第4話 ギルド側の対応

 二人の姿が消えた後、受付嬢は急いで中へと駆け入り、ギルドを管理するギルドマスターのところへと向かった。

 事務職員が机を並べる中を進み、奥へつながる扉をノックする。

 奥から声がして、一言返し扉を開ける。


「何ようかな?」


「ギルドマスター」


「ビレッジ君、私のことはホーキンスと呼んでくれ。そんな肩書で呼ばれても嬉しくないし、君だってめんどくさいだろう」


 机に積まれた書類の束に手を付けながら、いたって真剣な声音で返す。


「申し訳ございません。ホーキンスさん」


「それで、何ようかな?」


「はい。本日、冒険者登録を行った二人組の件で報告があります」


「例の新米魔王の配下というやつらか。それがどうした? 何か問題でも起こしたのか?」


「いえ、依頼自体はすでに完了いたしました。つつがなく、迅速な依頼完了は素晴らしいものです。ですがその道中、聖王騎士団と遭遇し戦闘を行い、3人を相手に勝利したそうです。しかも、相手は上級の獅子王ライオニエだそうです」


「ほう。それはそれは、なかなかに腕が立つものということか……。で? ビレッジ君が危惧していることはいったいなんだ?」


「はい。あの二人の戦闘能力は比類ないものです。また、それを配下にしているという魔王もまた、常軌を逸した存在かと思われます。騎士団員が敗れた今、その団長が動く可能性が非常に高いでしょう。そして、二人と接触する日もそう遠くないかと思います」


「たしかにその可能性はあるな。仲間を重んじる騎士団だ、敵討ちに来ても可笑しくない」


「ギルドとしては、そんな計り知れない存在に反駁するようなことはなるだけ避けていきたいのです。このことに関して、ギルドはお二人の情報を騎士団には決して渡さないようにして戴けますか? 騎士団にお二人を売ったとなれば、このギルドだけではなく、街が消される事態になるかもしれません」


 書類から目を上げたホーキンスの鋭い眼光はビレッジに恐怖心を与えた。


「どちらかの肩を持つのは、両立の存在であるギルドとしては認められないな」


「で、ですが……」


 恐る恐るも反論を向ける。


「だが、私も愚者ではない。多くの者の命がかかっている以上、最善の選択が必要だ」


「ギルドマスター!」


「ホーキンスだ。ビレッジ君。さっそくギルド社員に情報の共有を任せる。せっかく行動するのだ、抜けがあってはいけないぞ」


「かしこまりました。それと、お二人はどうやら最速で最高ランクに上がりたいそうです。これも何かホーキンスさんのほうでどうにかなりませんか?」


「うむ。それは少し難しいかもしれんな。ランクアップに関してはギルド協会がかかわる問題だ。私の一存でどうこうできる問題ではない。だが、一応何かないかは検討しておこう」


「ありがとうございます! ギルドマスター!」


「ホーキンスだ」


「すみません。ホーキンスさん」


「だが、騎士団長が動くとなると、結構厄介になりそうだな。やられたのは獅子王ライオニエだということは、獣人ベスティエの団の可能性が高いな。となると、団長はグロッソか……。よりにもよって話が通じない奴とは、運が悪い」


「ホーキンスさんは聖王騎士団について詳しいんですか?」


「詳しいほどではないが、常識以上にはな。……おっと無駄話が過ぎた。話は以上だな? なら君も職務に戻りなさい」


「かしこまりました。では失礼いします。ギルドマスター」


「ホーキンスだ」

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