風に乗って海を渡れ

佐伯 海

第1話

 浜辺に立つ灯台は毎晩誇らしげに海を照らしています。夜な夜な航海する船が、闇の中で迷子にならないように。そしてその灯台の足元にはたんぽぽが可愛らしく咲き始めていました。たんぽぽはいつも、そびえ立つ灯台を見上げては、高いなあすごいなあと思っていたのです。ある日たんぽぽは灯台に話しかけました。


「いつも高いところから遠くまで見渡せてるのね。どんな景色が見えるの?」


灯台はびっくりして答えました。


「君はいつからそこにいたの?」

「ここからは、広い広ーい海が見えるよ」


たんぽぽは言いました。

「海…海を見ているの?」


「海にいる船のみんなが迷わないよう、遠く、はるか遠くをいつも照らしている。それなのに自分の足元は見えないんだ。おかしな話だよね。でも君が今、話しかけてくれたおかげで、僕は一人じゃないってことが分かった。ありがとう」


 孤高に海を守っていた灯台は、自分の仕事に誇りを持っていましたが、たった一人で何年も、何十年もここにいることが、少しつらくなっていました。

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