ひと夏の想い出 恋人ごっこ

リクト君はさりげない優しさとノリが軽いので、正直こちらも気が楽だ。

重い愛はここにはない。


映画を見て、喫茶店でジュースを飲む。そんな気楽な昼下がり……。

思えば、先生とデートするとしても変装が必要だったり、 

周りの目を気にしすぎたり、あまりいいことはない。

いい意味でも悪い意味でもドキドキだったが、今日は気楽この上ない。

私がリクトにあまり恋愛感情がないからなのか?

禁断の愛ではないから? なのかもしれない。


「夏の想い出に明日は海でも行かない?」


「……うん」


少し考えてから、返事をした。


夏らしい楽しい思い出ができるのか……

先生以外との夏の思い出が……。

17歳の夏は最初で最後だ。

先生との夏の想い出は、花火大会での変な想い出はできたが――

きっと黒歴史になること間違いはない。

先生が好きすぎて―――

大好きな人に変態呼ばわりされる私……苦い思い出だ。


リクトは、そろそろのどが渇いただろうという絶妙なタイミングで

お茶を買ってくるような気が利く男の子だ。

きっと彼女が片手では数えきれないほどたくさんいたのだろう。


「リクト君は彼女たくさんいたでしょ?」


「なに? カレンちゃん、俺に興味持ってくれた?」


受け答えが慣れている。17歳にして女性をうまく掌で転がす。


「優しくて面白いから……きっとモテるでしょ?」


「もしかして、恭介に俺が似ているから気になってるとか?」


鋭い……どうして私が先生のこと好きだということがわかるのだろう?


「カレンちゃん、真っ直ぐだからわかりやすいよね。恭介も、わかりやすよな。絶対カレンちゃんのこと大好きだろ」


本人以外から大好きだろ、なんて言われるとは……

不器用な先生だ。


「ここにいる間は少しは俺につきあって、ひと夏の想い出づくり手伝ってくれよな?」


「私が手伝えることなら……」


「じゃあ、手を出して」


ぎゅっとカレンの手を握る。恋人ごっこで帰宅?


「え……。先生に見られたら……うち男女交際禁止だし……」


「じゃあ、1分だけ」


手をつないでいる時間はものすごく長くて……

かといって、手を離すのも悪いような気がして、1分だけなら……

少し経つとすっと手を離す。


「想い出づくりに協力ありがとう。高校生の恋愛って感じでいいだろ?」


「そうだね。私には普通の恋愛の経験ってないから」


「普通って? 恭介かぁ?」


「……違うけど」


「あいつはヤンキーだったけど硬派だったからな」


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