第44話 唄子とヒースの孫、キース
「キース君!」
「おじいちゃん、久しぶり~。」
エマがヒースと一緒に果樹園の世話をしていると、ヒース似の黒髪の美青年が現れた。
「嬉しいなあ、会いたかったよ‼一人かい?ちよ子ちゃんも一緒?」
「ううん、僕だけ。おじいちゃんに魔法を教えてほしくて。おばあちゃんのごはんも食べたいな。」
ふんわりと笑うとお花みたいです、この人が男の人だなんて信じられません!
「エマちゃん、この子は僕と唄子ちゃんの孫のキース君。キース君、この子は天使族のエマちゃん、植物の加護持ちなんだよ。」
ぽかんとキースを眺めているとヒースが紹介してくれた。
「は、はじめまして、エンマです。」
「初めましてエマちゃん、僕はキース。仲良くしてね。」
ヒースと唄子の間に生まれた娘のちよ子が淫魔族の朱雀と結婚して生まれたのがキースなのだが、エルフ、熊獣人、淫魔族と、多数の種族の特性が入り交じり、どの種族の特性も弱いのがキースの悩みだ。
頑張れば熊耳は出せるが尻尾は出せない。淫魔族の独特の才能も今のところ発揮できていない。顔つきがヒースに似ていることと、並みの獣人や淫魔族よりも魔法が得意なためエルフ寄りの才能を活かそうと努力しているが、なかなか苦労しているようだ。
「種族の特性ではなく、キース君の才能を活かしてみてはどうでしょう?」
夕食後の団らんでデイモンが言った。
「例えば・・・エンマは天使族ですが、植物の加護を活かして魔女の館で修行していますし、僕はフェンリル族ですが得意な手芸を活かしてマカリ・マーケットで手作り作品を販売しています。将来は一定期間、魔王の職につくことになると思いますが、その後は趣味を活かして仕事にしたいなあって。」
デイモンがタブレットでマカリのアプリを起動し、マイページを表示させる。
そこにはデイモンお手製のポーチやバッグ、手編みのカーデガンなどが出品されていた。
「すごいね!デイモン君!僕、こういうの機械で作っているんだと思っていたよ。手作りできるんだねえ……。」
素直な性格のキースがキラキラとした笑顔でデイモンに笑いかける。
・・・眩しいです・・・キース君の笑顔は眩しすぎて危険です。それに、なんでしょう、このイノセンス。
「どうしたの?デイモンくん。」
「いえ、ちょっと眩しかっただけです。」
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