2.数字を稼げる”なろう系”

 “なろう系”が流行した理由は様々でしょう。飯田(2016)はその理由について「異世界転生もの」や「俺TUEEE」系のキラーコンテンツが登場したことにより、それを真似する動きが出来て、一つの流行になったものであるという見方をしていて、そこに必然性は無かった(実際に、エブリスタなどではデスゲーム物が流行っていたという事例も上げている)としています。


 勿論、“なろう系”という形で「異世界転生」や「俺TUEEE」が流行ったのは一つの偶然かもしれません。しかし、その構造が「分かりやすく、乗りやすい、そしてウケる」ものだったのではないかと自分は見ています。


 まず“なろう系”というのはどういう作品でしょうか。大体において冴えない男(しかも30代とか40代という事も多い)が、何らかの形で異世界に転生し、全くの努力も無しにそこで無双する。それが基本的な“なろう系”の構造です。


 これが何故流行るのかを三つのの視点から考えていきましょう。


 まず一つめ。この手の作品は基本知識が(あまり)要らないのです。このことに関しては飯田(2016)も言及はしているのですが、要は異世界転生ということは、現代社会の法則性を全く知らなくても大丈夫なのです。


 勿論、転生先の異世界については作者が考える必要がありますが、その辺りはある程度想像に任せられます。何故かといえば「そういう異世界に転生したから」という一言で説明できてしまうからです。


 そこが現代の社会とどういうつながりになっているのか、電波は繋がるのか繋がらないのか。そういった部分に関して細かく考える必要がかなり少なくなるのです。これが作る側からしたら簡単であり、流行する理由です(もっともそのせいで知識の無さを露呈し、叩かれる的にもなったりはするのですが)。


 二つ目は、読者は基本的に主人公の視点で見て行くので、爽快である、ということがあるでしょう。


 主人公に生まれ持っての才能があったり、カリスマ性があったり、とにかく何か優れていると自分と違って感情移入しにくい。しかし、この手の作品で登場する主人公は基本的に現代社会では大したことがありません。そんな主人公がカッコよく活躍する。だから感情移入も出来るし、爽快である……書いてて悲しくなってきたのでこの辺でやめておきますが、要はそういう事です。


 ちなみに最初に上げた酷評を書いた人間の年齢は分かりませんが、この手の“なろう系”を好む人々は30代辺りにボリュームゾーンがあると飯田(2016)は述べています。この年齢に関しては恐らくロスジェネ辺りと関わってくるのではないかなぁと個人的には思っているのですが、その辺りは割愛。


 そして三つめは数字が取れるから。これは最初の方で述べた飯田の議論と被ってきます。要は“なろう系”のテンプレートに載せておいた方が数字(PV数)が稼げる、という事です。


 より単純に言うと「小説家になろうには“なろう系”の作品を読みたいという人が集まるようになった」という感じでしょうか。これは漫画冊子などに置き換えてみると分かりやすいでしょう。


 小学校に入りたての人間が「近代麻雀」を買うことはほぼ無いでしょう(そもそも近代麻雀が漫画雑誌かという話は脇に置いておきます)。高校生男子が「ちゃお」や「なかよし」を買って読むことはなかなか少ないでしょう。このように雑誌などでは明確に「ターゲットとなる層」が存在していて、その雑誌のカラーを持つ作品を読みたい人が買う、というのが一応のシステムというか動きなのです。


 それと同じことが小説家になろうにも起こっている、というのが自分の解釈です。

 

 つまり望む望まざるとは別に、小説家になろうというプラットフォームの色は“なろう系”として認識されるようになった。そうなると当然書き手も“なろう系”の作品を書く人が集まってくる。読む方もそれを期待する。そんな雪だるま式の流れが今に繋がっているのではないでしょうか。



【ざっくりポイントまとめ】

・”なろう系”で異世界転生の俺TUEEEものが流行ったのは偶然?

・しかし流行る理由はある。

・一つは作者に知識が無くても書きやすい媒体であること。

・主人公が平凡なので感情移入しやすく、無双するので爽快である。

・キラータイトルに追従した結果、”なろう系”というテンプレートが生まれた。


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