第182話 愛娘モフリン

モフリンが宮殿の保育所に預けられた。


たちばなが1人で外出するのでアッシュが預けに来たのだが別れ際が大変だった。

主にアッシュが。


「モフリン……1人にしてしまうなんて……今日、休ませてくれないなんて…サタンめ!あいつは悪魔だな。」

実際にサタンは悪魔族だった。


「きゅう〜。」

モフリンがアッシュの手をペロリと舐めた。


「モフリン!そうだよな、淋しいな!……くう…ダメだ…モフリンを置いて仕事に行くなんて…俺には出来ない!」

「きゅう〜。」

モフリンが、そうじゃない…と、困ったように周りを見る。


「いいから、さっさと仕事に行ってください。」

「妖狐が困っていますよ。」

モレクとイブリースが冷たく言い放った。


「な!?そんな事はないぞ!

モフリン、俺に行って欲しくないだろう?」

「……。」

俯くモフリン。


「モフリン、アッシュが真面目に仕事してくれたら嬉しいですか?」


「きゅう〜!」

アルコンの問いかけに、顔を上げて嬉しそうにお返事するモフリン。

「だそうですよ。」

「そ、そんなはずは…。」


「こんな所にいたのか!探したぞ。」

アッシュを探しに来たサタンが嫌がるアッシュを連れて行った。


「大切にされているようだが大変だな…。」

「きゅう。」

モテないトリオがモフリンに同情的だ。



モテないトリオが指摘した通り、アッシュはモフリンを溺愛していた。

アッシュの最近の口癖は『うちの一人娘が可愛い過ぎて辛い…。』だ。

甘やかし過ぎないようたちばなが気をつけているが、我が子同然のモフリンを大切にされてたちばなも喜んでおり、加減が難しい。


「きゅう!」

アッシュを仕事に送り出し、一仕事終えた気分だ。

「きゅう〜。」

しかし1人で淋しい。


『あなたモフリンというお名前なの?わたちはベル。』

『わたちはローズよ。』

『わたちはケリー。』

「きゅう〜!」

『やだ、可愛いだなんて…。』

『正直ね…。』

モテないトリオの愛ケルたちと仲良くなり、楽しい一日を過ごした。


楽し過ぎた。

「きゅう〜!」

アッシュが迎えに来た時、モフリンが保育所の柱にしがみつき、帰りたくないと駄々をこねた。

「も、モフリン…パパだよ。ほら、一緒に帰ろう?」

「きゅう〜!」

柱にしがみついたまま、首を振って拒否された。


ガクリ。

アッシュが膝を折って崩れ落ちた。


「今日一日、ケルベロスちゃんたちと楽しそうに遊んでいたので、まだ遊び足りないのかしら?」

「きゅ!」

保育士さんの言葉に肯いて反応するモフリン。


「でもケルベロスちゃん達もお家に帰る時間だから、モフリンちゃんも帰らないと…。」

「きゅっ!」

何ですと?顔のモフリン。


「私達も帰ってしまうから、もしも残ったらモフリンちゃん、独りぼっちねえ。」

「夜は真っ暗で怖いわよねえ。」


保育士達に畳み掛けられ、柱からアッシュに移動したモフリン。


翌日からモフリンは、出勤するアッシュに連れて行けと強請るようになった。

つきっきりの子育てから解放されたたちばなの機嫌が良く、愛娘に甘えられるアッシュも嬉しそうだった。


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コメディ要素強めの現在ファンタジー はじめました。


◆ モン・サン=ミッシェルの鳥居ちゃん

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890741272


10話あたりからコメディ要素多めになってきます。

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