4.作品の質と乖離した売れ行きがもたらすヘイト

  “なろう系”が何故売れるのかについては前項で述べた通りです。要は出版業界の「失敗しにくい、既にファンを抱えている作品を出したい」という意図と、数字として明確に人気が可視化された小説家になろうのシステムがかみ合った結果、“なろう系”と呼ばれる作品多く世に出るようになり、アニメ化されるに至りました。


 しかし、一方でこれらの作品群は非常に強い批判にさらされています。それは何故か。自分はその作品の質に比べて、不釣り合いに伸長していると見られているからではないかと思っています。


 順を追って説明していきましょう。まず所謂“なろう系”というものは「小説家になろう」で好まれるテンプレートであり作品ジャンルであるという事は既に説明してきたとおりです。


 そして、そのテンプレートには人気を集める要素があることも説明してきました。そこであげなかったことを追加するのであれば、この手の作品は基本的に作品の方向性が明確です。


 作品によってはその目指すところが最後の方まで分からなかったりするものも少なくありませんが、この手の“なろう系”作品は取り敢えず「どういう主人公」が「どういう世界に転生」して「どうやって無双していくのか」という事は、かなり早い段階で述べられます。その為読者もそこまで頭を使う必要性がなく、するするっと気軽に作品世界に入っていける。それもまた“なろう系”の強みであると言えるのです。


 ですが、それは必ずしも作品の強みにはなりません。


 世の中には色々な作品を好む人がいます。バッドエンドはどんなに作品として筋が通っていても嫌だと受け付けない人もいれば、シリアス展開になった瞬間、そこまでの伏線も完全無視で批判する人もいます。逆に、余りにご都合な展開を嫌う人もいれば、余りにも単純すぎるシナリオをつまらないと感じる人もいます。


 色んな人がいる中で“なろう系“を好む人が集まるプラットフォームが小説家になろうだった。「俺はこういうのが好きだぜ!」という人たちが集い、作品をほめたたえていた。そこまでは良かったのです。実際に出版しても既にファンがいるから数字が取れますし、失敗するリスクもない。まさに夢のような世界、だったのです。


 ところがそうおいしい話ばかりではありませんでした。要は“なろう系”というのは一定の相手にのみ響くジャンル、でしかなかったのです。例えばラブコメが大好きで、ラブコメ漫画ならちょっとシナリオがアレでも絵がアレでも許容できるという事はあるはずです。ジャンルでなければ一人の作家ではどうでしょうか。特に一度ファンになったら、傍目から見ていれば微妙な作品を書いている作家でもずっとついていく人というのは一定数居るものです。


 何が言いたいのかといえば、“なろう系”の書籍化作品は“なろう系”というテンプレートを好まない人には響かない作品になっていたのではないか、という事です。


 自分もコミカライズでその手の人気作を見た時純粋にシナリオがつまらないと思ったことが何度かあります。勿論その感性が全てであるとは思いません。しかし、“なろう系”と揶揄される作品の中には「“なろう系”のファン以外には書籍化やアニメ化される水準に達してるとは思えない作品」が混じっているのではないでしょうか。


 そして、そういう判断を下す人々にもやはり「これが面白い」という作品や、感性が必ず存在します。もっと面白い作品があるのに、なんでこんなつまんないのをアニメ化するんだ。そんな感情が発露したものが“なろう系”叩き、なのではないかと思うです。


 それからもう一つ、“なろう系”に属する作品は、作品の構造が大体似通っているというのも原因の一つではないかと考えています。


 “なろう系”はお約束のようなテンプレートが決まっています。だから大体どの作品も「冴えない主人公が転生(生まれ変わり)して、無双する」というフレーズで説明できてしまう。それをいわばお約束として喜べる人には受けるのです。しかし、そのテンプレート性を「前に見た」という理由で「つまらない」と感じる人には全く受けないのです。そうなるとどうなるか。


 例えば作品が書籍化するのに必要な点数が70点だったとします。その内、作品ジャンルが大体10点は占めている(どんなジャンルも苦手で読まない人と、そのジャンルのみにアンテナの高い人がいる)ものだと考えましょう。


 そうすると“なろう系”はどうか。恐らく好んで読みに行くような人には“なろう系”というジャンルを10点として、或いはそれ以上の評価をするかもしれません。だからこそ人気になりPVも増えていく。


 ところが“なろう系”を好まない人からすればどうでしょうか。テンプレートが出来る位ですからその構造は似通っています。従ってものすごく悪い言い方をするならば「パクり」作品を見せられているようにも映るのではないでしょうか。そうなるとジャンルの評価点は10点には当然なりません。どころかマイナスになることもあるでしょう。


 そうなると両者の作品評価はどうなるでしょうか。“なろう系”を好む読者からの評価は書籍化されるに足りる70点です。ところが、その内訳はジャンルに20点近くが入っていることもある。


 そうなると、“なろう系”を好まない人の点数はどうなるか。単純な計算問題です。ジャンル分の20点が全く入らないとすれば50点、ジャンルそのものが減点材料になるとしたらもっと下がります。


 そして、この流れはアニメでも同様に起こります。“なろう系”を好まない人からしたら50点かそれ以下の作品がアニメになっている。自分の好きな作品は全く日が当たらないのに。文句の一つも言いたくなるのではないでしょうか。



【ざっくりポイントまとめ】

・”なろう系”作品は、そのテンプレートを好まない人には響かない。

・”なろう系”作品の構造は全体的によく似ている。

・そのため、”なろう系”であるだけで減点になる人が一定数いる。

・そういった層には「大して面白くもないのにデカい顔していて不快」という感想を抱かせることも有るのではないか。

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