第65話 キャンプファイヤー
──2日目の日程もそろそろ終盤戦。
残すはキャンプファイヤーと肝試しのみで、どちらも林間学校の顔と言えるほどのビッグイベントで、人気が高い。だからか皆の気合いの入りようが他のイベントと比べるととてつもない。
「よぉーしっ、やるぞ!」
まぁ、俺もどちらも楽しみ過ぎて興奮状態だけど。
初めに行われるキャンプファイヤーは林の楽園から歩いて数分の所にある荒野で行われる。
火を使うのでどうしても荒地などの消化がしやすい場所でしなければならないのだ。
俺、夜依、葵は仕事があるので早めに集合した。
俺達が着いた頃には既に何層にも八角形で組まれた積み木が組み上がっていて、間近で見るとすごく大きい。俺の身長ぐらいはあるんじゃないだろうか?
「おー、すごい迫力あるね。」
「そうですね。ですが……予定だと、まだ半分ぐらいですね。」
そう夜依が教えてくれた。
「えぇ、そうなの!?」
ってことはかなりの高さになるんだ………それは大迫力ですごいや。気合いもコストを掛かってるんだな。
「炎ってなんかロマンチックですもんね!!」
「まぁ、確かにね。」
そんな、俺達はキャンプファイヤー用に積まれた積み木を見ていると……
「ほら、そこ。黙って見てないで手伝って頂戴!」
林の楽園の職員の人から少し急かし気味に言われた。
「あ、はーい。」
「わ、分かりました!!」
「了解です。」
──それから俺達はせっせとキャンプファイヤーの準備を手伝い、予定通りの時間で積み木を完成させる事が出来た。
☆☆☆
──太陽は完全に沈み、明るかった空を暗闇が完全に覆った。山なので少し肌寒くなり、虫も鳴き出す。月明かりは若干あるけど、今日は少し暗い日なのか……星などは見えない。
多少の暗さからか、若干の悪寒に襲われる俺。
やはり、弱点の克服が一大事なのかな……?
心が安心出来る葵か夜依の近くになるべく居たかったけど、男としての威厳もあったし、流石に情けなかったから。頑張って見栄を張って立つ。
まぁ、周りには他にも人がいるから多少の安心感はあった。
そろそろキャンプファイヤーのスタート時間だからであろう……生徒達は徐々に集まって来ており、そこに雫達の姿もあった。
火がついた松明を、生徒代表である林間学校実行委員長がさっき完成したばかりの積み木に移す。予め燃えやすくする為にオイルを塗っておいたので、火は勢いよく燃え広がり、大きな炎として一瞬で燃え上がった。
「「「「「「「おぉー!!!」」」」」」」
生徒達の歓声が俺の耳に届く。
明るく、暖かく……大迫力。シチュエーションも最高で、好きな人や気になる人などと一緒に見れれば、尚最高なんだろうな。
「……キレイね。」
「あ……雫。」
純粋に雫を求めていた俺。そんな時丁度よく雫は俺の元に来てくれた。
「そうだね。」
俺は即、肯定する。今の俺には“最高”という言葉しか頭に無い。それ以外の感情は今の所全部受け付けられない。
俺と雫の2人だけの甘々な世界。それに干渉してくる生徒などもおらず、人目を気にせず……いや、敢えて周りに見せ付けるかのようにイチャイチャした。
──それから、炎の精霊に感謝をする儀式的な事をしていた。まぁ、俺にはよく分からなかったけど、トーチ棒を全員で持ってキャンプファイヤーの炎の周りをぐるぐると回るという簡単なものだった。
──だが、こんなものはただの序章に過ぎない。
単純にルールがあるから執り行っただけで、後は学生達の青春のターンである。
「──さぁさぁ、皆さん。盛り上がってきましたね。では、待ちに待った“ダンスパーティー”を開催したいと思います!」
さっきまで真剣に儀式をしていたはずの実行委員長が、マイク片手に高テンションで颯爽と登場した。
「ダ、ダンスパーティー?え……なに、それ?」
ダンスパーティーと聞き、戸惑う俺。
一応、林間学校の日程はほとんど把握しておいたはずなんだけどな……?こんなのに日程のどこにも記載されていなかったはずだぞ!?
「確か空先輩が……キャンプファイヤーは時間が余るからとかの理由で、ダンスパーティーを無理やりねじ込んだらしいです。」
夜依がそう教えてくれた。
「あ……そっか。そうなんだ。」
じゃあ、俺が把握していなくてもしょうがないな。だって、空先輩だもの。
俺がため息吐きながら納得しているのなんて露知らず、実行委員長はノリノリで司会を進行する。
「──ルールは単純明快。2人1組のペアで炎の前に集合して、何でもいいからダンスを踊る。ペア交換とか細かい所は各個人の自由にします!」
実行委員長の簡単な説明が終わるのと同時に、周りにいるダンスパーティーに参加したい女子達は一斉にターゲットをロックオンした。
あ、ターゲット=俺です。
「「「「「──優馬君っっっ!!!」」」」」
「──うわぁぁぁぁぁぁっ!!!」
本来なら雫や葵、夜依や由香子などなどの皆とダンスパーティーに参加したかった。だけど……うん。絶対に無理だ。
恐らく、さっきの雫とのイチャイチャの羨ましさもブーストされているのだろう……女子達の欲求と執念は想像以上に強かった。
何とか逃げようと頑張ったけど、疲れからか肉体の本領もあまり発揮出来ず……そもそも、1VS100以上とかっていう絶対に無理な状況なので、ほんの数分で俺は捕まり、皆と一緒に交代交代でダンスパーティーをしなくちゃならない事になったとさ。
まぁいいよ。皆、美少女で可愛いんだから。
だけど、人数が異次元なんだよ。俺1人でどんだけダンスしなきゃならないのかをしっかり考えて行動して欲しい……
ダンスパーティーが終わる頃には────察して欲しい。
☆☆☆
──あれから1時間以上はダンスをしたのかなぁ。
だから、はっきり言って、疲労困憊か過ぎる……
これじゃあ肝試しは……しんどい結果になるかも。
い、いや。肝試しは俺の弱点を克服する為でもあるんだ。絶対に参加してやる!
そしてもっとイチャイチャしてやる!
よろよろになりながらも、何とか気持ちを立て直した俺は、次のイベントの肝試しまでの少しの間、体力回復に務めるのであった。
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