第72話 パナマ街
無事にパナマ街に着くとマルチ男爵はヤーナイ伯爵の所へ行くみたいで、俺はマルチ男爵が紹介してくれたコミット商会へと向かった。
「いらっしゃいませ。」
「すいません。商会長はいますか?」
「面会の予約は?」
「いえ、してません。」
「おや?どうされましたかな?」
店員と話をしていると、少し太った白髪のじーさんが話に割り込んできた。
「あっ商会長。この子が面会の希望を求めて来まして!」
チラッと俺を見ると商会長が諭すように話しかけてきた。
「ボウヤ、すまないが私も忙しい身でね。この後も商談が入っているんだよ。悪いが日をあらためてきてくれんかの?」
確か明後日には出発するって言っていたな。
「はい。解りました。明日とかは時間ありますか?」
「すまんの~。一ヶ月程は予定がびっしりなんじゃよ。」
「無理いってすいません。」
「いやいや。こちらこそ悪いね。わざわざ来てくれたのに!」
頭を下げてから店を出るとき、商会長がボソボソ(金にならなさそうなガキなんて適当においかいせ。)と店員に言っているのが聞こえてきた。
マルチ男爵には悪いが、ここの商会との取引きだけはせんと心に近い、他の商会を探すことにした。街を歩いているとバーバラ商会があり中に入り店内を見て回ると、トンファーや手裏剣なども置かれている。
「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」
「すいません。商会長はいますか?」
「現在商談の為に外出しております。夕方頃にはお戻りになると思いますが予約しときますか?」
「お願いします。夕方頃、又来ます。」
「畏まりました。私はサラナと言います。」
「クーヤンです。失礼します。」
まさか、ここにバーバラ商会が出来ているとは思わなかったな。夕方が楽しみになりつつ武器屋や道具屋などによって毎度の事のように樽を大量に確保して拠点に行くと、畑の近くから十キロ先まで荒れ地へと変わっていた。
「こ・・こ・これは!?」
「クーヤン良いところに来たのじゃ。」
唖然と見ているとフェンリルがこちらに気付き話しかけてきた。
「フェンリル何があった?」
「実はの~…」
目を泳がせながら申し訳なさそうに話しかけてくる。
「ワシの知り合いがここに来ての久し振りに軽く手合わせをしたらこの有り様じゃ。」
「え!?」
いやいやいや、軽く手合わせで10キロも荒れ地にはならねーだろ。どんな化け物だよ。
「ほらっ。あれじゃあれ、これで畑のスペースも広がって良かったのじゃ。」
「畑にしていいのか?」
「うむ、良いのじゃ。良いのじゃ。上手い酒が増えれば飲む量が増える。」
フェンリルが増やして良いと言うなら言葉に甘えさせてさっそく土魔法を使い荒れ地を耕す。
「クーヤン樣、さすがにこの広さを我々だけでは対応が」
「出来る範囲で良い。また人を増やすから。」
「ありがとうございます。」
安堵の表情を浮かべて畑へと戻った。
「こぞうがクーヤンか?」
「はい。えっとどちらさん?」
声をかけられ後ろを振り向くと爽やか青年がいる。
「フェンの旧友フェニックスだ。」
「フェニックス!!って不死鳥の?」
「そうだ。わいもここに住まして貰う。よろしくな。」
爽やかスマイルで握手を求められ、それに応じる。
「よろしく。」
「それとわいの配下でコカトリスとグリフォンも5羽づついるからそれもよろしくな。」
「はい。」
フェンリルとフェニックスと会話をしてパナマ街に戻った。
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