第105話 仲間の勧誘
「怪我とか、大丈夫?」
審判が勝利宣言をしてくれたので、闘技台を降りてサリーのもとへと移動した。ちなみに会場は大いに盛り上がっていた。
魔法を使ったとはいえ、一回戦で活躍したサリーを圧倒した俺に対して称賛の声が多かった。会場に設置されていた魔検知の水晶が反応しなかったので、サリーを吹き飛ばした技は魔法ではないと思われているせいかも知れない。
「身体は大丈夫ですにゃ。でも、ハルト様に一撃与えるどころか、近づくこともできなかったですにゃ……」
サリーが凄く落ち込んでいる。
獣人族は耳や尻尾でその気分が凄くわかりやすい。
「まぁ、
「そ、そうなんですかにゃ」
「それより、良くアレの攻撃避け続けたね。なかなか難しいと思うんだけど……もしかして、超直感とか持ってる?」
「いえ、私が持ってるのは直感強化ってスキルですにゃ。レアスキルである常時発動型の超直感とは違って、スキルのオンオフは自分の意思でやらないといけないのですにゃ」
魔人に攻撃された時は、魔人が発する殺気で恐怖状態になり、上手くスキルの発動ができなかったのだと言う。
「そうなんだ。ちなみにさ、まだまだ先のことになるかも知れないけど、いつか俺がクラン作ったら入ってくれない?」
この世界にはクランという集団がある。
冒険者が複数集まって、共通の目的を持ち、活動する小集団だ。パーティーが複数集まってクランを自称することもある。
自分たちで勝手にクランを名乗る者たちも居れば、国などから認められた正式なクランもある。国が認定したクランになると、定期的に国から割のいい依頼が来たりするので仕事に困らなくなるらしい。
俺も家族が増えてきたので、今後、皆を養っていける方法を検討し始めた方が良いと思い、色々調べた結果、国認定クランの運営が良いのではないかという結論に至った。
それに、異世界に来たら、やっぱり自分のクランを持ちたいよね。目指せ! 世界最強クラン!!
サリーは今後もっと強くなりそうだし、配下になりたいと言ってくれた。配下とはちょっと違うけれど、クランに勧誘してみても良いだろう。
「えっ! い、いいのですかにゃ!?」
おっ、結構乗り気みたい。
「うん。クラン作るのはまだ数年先になるかも知れないけど、サリーにはいつか俺たちの仲間になってほしいなって思ってる」
「なるにゃ、なりますにゃ! これからもっと鍛錬して、戦力になれるよう頑張りますにゃ。だから、ハルト様のクランに入れてほしいですにゃ!!」
良し!
俺のクランのメンバー候補、一人目確保!
この世界では軍人や冒険者の引き抜きとかが普通に行われる。引き抜かれる軍やギルドなどとしては、魅力的な条件を提示できなかったと諦めるしかない。
ただし、あまりに理不尽なことをすると、国やギルド連合から警告を受けたり、報復されることもあるらしいので、やり過ぎには注意しなくてはいけない。
俺はこの武神武闘会で戦力になりそうな見込みがあって、かつ俺の仲間になってくれそうな獣人を数人探すつもりでいた。
「じゃ、これ持ってて」
俺はサリーに小石を渡した。
「なんですかにゃ?」
「通信の魔法陣を書き込んだ魔石だよ。俺がクランを作ったら、これを通して連絡するから。失くさずに持ってて」
「肌身離さず大事にしますにゃ!」
そう言って、サリーは小石を大切そうに胸に抱いてくれた。
その後、敗者であるサリーは観覧席へと上がっていき、俺は次の俺の相手になる者を決める対戦を見るために闘技台の側に残った。
次は猪の獣人と、象の獣人の戦いだった。
対戦が始まると直ぐに、猪の獣人が高速タックルをかました。しかしそれをものともせず、象の獣人が猪の獣人をがっしりと捕まえると、その身体を軽く場外へと放り投げた。
ものの十数秒で決着が着いてしまった。
猪の獣人が弱いわけではない。彼も一回戦で対戦相手である猿の獣人を圧倒したのだから。
象の獣人は凄いパワーだった。
しかし、より注目すべきはその防御力。
ただ防御力が高いだけじゃない。
獣人族はある一定の防御力に到達するとアンチマジックスキンと言う、魔法無効化スキルを会得するらしい。
間違いなく、象の獣人はそのスキルを持っている。炎の騎士では有効な攻撃を与えられないかも知れない。
攻撃が当たった瞬間に魔法をキャンセルされるので、魔衣での直接攻撃も効果は薄そうだ。
なので──
「次はお前の出番かな」
俺は背中にある覇国の柄を握りしめた。
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