第48話 勇者の学校見学
「見えてきました、あれが魔女の館です!」
勇者の広治と一緒に魔女の館へ向かうエマ。
自然を愛する女性が好みそうな館だった。
「ようこそ勇者様、私はこの館のサマンサよ。こちらは私の使い魔のフギンとムニン。大鴉なの。」
「よろしくな!」
「エマの授業を見ていくのだろう?」
どうやらサマンサという女性が館のリーダーで、その使い魔である大鴉たちがエマの教師のようだ。
ハーブや果樹の世話を終えると、フギンとムニンが教師となって座学が始まった。
ハーブの効能についての暗記や書き取り、ここで未知の単語の読み書きを学び、ハーブを調合した薬・・・漢方薬のようなものだろうか。
その調合方法を学び・・・ここでも読み書きか。
読み書きの後は?
「そうだエマ、いつも調合ノートのレシピ通りの分量の素材があるとは限らないからな。」
「紫根(シコン)は100gあるが、当帰(トウキ)は2gしかない場合、紫雲膏は最大で何g作ることができるかな?」
手書きの調合ノートを基に計算・・・ここで算数を学ぶのか。プリントでリンゴの計算をするよりも身に着くな・・・。
「正解だ!」
「さすがエマ!」
計算問題に正解したエマの頭をフギンとムニンが撫でまくる。
「ではその分量で調合だ。」
「薬の調合は充分に気を付けるんだぞ!」
フギンとムニンに促され、調合スタイルに着替えたエマが自筆の調合ノートを見ながら紫雲膏を調合する。」
紫雲膏って、確か花岡青洲が処方した軟膏だっけ。有名なやつだ。現代でも漢方薬局で使われていたっけ。傷や火傷、皮膚炎にも効くって聞いたことあるな。
「できました!」
ふう、と小さな手で額の汗をぬぐうエマ。
「100点だ!」
「よくできた!」
と大鴉たちもご満悦だ。
これも一つの理想だよなあ。
「勇者どの!」
「すっかり放ってしまって申し訳ない・・・。」
一時的に広治の存在を忘れていたフギンとムニンが謝罪する。
「とんでもないっすよ!とても素晴らしい授業でした。子供の個性にもよるけど二人の授業はエマちゃんにはあってるみたいですね。超勉強になりました!」
勇者が深々と頭を下げた。
その後、エマを置いてきぼりに勇者と二羽が意気投合し、再び会って教育について意見を交換しようと固く約束を交わした。
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