体操のユーキおにいさんのうちへGO

「ユーキか? 恭介だけど」


8年の時が経っているにもかかわらずひさしぶり~なノリで電話をかけてみた。


「あ、恭介? さっき海道からきいたよ。超久々だな」


学生時代の仲間は久々でも、あまり時の流れを感じない。

不思議だが同窓会のときにそう思った。

むしろ時間がたった大人になった今のほうが仲良くなれたりする。


「今、玄関にむかえにいくよ」


ユーキが電話を切って階段を降りてきた。


「おひさ~って、恭介子供いるのか?」


「いやいやまだ独身だし。こちらは親戚の子供だ。おめーのファンだって」


苦笑いの俺。


「こんちわ。ゆーきおにーさん。ほのかです」


ほのかは、ちょっと緊張気味で敬礼する。


ユーキは子供の前だとシャキッとした笑顔をみせる。

そうだ、こいつは中学の時も女子の前だとシャキッとした笑顔みせていたな。イケメンだし運動神経がいいけれど……。


「なんで体操のおにいさんなんてやってるんだ?」


「まぁ、俺さぁ、体育大学にうまいこと入ったんだけどさ。タレントを目指していたわけなんだよな。ダンスとかやってたし。就職活動時期にたまたま求人があって……今に至る」


「実にわかりやすい、おまえの人生の説明だ。それにしても一種の芸能人か……握手したいんだろ? ほのか」


ほのかは少し照れた様子で握手を求めた。


ユーキは慣れた様子で対応する。


「元ヤン体操のおにいさんなんて……ありなのか?」


「元ヤン高校教師って……ありなのか?」


そのまま返された。

俺たちの波長は昔と変わらなかった。


「俺らすこーしばかり、つっぱっていただけで、犯罪には手を出していないしな」


「そのとおり。実にシンプルな回答だな。今が全てだもんな」


俺たちは、黒歴史を舐めあうように自己解決していた。


ほのかは持ってきたメモ帳を差し出して

「サイン!」と声を出した。


目の前のユーキは俺の同級生だが、ほのかにとっては大好きな憧れのおにいさんなのだろう。

ユーキの日頃の行いはわからないわけで……まやかしだとしても……子供にとっては、それが真実なのだ。


俺たちはユーキの部屋に案内してもらった。

思ってもいなかった再会は楽しいひとときである。



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