかってるのに手伝わないの?


 言わないとわからないんですね。

 これはうちの夫だけではないのかもしれません。

 もちろん、言わせていただきました。

 私がパートから帰って来たらお昼ご飯の準備がしてあって当たり前じゃない?


 夫は???


 次の日から夫が家にいる時は、お昼ご飯の準備が出来ていました。もちろん私が夫にするようにシャワーが済んで席に着くと出来立てのご飯が並んでいましたよ。


 当たり前です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る