第157話 今度は横浜に留学ですか!?

お正月に帰省した時、イギリス留学が予定の半分で終わってしまった話をした。しっかりとその話を覚えていたひかるがエマに新しい留学話を持ってきた。


しばらくの間でもエマと離ればなれになることを嫌がるデイモンが吠えた。

「父さん!お正月に帰ったばかりなのに何しに来たのですか!早くお帰りください!!」

デイモンが涙目でひかるに迫る。

「デイモン、エマちゃんの成長の機会を奪ってはいけないよ。いくら愛していてもだめだ。」

「ぶきゅう…。」

もっともらしく説得され、目に涙を溜めてね顔で黙るダモフェンリル。


「エマちゃん、1904年、つまり明治37年の横浜で現地の女学校に通うんだよ。僕は日本人で通るし、奥さんのむらさきちゃんはロシア人で通るから3人家族で不自然じゃないよね。」

「ちょ!ひかるさん!!」

「レティはダメじゃ!」

人間界に大人の女性としてレティを伴うことに不安しかないカールとダイアナ。レティはカールとダイアナの可愛い一人娘だが、奔放な愛娘に振り回された経験が警鐘を鳴らす。


——— カールとダイアナの説得により、レティは日本の湿度と温度に弱く同行できない病弱設定ということになった。実際には病弱ではなく、ダブルコートの毛皮で暑さに弱いだけだし、行くのは1月で充分に涼しいのだが…。


「ぶきゅう…。」

目に涙を溜め、ねるレティフェンリル。


「ママ…。」

エマも残念でならない。

「ママとパパが離れ離れになってしまうのは良くないと思います。…エンマ、留学しなくても…。」

「それはダメじゃ!」

「そうよ!エマちゃんは同じ年頃のお友達と一緒に学ぶことがたくさんあるのよ!」

「じいじ…ダイちゃん…でも…。」

困り顔のエマがカールとダイアナとレティを交互に見る。

「レティは大人じゃからな!」

「大人の女性ならエマちゃんが大きく成長する機会を奪うような我がままを言うはずないわ!」

カールとダイアナがレティフェンリルを見る。


「と、当然だわ!」

レティフェンリルがツンと鼻先を上げ、胸を反らし、精いっぱい強がる。


——— この日の強がりをレティはすぐに後悔することになる。

そしてカールとダイアナとかおるは、拗ねて暴れるレティフェンリルを持て余すことになる…。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る