第161話 エマのお習字

「エンマ、お習字って初めてです。」

「日本で暮らしていないと必要なさそうよね。」

「お絵かきみたいですね。」

「筆を使うこともないの?」

「ないですー。」

「エマさん!間延びした話し方はお止めなさい、子供っぽいわ!」

クラスのボス令嬢、麗華れいか様がエマに注意する。

麗華れいかさん、言葉がきつすぎるわ。」

「そうよ、もっと優しくお話しして。」

千寿ちず佳寿かずがむっとして言い返す。

「お黙りなさい!きちんと出来ないと大人になって困るのはエマさんよ、今から厳しく直していくべきだわ。」

ボス令嬢…令嬢というより家庭教師のようだ。


今日はお習字で「ゆめ」という文字を書いた。

左下には名前も書いた。


「エマさん、それは?」

ボス令嬢、麗華の目が光った。

「कは“”です。」

「その下は?」

「ऊंは“”です。」

「その下。」

「ढは“”です。」

「下!」

「रは“”です。。」

「した。」

「इंは“”です。」

「した…。」

「ईは‟”です!」

「…つまり?」

「कऊंढर《みなもと》 इंई《えま》です!」



「すごいわ、エマさん…。」

「全部サンスクリット語にしか見えないのに…。」

「ひらがなで自分の名前を書いたのね…。」


――― クラスメイトの賞賛が誇らしいと胸を張るエマだった。

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