第3章

第1話 魔王マリの貞操消失事件

 安寧のダンジョン生活が続く中、先日、配下たちにそれぞれ命令を下し、ある所へと行ってもらった。そして、あれから数日が過ぎたころ、一組が返ってきた。

 闘技場での戦闘訓練を行っていると、メッセージが入った。


『カレイドとアカギリが戻りました』


 そう告げたのは第10階層を守護するレファエナからだった。


『何かあったの?』


 彼女等二人に下したのは外界での冒険者ギルドで、その名を上げること。だから、送り出して早々に戻てくるものではなかったはずなのに、ほかのどの組よりも早く戻ってきたことに、私は疑問を持たざるを得ない。

 そして、その答えはすぐに私のもとへ届く。


『どうやら、冒険者ギルドで重要な情報を入手したとのことです』


『わかったわ。会議室カンファレンスルームまで来てもらっていい?』


『かしこまりました』


 メッセージが途切れた後、私はすぐに会議室へ転移した。

 共にエルロデアも同行した。

 会議室について私ははたと気づく。

 今まで闘技場で訓練していた私って、汗臭くないかな?

 自身の体を少し嗅いでみるも、臭いというのは自分ではなかなかどうして気づかないもので、全然わからなかったけれど、もし臭かったら恥ずかしい。

 魔王である以前に、私は一般OLだ。しかも相手が美女となると、一層に身だしなみには気を使ってしまう。

 取敢えず、先に服を着替えなくてはいけない。

 私はいったん自室に戻ろうとした時だった。

 会議室にアカギリとカレイドが姿を現した。


「マリ様。ご報告がございます」


 タイミングが最悪だ。


「それなんだけど、私に少し時間もらえるかな?」


「……かしこまりました」


 少し疑問を持っていた二人に、エルロデアがいらない説明を加えてしまった。


「マリ様は先ほどまで闘技場で戦闘訓練を行っており、その汗を流したいわけなのです」


「そういうことでしたら、わたくしがそのお手伝いをいたします。牛人は非常にきれい好きなのです。きっとマリ様のお役に立てると思います」


 私はエルロデアを睨みつける。

 それを察した彼女は、申し訳なさそうに深々と頭を下げた。


「じゃあ、頼もうかな」


 私の配下たちは隙あらば私との接触を試みようとしている。それも以前のマナの補填時の行為が原因だ。レファエナとアカギリにしてもらった例のキスをほかの配下もなぜかしたがっている。こんな私としたところで得なんて何もないのにな……。

 アカギリとエルロデアを会議室カンファレンスルームに置き、カレイドと二人で自室へと戻ることにした。


「わたくし、マリ様のお部屋に入るのは今回で二回目です」


「初めてじゃなかったっけ?」


「いえ、以前マリ様がマナ切れで倒れられたときに、配下一同が一度マリ様の寝室に訪れたことがありますので」


 そういえばそういうこともあったね。

 私の部屋の扉をカレイドが開け、中へ入ると、私は早速着ている服を脱ぎ始めるとすぐさまカレイドが手を差し伸べる。


「私がしてもよろしいですか?」


 いやいや、服くらい自分で脱がしてほしいけれど、どうにもそうは問屋が卸さないようで、カレイドは必死なまなざしで私を見る。


「じ、じゃあ頼もうかな」


「ありがとうございます」


 私はカレイドに身を任せて、彼女の艶やかな肌が私の肌に触れ、そっと服を脱がされていく。

 誰かに服を脱がされる感覚って不思議。経験が少ない私だからそう感じるのだろうか。なんだか掻痒感に似たものを感じてしまう。

 あっという間に私は下着姿にされてしまい、寝台に座らされていた。

 この城には一応お風呂も完備されているけれど、人員が不足しているため、準備に少しの時間がかかってしまう。そのため、入るときはまとめて一度に入るようにしているので、今は風呂には入れない。


「温度はこれくらいですか?」


 運動後に軽く体を拭くために、部屋には簡易的な桶が置かれ、メイド長のカテラが使用後のタオルを交換してくれている。

 そんな桶に今、カレイドは魔法によってお湯を注いだのだ。

 火の魔法と水の魔法を応用した魔法によってお湯を生成しているらしい。私はそのやり方を知らないからできないけれど、聞くところによると、配下は全員出来るらしい。魔法の応用というのは存外難しくないというけど、私にはちょっと難しいかな。

 桶に張られたお湯に指をつけると温度を確認する。


「うん。問題ないわ」


「では早速体を拭かせていただきます」


 お湯にタオルを付け、繊維に吸わせてから水分をなるだけ絞るようにカレイドはタオルを捩じる。

 彼女は牛人。その腕力は人種の数倍だという。彼女が軽く絞れば一瞬でタオルの水分はなくなる。


「マリ様、失礼します」


 カレイドの艶やかな手に触れられ、私の右腕が持ち上がる。そして、熱を帯びた濡れたタオルがそっと私の腕を這っていく。

 ほんのりと温かさを感じるその感触は非常に心地のいいもので、気を抜けばおちてしまいそうだった。

 彼女の力加減は絶妙で、私の体を思いやっていることが伝わってくる。


「こうして二人きりになれて、私は非常に幸せを感じております」


「そう?」


「はい。マリ様に触れられることこそ、至宝の喜び。マリ様の仕える者として不純な考えかとは存じますが、わたくしたち配下一同は、マリ様を主として、そして、一人の女性として、愛してやまないのです」


「そ、そんな……ひゃんっ!」


 彼女の手が腕を這い、脇の下へと伸び、そのまま前へとその手が伸び、私の誇れるほどない未熟な果実にそっとその手が覆いかぶさった。

 まるで嘗め回すような手つきで私のそれを弄びながら、彼女はそっと私の首筋に顔を近づけてくる。


「マリ様はすでにアカギリとレファエナとこういった行為を済ませたとお聞きしております。ですので、私も平等にしてもよろしいですよね?」


「さ、流石にここまではしていないわ。カレイド、くすぐったいから少し止めてもらってもいい?」


「そうしたいのはやまやまなのですが、わたくしの高ぶった感情はなかなかどうして収まるものではないので、最後までさせていただきますね」


 そんな……。

 このまま続けば、私は絶対耐えられない。


「マリ様に一つお聞きしてもよろしいですか?」


「それはいいけれど、その前にこの手をどけてくれると本当に助かるんだけれど」


「それは無理です」


 カレイド……そんなドS設定だったっけ?


「マリ様は配下の中で、だれを一番愛していますか?」


「うぇ!? だ、だれといわれても……困るな。みんな好きだし、みんな愛しているから、誰とか決められないわ」


それに、私の手から生まれた配下はみんな私の子供みたいな感覚だからな。

特別な感情を抱くこと自体……危ないね。


「あら、私を選んでくれないのですか? こんなにマリ様を愛しているというのに。……それなら、いまからマリ様には私の虜になってまらいます」


てか私の配下って、なかなか凄いところあるよな。魔王相手にする台詞ではない。


「覚悟してくださいね」


 そんな悪魔の囁きの様に耳元で言われると、敏感に反応してしまう。

 そして、カレイドの手は次第に上から下へと流れていき、私の太ももを弄りながら、私の大事な部分めがけて煽りながら迫っていく。


「ちょ、ちょっとカレイド! さすがにそこはダメ! これ以上は……んっ!?」


 後ろから抱きしめる形で覆いかぶさる彼女に言い聞かせるために振り向いた私は、まるでそれを予想して待ち受けていたような彼女に、一瞬で唇を奪われてしまった。


「知っていますか? 牛人は、狼人の次に性欲が強い種族なんですよ。一度火が付いたら、私が満足するまで止まりません」


 彼女の豊満な果実が私の背中に押し当てられながら、後ろから無理やりされる濃厚なキスに、私の鼓動は尋常じゃないほどに加速する。

 そして彼女の手が私の体を嘗め回し、とうとう例の場所に届くというところで、私の意識は飛んだ。


「あ、あれ? マリ様? 大丈夫ですか? ……マリ様?」


 そんなカレイドの心配する声が微かに聞こえる中、私の視界は闇と化した。






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