第52話 コン様はお家に帰ります
リンのモフモフに、古代神様はもがいて逃げようとしているが、なぜか逃げれないでいた。
「リンちゃんとコン様は仲が良いね。本当の姉妹みたいだね」
「二人の髪の色が銀色だから、そう見えるだけだろ? 俺にはコン様が嫌がっているだけにしか見えないけど」
「拓海君には分からないんだよ。コン様は嫌がっていても、モフモフされてうれしいんだよ」
ルナは、俺の膝に腕を乗せて、もたれかかっている。俺はルナ頭に手を置いている。
「でも、不思議よね」
「ん? なにが不思議なんだ?」
「だって私の知る限りでは、古代神様には誰も会ったことがないんだよ。なぜここに居るのかなと思ってね」
ドキッ!
「それに、拓海君の願いを聞いて、英雄王になるとかね。不思議すぎだよ」
そう言ってルナは俺を見た。そして俺の膝の上に座ってきて、両手で俺の肩をやさしく掴んだ。
「ね、どうしてかな? 拓海君、ルナちゃんに教えなさい」
「えっと、それは……」
ルナとリン、それにソラ。人族ではない三種族とキスをしたから、古代神様が現れて願いを叶えてくれたとは言いづらい。
どうする俺! それにルナの顔が近い。かわいい! いい匂いがする!
「くっ、リン、離すのじゃ。まだ話があるのじゃ」
俺がルナにどう説明しようか悩んでいるとき、古代神様が喋り出した。
「コン。このままでも話はできるぞ。気にするな」
リンは、古代神様のことを呼び捨てにしている。呼び捨てにして大丈夫かと思ってしまう。
「仕方がないのじゃ。転移なのじゃー」
古代神様はリンの膝の上からパッと消えた。そして机の向こう側のソファーに移動した。
「リン。落ち着くのじゃ。またモフモフさせてやるから、しばらく我慢するのじゃ」
「分かった。だがモフモフは約束だぞ」
「コン様は空間転移を使えるのですね。流石です」
ルナとリンは古代神様が消えた直後に、テーブルの向こうのソファーをすぐに向いた。どうやら人物の気配が分かるみたいだ。
俺も英雄王になって、今まで分からなかった、人物の気配が分かるようになっていた。
ルナは俺の膝の上から降りて、俺の隣に座った。また二人に挟まれて、ソファーに座る形になった。
「そういえば、ルナたちは空間転移は使えない、だったな」
「空間転移を自由に使えるのは、
「拓海君も、空間転移使えるの⁉︎」
「英雄王になったから、使えるよ」
ルナたちは空間転移、いわゆるテレポートを使えない。神の人義で人間界に来る時だけ、神の人義の機能の空間転移を使える。
神の人義の空間転移は、人間界の移動では使えない。人間界と天界や魔界の往復だけの機能だ。
新世界のどこにでも自由に行ける空間転移を使えるのは、古代神様と英雄王の二人だけ。
「羨ましいなぁ。私も空間転移を使えるようになりたいな」
「そうだな。空間転移を使えるようになると、色々と便利そうだな」
ルナとリンは自分たちも空間転移を使えるように、古代神様におねだりしているように聞こえる。
「話とはそのことじゃ。お主たちは友達じゃから、特別に空間転移を使えるようにしてやるのじゃ」
「やったぁ。コン様、ありがとうございます」
「コン、ありがとう」
古代神様は腰に手を当てドヤ顔をしている。
「それとリンとルナ、お主たち専用の人義を作ろうと思っているのじゃ」
「専用の人義? 初めて聞きました」
「コン。神の人義となにが違うのか、教えてくれないか?」
ルナとリンは専用の人義のことは知らないみたいだ。
「神の人義は神のために作ったのは、知っているじゃろ?」
「はい」
「それは知っている。人を作り、神を作り、神の人義を作り、その後に、他の種族を作ったと聞いている」
神の人義は、もともと神のために作られた、量産型人義。量産型なので他の種族も使える。神の人義は残念ながら人族は使えない。
「神の人義は量産型なのじゃ。お主たちの本来の能力をほとんど使えない。専用の人義は、本来の能力を百パーセント使えるようになるのじゃ」
「それって、人間界を滅ぼせますよね?」
「空間転移と専用の人義。やろうと思えばできるのじゃ。じゃが、お主たちはそんなことはしないのは、分かっておるのじゃ」
俺もルナやリンが、人間界を滅ぼすような人物ではないと分かっている。
「それにの。空間転移を自由に使うには、専用の人義が必要不可欠なのじゃ」
「それは理解できる。だがコン。専用の人義は何処に保管される?」
「それは古代神の楽園にある、
古代神様の家は、古代神の楽園という場所にある。神世界は、人間界、天界、魔界があるが、それとは別に古代神の楽園がある。
古代神の楽園のことを知っているのは、英雄王だけ。古代神の楽園の存在は誰も知らない。
「コンの家に、私たちは遊びに行けるのか?」
「もちろんなのじゃ。
古代神様はニコッと笑った。
「リンちゃん。コン様の家に行くのは楽しみだね」
「そうだな」
「それと、天使ソラキュエルもお主たちと同じようにしようと思っているのじゃ」
天使ソラキュエルの名前が出て、ルナとリンは古代神様の方を向いた。
「コン様。ソラちゃんも良いのですか?」
「もちろんなのじゃ」
「それはうれしいが、なぜだ? コンはソラと面識があるのか?」
古代神様は俺を見て、ニヤリとした。俺は嫌な予感がした。
「面識はないのじゃ。英雄王がお主たちを愛しているのと同じように、ソラキュエルのことも愛しているからなのじゃ」
「「えっ」」
ルナとリンが同時に俺を見た。
「たっ、拓海君、ソラちゃんのこと好きなの? 私のこと愛しているの?」
ルナは早口で俺に聞いてきた。
「拓海、私の事も愛しているのか⁉︎ コンの言っていることは本当なのか!」
リンも早口になっていた。
俺は古代神様を見た。ニヤニヤしている。この状態を楽しんでいるように見える。
コン様は俺の心を読んだな! なんだあの楽しそうな顔は!
「さて、
そう言って古代神様は俺たちの目の前から消えた。
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