深夜にお邪魔します

「しーっ、みんなにばれないようにこっそり来ちゃった」


口元で一本指をたてたリクトが深夜、カレンの部屋に遊びに来た。

修学旅行で女子の部屋に侵入しようとする男子の心理だろうか。


「リクト君……ばれたらまずいと思うよ」


「大丈夫だって。ただ話すだけだしさ」


「顔立ち、先生に似てるよね……」


「昔から良く言われるんだけど、似てるかな?」


「きっと高校生の頃はこんな感じだったのかなって」


「もしかして、恭介のこと……?」


「違うの。別にそういうわけではないけど……」


「そうだよな。あいつにはカレンちゃんはもったいないって」


「そうかな? 先生ってああ見えてモテるんだよ」


「その話、聞かせてよ」


そんなことを話していたのだが―――


恭介の部屋は隣で会話がとぎれとぎれに聞こえてくる。


これは注意すべきなのか? 修学旅行の教師の心理だな。

深夜に年頃の男女が一緒に話していること自体問題だよな。

俺だって、カレンの部屋に滅多に行かないのに。


明日仕事だし、その間もカレンとリクトは夏休みだしな。

少しはカレンのこと、信用しないと……。



声が聞こえなくなった。きっとリクトは部屋に戻ったのだろう……。

俺は安心してそのまま寝ることにした。


朝になってカレンの部屋からリクトが出てきて、俺はその事態に気づいたんだ。


「おまえ、朝まで部屋にいたのか……?」


「いつのまにか眠っちゃってさ。大丈夫心配するようなことは何もないから」


続いてカレンが出てきた。


「先生、これは誤解なの。ただ眠っちゃっただけで……」


「あっそ……」


俺はどうでもいい返事をして、不機嫌丸出しだった。


俺が隣にいるにもかかわらず一緒に眠っただと?

俺たちだって一緒に眠ることはそうそうないだろ?

カレンのやつは事の重大さをわかってるのか?

リクトもリクトだ。


俺とカレンの心の溝が少しできた瞬間だった。





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