第二回 鮫島くんのおっぱい(とびらの)

◇パク元

鮫島くんのおっぱい

https://ncode.syosetu.com/n3715cw/

より

「鮫島くんと学食」


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 食堂が空いていた。

 昼休みが始まって、半分が過ぎようとしていた頃だった。

 梨太と鮫島は、閑散とした食堂内にある券売機へと向かった。

 男子校のランチタイムラッシュは早い。大半の生徒がチャイムと同時に駆け込むと、我先にと胃袋へ〔燃料ひるめし〕を流し込み、グラウンドへ出てしまうのだ。

 故に食堂は、外で遊ばない〔物静かな連中〕や〔ラッシュを避けた連中〕を残し、その席の多くが無人だった。


「ほう、今日は生姜焼きか。僥倖というやつかな」


 日替わり定食の案内を一瞥した梨太は、嬉々として券売機のボタンを押した。鮫島は、その間じっと梨太の横に立っていた。順番を譲っても微動だにしない。


「早くせぬか」

「ショウガヤキとは、何であろうか?」

「そうか、そなたは知らぬのか。豚肉を、醤油と酒と砂糖と生姜のタレにつけ込んで焼いたものだ」

「美味なのかえ?」

「まぁ、旨いな。これは俺の推測だが、カレーとラーメンと唐揚げに次ぐ日本男児の好物だと言っても過言ではない」


 小さくガッツポーズをつけて力説すると、鮫島は券売機にむきなおり、またじっとボタンを見つめた。


「ぬしがそこまで力説するのじゃ。わらわも、それにしようぞ」

「では、早く押せ」

「梨太殿、どれを押せばいい?」

「そこの、日替わり定食のボタンだ。今日の日替わりは生姜焼きだと、そこに記されているはずだ」

「ヒガワリテイショクとは、どれかえ?」

「えっ?」


 梨太は思わぬ一言に、上ずった声を挙げた。

 学食のレパートリーはそれほど多くはない。十種類ほどの定番メニューと、一番上に鎮座するボタンが「日替わり定食」である。


(まさか)


 と、鮫島の顔を見上げる。

 彼は、寸分の感情の揺らぎもない声で言った。


「わらわは、字が読めぬ」


 梨太は、驚愕し思わず券売機に手を付いた。


「そなた、下手な冗談はよせよ」

「冗談では申さぬ」

「マジで」


 思わず大きな声がでるのを、手でふさぐ。鮫島は頷き、券売機に顔を寄せて指をあて、なぞるように読み始めた。


「日……わり、食。これかえ?」


 どうやら平仮名とカタカナ、日常にあふれる簡単な漢字だけがなんとか読めるらしい。なるほどこれでは「本日、生姜焼き定食、味噌汁付き也」の張り紙は読めないし、テストが白紙なのも授業に上の空なのも致しかたないだろう。読めない以上に書けないに違いない。

 券をカウンターに出しながら、やや声を潜めて、


「……鮫島殿、そなたは今までどうしていたのだ」

「買い食いと、うどん、ラーメン、やきめしを食うておったわ」

「飯だけの話ではない。普段の生活だ」

「……学生が出来ていないのは承知しておる。お役目では、犬居が読んでくれているのじゃ。それ以外では、それほど不便はないのう」


(……ぜったいあちこちでやらかしている気がする)


*********************


「はい日替わり二つお待ちぃ」


 厨房の受け渡し口で、おばちゃんパートが勢いよくトレーを置いた。ご飯が茶碗ではなく丼なのが、男子校のご愛敬というものだ。適当なテーブルへ運んで、二人は向かい合わせに腰掛けた。

 鮫島は、初めて見る料理を前に、なにやら考えごとをしていた。

 梨太の真似をして、箸をとり、先に味噌汁を飲んで、漬け物をくわえた。まったく表情が変わることはないのだが、彼が柴漬けをおっかなびっくり口に入れ、酸味に驚き、その後うま味にほだされるのが見て取れて、梨太は声を出して笑いそうになった。

 生姜焼きを一口食べた鮫島は、すぐに目を細めた。口の中のものをすべて飲み込んでから、呟いた。


「……美味じゃの」


 梨太はそろそろ確信していた。


「こやつ、い……」


<おわり>


◇◆◇感想◇◆◇

文章の改編部分は少ないような気がしました。

若干削って、僕らしい文体にしたぐらい。

あと梨太を武家風に、鮫島くんを公家の女風にしました。

すると何という事でしょう。鮫島くんが可愛く思えてきました。

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