”LINEノベル”の発表から紐解く、「小説」に期待されている事。

作者 橘 ミコト

「出版」の未来について考えさせられる

  • ★★ Very Good!!

LINEノベルの経緯や現時点の情報がビジネスを含む複数の視点からまとめられており、大変参考になった。情報を整理したうえで、その予測や著者の意見が述べられており、地に足の着いた議論になっていると感じた。

「小説」と「出版」「書籍」を区別して論じていて、私の頭の中を整理してくれたように思う。
カクヨムをはじめとするWeb小説は、たしかに書籍ではないけれど、書籍化を目指す途上(書籍のたまご)のように考えていた。しかし著者の指摘する通り、なにも「書籍」という媒体を挟まずとも収益化することはありえない話じゃない。むしろサイトや著者にとっては、出版社や取次・書店という中間マージンがなくなることで有利になる点もある。そうなった場合に出版事業がどうなるかという問いだけでも、十分に考えさせるものだった。

第17~18話あたりからは、「え、そっちの方向に行くの?」という感想を持ちながら読んだ。
学術書が「安全圏」だという前提で話が進行しているからだ。

私の認識としては、
①そもそも「活字離れ」とはカタい本が読まれなくなっていくことを指していたはず(「重厚」な本は読まれず、手に取られるのは娯楽ばかり、という嘆き。)
参照:津野海太郎『読書と日本人』岩波新書/あるいは、「出版とその時代性」(http://kynari.hatenablog.com/entry/2019/05/14/211437?_ga=2.98093725.320124724.1557391014-1723547606.1539314052#%E6%B7%B7%E8%BF%B7%E6%BF%80%E5%8B%95%E3%81%95%E3%81%BE%E3%82%88%E3%81%88%E3%82%8B%E7%8F%BE%E4%BB%A3%E4%BA%BA)のカドカワ・ノベルスのところでちらりと書いた。
②学術書は一般文芸と比べてそもそも部数の規模が少なく、近年では以前にもまして専門書や純文学は読まれなくなってきているのではないか。
③学術書に求められているのが「知識の公共化・普及」であるなら、紙媒体にこだわる必要は無いのではないか。(本の売上だけではペイできないから助成金が出ている。「公共化」が目的なら、採算が取れない紙媒体ではなく、Webでのオープンアクセス化を進めればよい。アーカイブズ的論点はあるかもしれないが)

著者の言いたいことは分かるし、肥えた(?)読み手が増えてほしいという意見には、私も賛同する。
しかし「学術書」や「教養」を最後に持ってきた点については、留保をつけたい。
そのためレビューの★は2にする。


考える良い材料を提供してくれたことは感謝したい。




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