第14話 敵襲!!!?
……え?
ええええええええええ!!!
大問題じゃない!
侵入者って、つまり私の敵だよね?
なんで彼女たちはそれを問題ないと思ってしまったんだろう。
「え、えっと……。取り敢えず、詳しく聞きたいから玉座の間で聞いてもいいかな?」
「かしこまりました」
私は動揺をできるだけ抑えて、玉座のままで向かった。配下が私の後ろに続く。その様子は正に圧巻。夫々が異なる種族で体格もバラバラだから、異様な光景とも見て取れる。けれど、それを払拭するほどに、彼女らは美女ぞろい。別の意味で圧巻でもあった。
玉座の間に着き、私は玉座に腰を下ろすと、配下たちは膝をついて面を伏せた。
「じゃあ、詳しく訊こうかな」
「はっ! 2日ほど前にここへ侵入したのは、男の
「え? 侵入者って12階層まで来たの? てか、レファエナは大丈夫? 怪我とかしてない?」
12階層はレファエナが守護する階層であるため、侵入者がそこまで来たと云う事は必ず彼女が対峙したはず。つまり戦闘があったと思うけれど、私がレファエナを見る限りけがを負っているようには見えなかった。美しいシスター服も汚れ一つついていない。
もしかして戦っていない?
「マリ様に心配していただき感無量であります。マリ様の配下に恥じない働きをすべく侵入者は私が排除しておきました」
流石。
「一体どんな連中だったの?」
「オバロン・リベル・エラ・ジルファニスの配下と云っておりました」
何処かの貴族の兵士か何かかな。この世界の知識に無知な私では、その人物の名前を聴いてもピンとこない。
「補足説明させていただきますと、オバロン・リベル・エラ・ジルファニスとは、この世界に現存する8人の魔王の1人です」
エルロデアが補足する。
つまり、同族の仲間を私たちは倒してしまったと云う事になるの?
それって結構不味い感じじゃない。
「一つ訊いておきたいんだけれど、その侵入者はどうしたの?」
「生きてダンジョンの外に返しました」
よかった。まだ殺していないだけましだ。此処で相手を殺してでもしたら、同族同志で戦争が起きてしまうよ。そうなると、私の身に危険が襲い掛かるじゃないか。それは何としても避けたい。
「これからは同族に対しての戦闘は極力避けるようにしてほしい。同族同志で争っている間に勇者に横槍を刺されたら堪ったものじゃないし。なるだけ無駄な戦闘は避けるように心がけてね。ただまあ、私たちの生活を脅かすようなら徹底的に潰してしまってもいいかも」
同族だからって私の保身を脅かす存在は片っ端から潰していきたい気持ちはある。じゃないと穏やかな生活ができない。
私はこの世界に転生してくれた女神の願いを守りたいのだ。魔王だからって世界の蹂躙なんて興味もないし、世界を全て自分のものにしたいわけでもないからな。ただ、のんびりとこのダンジョン内で生きていければそれだけで十分なんだよね。
「ですがマリ様。例の二人、きっとまた此処へ来ると思います。穏やかな雰囲気ではない様子でしたので」
「何か言っていたの?」
「『オバロン様が黙っていないぞ』と云っておりました」
なんだろう。非常に小物染みた台詞だな。
「ねえ、エルロデア。そのオバロンって魔王は強いの?」
「残念ながら、私はそこまで把握しておりません。あくまで最低限の知識と、ダンジョンに関しての全ての知識しかありませんので、外の世界のことをきかれましても、答えられる範囲は心許ないものです」
「そうなの? じゃあ、そう云った情報はコーネリアたちに任せるしかないか」
その侵入者の二人が残した言葉からして、次は魔王自らこのダンジョンに来そうだ。でも、どう対応すればいいんだろう。同じ魔王だし、仲良くしたいから刺激しないように下から下からという姿勢で迎えるのがいいのかな?
「マリ様!」
面を伏せたまま、小さな鬼が言葉を発した。
「もしよろしければ、うちがその魔王の調査に行ってきましょうか?」
「本当に?」
2本の立派な角を生やした小柄の鬼、
「任せてください! 必ず成果をお持ちします!」
「なら、レイに魔王オバロンの調査をお願い……いえ、任命します」
再び面を伏せた妖鬼は忠義を示す。
「御心のままに!」
そう云って彼女は玉座の間から姿を消した。
魔王オバロン・リベル・エラ・ジルファニスの調査に取り掛かった、物資調達係の妖鬼、レイ・アモン・ロードフェル。小柄で幼いその体躯には似つかわしくない凶悪的な戦闘力、もしもの事があっても、彼女ならうまく立ち回れるだろう。それに、いざとなったら、リンクと一緒に設定した新しい設定で、何とかなる。
だから、私は彼女に一抹の心配も抱いてはいない。
「マリ様。一つ、提案がございます」
エルロデアが進言した。
「配下たちとの連絡手段の事です」
「連絡手段? 何かあるの?」
「魔法によって遠くの相手と話すことができます」
「そんな便利な魔法があるの?」
「【メッセージ】という魔法です。これは魔法と云っても、魔法名を唱えることはしないもので、脳内で話したい相手を決めて発動することで、言葉を発さずに思考だけで会話ができるようになる魔法です。これは相手がこの魔法を覚えていなくても効果を発揮します。今後、配下がマリ様の代わりにダンジョン外へ赴くことが多くなると思いますので、是非とも使っていただきたく思います」
魔法は使えるものからの伝承で覚えることができる。そのため、私はエルロデアからその魔法を教わり、刹那に習得した。取り敢えず、今私の眼前にいる配下たち全員にも覚えてもらった。
「他に何かあったら報告してほしいけれど」
「では、マリ様。
そう告げるのは
宣伝係の彼女がいったい何を報告するのか。
彼女が面を上げると、驚異の谷間が私の視界を鷲掴む。
で、でかい……。
「ダンジョンを出て南西に進んだところに、ウィルティナという都市が存在しました。私はそちらで、このダンジョンの事を噺が盛んな酒場や、ギルドと呼ばれる冒険者が集う集会場で、話を広めてきたのですが、そこで耳にしたことが報告に値するものでした」
その表情は真剣だった。
「近々、魔王を倒された勇者が次の魔王を討つと云う噺を耳にしました。まだ、
今更ながらに思うのだけれど、どうして、魔王たちは個人個人で戦っているのだろう?
強い魔王が束になって戦えば別に勝てると思うんだけれど、どうしてそうしないのか。何か個人で戦わざるを得ない状況を勇者が造っているのか? それとも、単にプライドが高いのか? 独りで勇者如き倒して見せるみたいなことを考えているのだろうか。
……確実に後者だろうな。
全く勘弁してほしい。そんな事をしていては勝てるものも勝てなくなってしまう。
勇者ね……。魔王を倒すなんて相当に強いんだろうから、できれば関わりたくないけれど、いずれは戦う事になるんだろうな。他の魔王とも共闘を組めればいいんだけれど、それはなかなか難しそうだし。なるだけ、勇者がこのダンジョンに近づかないようにしないといけない。何かダンジョンの周りをカモフラージュした方がいいかもね。
もしこのダンジョンが見つかっても、その時には万全の態勢ができているようにしたい。
「少し危険かもしれないけれど、今後、勇者の動向を調べる必要がある。それに関してはまた今度決めていくつもりだから、ひと先ずは他の魔王とコネクトをとろうと思う。みんな協力してくれる?」
一同は伏せたまま忠義を示す。
「と、その前に……みんなお腹空かない? 私いま、結構空腹なんだけど、大丈夫?」
「問題はありません」
一同を代表して応えるのはハルメナだった。
「まあ、私が空いたから、今からご飯にしよう! せっかく料理係も用意して、ハルメナやアルトリアスが食材を採ってきたんだし勿体ない」
そう云えば、二人の勝負はどうなったんだろう。
後で聞いてみよう。
そうと決まれば、早速食堂へ行こう。
私は玉座から腰を上げると、配下を連れて、食堂へと向かった。
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