133話.創造神の暴挙

 メテオライトは特に言葉を発することもなく、自分の右腕があったはずの空間を見つめていた。


「さすがの創造神さまも理解ができずに固まってしまったかい?」


 クロムはあえて挑発するような言葉を選びながら言う。

しかしそんなクロムの言葉がメテオライトの心を動かすことはなかった。

なぜなら、そんな些細な挑発などが耳に入らないほどある言葉でメテオライトの頭の中は埋め尽くされていたからであった。


――何故、何故、なぜ、なぜ、ナゼ、ナゼ…… 


「無視とはひどいじゃないか、創造神さま。

 でもそろそろかまってもらうよ!!!」


 クロムは再び先ほどの白い球を生成してメテオライトの左肩を消し去った。

すると、先ほどのまで無表情で一点を見つめているのみであったメテオライトに変化が現れるのである、鬼ような怒りの表情に。


『不愉快じゃ……

 なぜこのようなことが起こっているのか理解できぬのも不愉快じゃし、我がこのような状態であることも不愉快じゃ……』


「なんだよそれ、ただの駄々っ子みたいなこと言いだしやがって。

 初対面の時に、<力なき者の言葉は我には届かぬ>なんてこと言ってたから力を示してやったら、今度は聞く耳なしかよ」


『……』


「仕方ないから少しネタ晴らししてやるよ。

 この白い球は<ルーム>を極限まで圧縮させたものだ。

 そして、このルームは既存の100の平行世界のはざまに存在するイレギュラーな存在だ」


 ルームはイレギュラーな存在なので普段はメイン次元にも平行世界にも影響を与えない存在なのである。

しかし、ルームの使い手がその能力を発動しルームを生成しているタイミングだけは話が変わるのであった。

生成中のみルームの存在は<並列世界間での事象改変の法則>に干渉する。

つまりはルームによって作られた次元の数は平行世界の数にプラスされてカウントされる。


『つまりお前は事前に100以上の次元をルームで作成しておいたと……?』


「そういうことだ、そして生成した次元を極限まで圧縮させたこの白い球が存在する時、俺は<並列世界間での事象改変の法則>に干渉してすべての事象をコントロールできる」


『お前の存在が不愉快じゃ…… そんな存在を転生させたカオスが不愉快じゃ……』


「はぁ……、確かカオスの話じゃそんな転生者たちをこの世界に転生させるゲームを始めたのはお前じゃなかったっけ?

 自業自得、因果応報…… だな」


『実に不愉快じゃ……

 すべてを無に戻すか、世界も、神も、なにもかも……』


 怒りの形相であったメテオライトの表情が徐々に無表情へと変わっていく。

怒りが収まるのではなく、感情になくしたそんな表情に。


「ホントにわがままな奴だな……

 自分の好き勝手にやって、自分の思い通りにならないことが起きたら盤ごとひっくり返してすべてをなかったことにする。

 普段偉そうなこと言ってるけど、ただのガキじゃねーか!!」


 メテオライトはそんなクロムの言葉を完全に無視して目を閉じた。

すると、メテオライトの体はうっすらと青白い光に包まれ始めた。


「何をしてる…… 

 ってまさか……

 平行世界の数が…… 減っている?」


 メテオライトの体が青白い光に包まれてから徐々にクロムが知覚できる平行世界の数が減っていた。

そして、クロムのその感覚は実際に正しかった。

不快感を極めたメテオライトはすべてを無に帰すために世界の削除を行おうとしていた。

それはメテオライト自身が創造の時に行った手順の逆の手順を行うことにより実現できることである。


「そんなことさせるか!!!!」


 メテオライトの凶行を止めるべく、クロムはふたたび白い球をメテオライトの顔面へ目掛けて放った。

そして放たれた白い球はメテオライトの頭部を消滅…… させなかった。

なぜなら、白い球は当たることなく彼の体をすり抜けてしまったのだから……

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