第57話 否定しても、いちゃラブ
「ほう、そうかそうか、エマの使い魔か。」
「儂らはサマンサの使い魔でフギンとムニンだ。」
ニコニコ顔の大鴉たちがジジとマリーを歓迎する。
「デイモンとも仲良くやっていけているようで何より。」
フギンとムニンが、うむうむと頷く。
「僕も最初は不安でしたが、なかなかいい子たちでよかったです。」
ピンク色の舌をでろんと垂らしたダモフェンリルがニコニコ顔で返事をする。
「エマは最愛の主だけど、ちょっとニブちんなんだぜえ。」
「恥ずかしがり屋さんなのよね。」
ジジとマリーが困り顔だ。
「べつにエンマは恥ずかしいとかじゃないですし!番とかない種族なだけですし!」
全力で否定するがデイモンの首毛に持たれながら喋るエマの姿に説得力はない。
「エマちゃん、今日のお洋服、とっても似合っているわ。かわいい~。」
不機嫌なエマを助けようと、ドリーの使い魔でネズミのメルがエマに話題をふる。
「今日のお洋服は自信作なのですよ!」
食いついたのはダモフェンリルだった。
「ワンピースは人間界から取り寄せた小花模様の生地で仕立てて、モスグリーンのカーディガンは僕の手編みです。」
パッタパッタと尻尾を振るダモフェンリルと、可愛いと褒められ、デイモンに寄りかかりながらはにかむエマ。どうみてもいちゃラブである。
ドリーの助け舟が機能しなかったことに、エマとデイモンだけが気づいていなかった。
「さあ、おやつにしよう!」
今日は唄子さんとヒースが魔女の館を訪れて、出張おやつだ。ヒースの起こした焚火がちょうど良い塩梅だ。
「唄子ちゃん、今日のおやつは何ですか?」
「スモアだよ。」
「相撲?」
「ぷ!相撲じゃなくてスモア。some more(もう少しちょうだい)が短くなったんだよ。串にマシュマロを挿して焚火であぶる。マシュマロがトロトロしてきたらチョコレートと一緒にビスケットで挟んで出来上がり!」
「わあ!エンマもやってみる。」
小さな手で小さめのマシュマロを串に挿してあぶる。とろとろになったところで小さめのチョコレートと一緒に小さめのビスケットで挟んで・・・。
「出来ました!マリーちゃん、これどうぞ。」
「え、え?エマちゃん?だって、それエマちゃんのおやつ・・・。」
「どうぞ。」
「ありがとう、エマちゃん!・・・美味しい!」
えへへ、マリーちゃんのモグモグは可愛いですね。次はジジくんに・・・・
「では、ジジ君はこちらをどうぞ。」
出来立てスモアをジジに差し出すデイモン。
「いいのか!?サンキューな!」
ジジ君のモグモグはワイルドですね、可愛いです。
「エンマ、どうぞ。」
とろけ具合が絶妙なスモアをエマに差し出すデイモン。カラースプレーなどでデコレーションしてあり、誰がどうみても本命向けのスモアだ。
「ありがとう!ダモ!!」
嬉しそうに受け取って頬張るエマ。
どうみてもいちゃラブな二人であった。
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