第33話 拓海君は妄想で暴走
俺が将来、人間界で一番偉い存在、英雄王になる。さらに新世界のトップになるとルナから話を聞いた。
信じられない。普段の俺はクラスの人気者ではない。すみっこにいるモブだ。友達はソラともう一人
、クセの強いオタクの二人しかいない。
「な、なぁ、ルナ。俺が英雄王になるのは、いつなんだ?」
「今年の八月二十九日だよ」
「俺の誕生日じゃないか!」
「八月二十九日は拓海君の誕生日だったの?」
「ああ」
ちょっと待て。あと2カ月半くらいで俺は英雄王になるのか? イキナリすぎないか。
「ルナ、英雄王になるのを拒否は出来ないのか?」
「私もパパに聞いてみたけど、英雄王になるのは拒否はできないだって。八月二十九日になったら拓海君は強制的に英雄王になるんだって」
「そんな無茶苦茶な……」
拒否ができないって……新世界は古代神様が作ったと言われているから、俺達にはどうする事も出来ないのか……
「あとね。パパが拓海君に会いたいって言ってたよ」
「ルナの父さんが俺に会いたい?」
「パパが拓海君に大事な話があるんだって。たぶん英雄王に関する事だとは思うんだけど……聞いても教えてくれないの」
「ルナちゃんのパパも人間界に来るのかい?」
父さんがルナに質問をした。
「はい。用事が終わったら、人間界に行くと言ってました」
「そうか……ルナちゃんのパパに、挨拶しないといけないな」
俺は、ルナの父親が人間界に来ると聞いて考える時間が欲しくなった。
「みんな……少し考える時間をくれないか……」
「そうよね。英雄王とか新世界のトップとか話が大きいから、たっくんも色々と考えたいよね」
「拓海、少しと言わないでよく考えたらいい」
「そうですね」
「みんな、ありがとう」
皆、優しいね。話が大きすぎて俺の事心配してくれてさっ。
だけど英雄王とか、新世界のトップとか、ぶっちゃけ今はどうでもいい。
俺にはルナの父親が、俺に会いに来る方が大問題なんだ!
俺はルナの父親に会うと非常にヤバイ!
俺はルナの父親はルナの事を溺愛していると思っている。理由は色々あるが、今は時間が惜しいので考えるのは後回しだ。
ルナが俺のお嫁さんになりたい事は、当然ルナの父親も知っているだろう。
まぁ、それは反対すれば済む事だと思うから、あまり大した事では無い。
ヤバイのは、俺がルナとキスをしたという超弩級の爆弾があるという事だ!
ルナの父親がその事を知っているか、知らないかは分からない。だけど、知られたら間違いなく殺される!
新世界から俺という存在を消される! 消すはずだ!
それはイヤだ! 俺のキスはルナが初めてだった。その一回だけしか経験が無い。もっといっぱいキスがしたい。
もちろん、その先も経験したい。経験した事はないのだ。
だって俺は思春期の男の子! そういったものに興味深々だ。
おそらく、ルナの父親が来るのはまだ先のはず。その前にキスの先を経験するか……相手は?
俺はルナをチラ見した。ルナは父さんと母さんと話をしていた。
ルナにお願いしたら出来そうな気もするけど……
ルナの体は神の人義という物なので、そういった機能があるのかは分からない。
機能があるのか無いのか分からないのに、ルナにお願いするのは……違うな……
それなら花澤葵ちゃんに告白して、お願いするか!
いや、それも無理だ! そもそも告白しても振られるに決まっている。
なぜなら俺は葵ちゃんとほぼ話をした事が無い! 日直で一緒になった時、少し話をしたくらいだ。
そうなると……残るはソラか。そうだな、ソラにお願いしよう。
アイツは俺の事を好きかもだから……いいや、絶対ソラは俺の事を好きだ!
ソラならイケる! アイツは男だが、可愛いから問題無し! 俺がお願いをすれば、きっとソラは受け入れてくれる。
俺もソラの事が好きだから……ん? あれ?
ちょっと待て! 俺がソラの事を好き⁉︎ それは親友としてだろ。なんだコレ!
俺は今まで何というエロい事を考えていたんだ!
大切な親友のソラにハレンチな事をしようと思っていたなんて!
俺は英雄王の話やルナの父親が会いに来る事で頭がパニックになっていたんだ! きっとそうだ!
ソラの事を好きと思ったのは、親友としての好きだ。恋愛の好きではない! 俺は女の子が好きなんだー!
俺は現実逃避していたんだ。この現実から逃げてはダメだ。
逃げてはダメだ。逃げてはダメだ。逃げてはダメだ!
——そうだ! 俺が英雄王になるなら、ルナの父親も簡単には手出しは出来ないはず。しかも新世界のトップだ! ——よし、決めた。
英雄王に俺はなる!
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