好きだった美女と再会

俺の職場に美女が訪ねてきた。


「恭介くんじゃない? 覚えてる?」


職員室に聞きなれない女性の声がした。

でも、聞いたことのある大好きだった声だった。

はじめて登場した俺の名前だが、恭介という。


「ひさしぶり。今、教材販売の営業の仕事をしているの」


「ほんとに久しぶりだな。元気にしていたか?」


「元気よ。営業ってノルマもあるし、大変な仕事だけど……主に学校を回ってうちの教材を売り込むのが仕事」


「すっかりキャリアウーマンだな。スーツが板についてるな」


ひさしぶりに会った片思いだった女性を見上げた。

やっぱり俺好みの人だった。変わらない。

美人でスタイルが良くて、テキパキしていて抜け目がない。

頭がよく、できる女だった。


そう、俺はこの女に惚れこんでいた。

好きだったのだが、うまくあしらわれていたというか……

嫌われてはいなかったのは断言できる。

友達以上恋人未満の関係だった。

大好きだった人に再開すると、同窓会に行くときめきに近いものを感じる。

初恋の君に会いにいく……みたいな。


彼女が一枚の名刺を差し出した。

「これ、うらに連絡先書いてあるから」

大人の香りがする憧れだった人からの名刺は、黄金に値する価値がある。


なんで離れたんだっけ? いつから連絡しなくなったのだろう?

すっかり忘れていた記憶をひも解く。

そうだ、就職するから彼女は県外に勤務地が決まって……

俺とは離れ離れになって、それで終わったのだった。

忘れようと思っていた記憶は、今蘇る。


「恭介君の連絡先も教えてよ。久しぶりに飲みに行かない?」


「あぁ……」


俺はかろうじて平静を保ったが、うれしかった。

顔に出さないようにしていたが、大好きだった人に誘われた。


「じゃあまたね」


俺の連絡先を受け取ると彼女は香水の香りを残して去っていった。

営業はそこそこに立ち去ったのだ。

やっぱり女子高生にはない大人の魅力を持った女だった。


俺はもらった名刺をしばらくみつめて、大切にしまっておいた。

彼女にまた会えることを心底楽しみにしていた。






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