5、模倣犯事件 捜査資料(別冊)

 これは模倣犯事件の経緯を簡略化して纏めた物である。煩雑且つ機密性の高い事項は除外している為、必要な際は捜査一課に閲覧の許可を取って参照されたし。

   

 10月 7日 

 〝大鷲〟本庁近郊の民家にて殺人が発生。被害者は家主の男性、及びその妻、娘、父。家主が有名な事業家である事、被害者が保有していた貴金属や宝石の類が幾つか紛失している事を鑑み、怨恨及び物取り目的の犯行と見て周辺住民への聞き込みを開始する。

 

 10月 12日 

 侵入・犯行の方法に類似点が多く見られる事例が不定期に発生。同一犯によるものとし、捜査官を増員、警戒態勢を強める。

 

 10月 14日 

 持ち去られた貴金属、及び宝石が、近隣の孤児院などに匿名で寄付されていた事が発覚。金銭に替えずに盗んだ品をそのまま寄付する点、僅かな目撃者の証言から判明した、犯人が黒装束を纏っている点は、〝雲狐〟の通り名コードを持つ盗賊、ライラ・ヴァイルブスの特徴に酷似している。

 

 だが、〝雲狐〟のかつての犯行において殺人を行った例は無く、そして何より〝雲狐〟が既に故人である事から、〝雲狐〟の犯行を模倣コピーした人間による犯行と断定。暫定的にこれを模倣犯事件ケース コピーキャットと称する。


 10月 22日 

 かねてより懸念されていた、模倣犯コピーキャットを更に模倣した犯行が各地で増加。一連の模倣犯事件に於いて、金品の強奪のみならず相当数の殺人が行われている事が一般にも広く浸透し、残虐性が知れ渡った事が要因と考えられる。

 

 〝大鷲〟ではそれらの類を〝二重模倣セカンドコピー〟と総称。模倣犯、二重模倣双方に対処するべく捜査体制の見直しを図る。

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