文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
アルフレート=カーン〜華麗なる行商人な七賢者〜 その2
アルフレート=カーン〜華麗なる行商人な七賢者〜 その2
異世界生活百七十日目 場所ラグナ・ヴァルタ島、ヴァパリア黎明結社本部
――息を吸う。
普通の呼吸ではない。途方もなく長いと錯覚させるような摩訶不思議な深呼吸。
――息を吐く。
吸った時と同じくらいの長さで、肺にある全ての空気を押し出すのをイメージして。
不自然なロングブレスの中で、自らの魔力を洗練し、練り上げ、全く別種の力へと変貌させる。
「ユェンと同じ仙術って奴か? でも、完全に魔力を変化させている訳ではない……普通に考えたら完璧に変化させることができない中途半端って取るんだろうけど、あえてそうやって魔力を残しているんだろう? やっぱり考える方向が少し違うんだな。その頭の回転が本当に恐ろしいぜ」
流石はアルフレート。レオーネと初めて戦った時には見抜かれなかった【魔力纏】と【纏気】のコンボをきっちり見抜いてきたか。
……ってか、このモブキャラ程度で思いつくんだから誰だって思いつくよね? あまりにも買い被られ過ぎている気がするんだが。
「それじゃあ、これも発動しておくか。【纏呪】――魔力強化・【剛力通】、【裏剛力通】、【神足通】、【裏神足通】、同時発動」
【裏神足通】で残像を残しながら加速――【剛力通】と【裏剛力通】で強化したジャブを放つ。
「大富豪の鉄拳-Millionaire Fist-」
強化したつもりだったけど、普通にカウンターのパンチで止められたな……ってか、どんだけそのパンチに課金したんだよ!
「大富豪の連続拳-Millionaire Rush-」
そして放たれるラッシュ攻撃……危ない、表と裏の【金剛通】を使っていなかったら守り切れなかった。
表と裏の【活性通】で傷を癒しつつ、表と裏の【神足通】を発動してアルフレートに肉薄。
「大富豪の華麗なる転移-Millionaire's Amazing Warp-」
「大富豪の螺旋拳-Millionaire Corkscrew-」
ちっ、肉薄したと思ったら転移されたか……そして、背後から放たれるコークスクリュー・ブロー……応えたぜ。
表と裏の【活性通】にプラーナと呪力を全て回して傷を癒し、魔力だけで身体能力を強化。
瞬時に【空間之神】と【距離操作】を統合して――。
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【空間ト距離之神】LEVEL:MAX(限界突破)
→空間と距離を支配する神に相応しい究極能力だよ! 今まで一度でも足を踏み入れたことのある空間を支配空間として定義するよ! 支配空間内では自身を含む敵味方や物質を瞬間転移させることができるよ! 支配空間の一部を切り取って別の支配空間入れ替えることができるよ! 空間を歪曲させて亜空間を作り出すことができるよ! 支配空間への干渉は今いる一つの世界内でしかできないよ! 空間の距離に干渉して相手との距離をおかしくするよ! 【距離操作】と【空間之神】の上位互換だよ!
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アルフレートと俺の位置と距離に干渉し、死角からお返しとばかりに【浸透気呪術】でありったけのプラーナと呪力を叩き込んだ。
「アルフレート様、風向き悪いですけど頑張ってくださいにゃー。……ところで、勝利条件を決めずに始めちゃいましたけど、大丈夫ですか?」
「「あっ」」
紅茶を優雅に飲みながら観戦していたシャリスに突っ込まれ、肝心なことを決めないまま戦闘を始めてしまったことに気づいた俺とアルフレート。命を奪うっていう分かりやすい決着じゃないし、それを決めておかないといつまで戦い続ければいいのか、勝者はどっちか分からないよな。
「俺の方は残高ゼロで敗北でいいと思うけど、草子……お前の敗北条件って何になるんだ?」
「
…………相撲かよ!? ってか、俺だけルール厳しくない!! アルフレートの総資産つて正攻法で貯めた奴の中じゃ一位だった筈だけど!? 全く、この世界はモブに厳しい世界だぜ。……乙女ゲー世界じゃないけど。
「……なあ、シャリスさん。もっと甘くしてくれないか? 草子が膝ついて負ける姿とか想像できないんだけど。しかも、地味にお金の減りが早くなっているし」
「…………これ以上簡単にしてもらうとか無理ですにゃ。もし、KOにしろとか草子さんが言い出したら終わりですにゃ」
いや、別に膝付きルールでいいけどさ。……これ、
「大富豪の完全治癒-Complete healing of millionaire-」
さっき受けた傷を全快させるアルフレート……もう、表と裏の【活性通】でチマチマ回復せずに魔法で速攻回復してもいいよな!?
(〝嗚呼、惨き戦場よ! 戦に身を投じ、生命を散らした殉教者達よ! 戦火に焼かれ焦土とかした大地よ! せめて、せめてこの私が祈りましょう! いつまでも、いつまでも、祈り続けましょう〟――〝
「てめえ、流石にそれは無しだろ!? 【回復魔法】で全回復って――俺、一回の全回復のために金貨十枚も消費しているんだよ!!」
……いや、十万円ってお前からしたら端金も端金だろ……寧ろ、十万で全快できるんならいいじゃねえか。
「いや、俺って一応
「ああ、カタリナだっけ? 最近、ミンティス教国で発生してミント正教会を超える信者を獲得したっていう天上大聖女教の御神体の
……なんで
「ん? ただ、戦闘パターンを変更するだけだよ。今まで通り普通に殴ってきて問題ないから」
【色慾ト強慾之淫魔神】を発動しつつ、早着替えで
「カタリナ=ラファエル、全力で推して参りますわ!」
◆
「いや、殴っちゃダメだろ!?」
「いくらなんでも反則ですにゃ。女に手をあげるとか、
「……いや、中身は別に俺だからいいと思うんだが……じゃなかった、問題ないと思います。これなら、【回復魔法】を使うのも正当化できますし、物理で攻撃するので大丈夫ですよね?」
「
「あら? ご心配くださるのですか? 問題ないと思いますわ。どうせ、私の知らないところで勝手に発生したファンクラブみたいなものですし。きっとカタリナが杖を振ってバーサクしていても問題なく受け入れてくれると思いますわ」
なんとなく天上大聖女教の信徒達が発狂しているような声が聞こえたが、勿論華麗にスルー。目指せ、華麗なる逆転! コーヒーの準備はできたか!? ……おい、誰か突っ込んでくれよ。
「いきます! えぃ☆」
「――可愛らしくやっているけど攻撃が即死級なんですけど!!」
……まあ、確かに可愛らしい声で一撃で身体を粉砕して返り血で身体を真っ赤に染める
「ちっ、これじゃあ治療費がいくらあっても足りないな!! 大富豪の完全治癒-Complete healing of millionaire-」
「大富豪の華麗なる転移-Millionaire's Amazing Warp-」
「大富豪の螺旋拳-Millionaire Corkscrew-」
アルフレートのコークスクリュー・ブローを
「
「もう聖女関係ない気がするんだけど!? というか、はしたないから! その格好で回し蹴りとかスカートの中が見えちゃうから!?」
「あら? 折角のラッキースケベですよ? 相手も公認なんですし、じっくり見ればいいんじゃないですか? ちなみに見惚れていると一発痛いの諸に受けることになりますので、お気をつけください」
「絶世の美女が痴女っぽい発言するなよ! 清楚なイメージが崩れて男のロマンが水泡に帰そうなんだけど!? というか、自分の身体大事にしろよ! 今は女なんだから!!」
「
「畏まりましたわ!!」
「おーい、シャリスさん! アンタどっちの味方なんだよ!? おい、俺、今ピンチ。
「
「まあ、確かに言ったけどさ! うん、なんか当初想像していたものと違うものになっているとか、オーディエンスが明らかに俺の敵になっているというか。流石に参戦して助けてとは言わないよ。一度言った手前撤回できないし。せめて、その外野からの煽りをやめてもらいたいな!! おじちゃん、心も身体もズタズタなんですけど」
「安全なところで高みの見物しながら美味しい紅茶を呷るのは最高ですにゃ。言いたいことを言える環境を手放すのは嫌なので代わりに煽りを強化しますにゃ。ちなみに、ウチに百合っ気はないですけど、カタリナさんとなら結婚してイチャイチャするのもいいかと思いましたにゃ。ウチが攻めでカタリナさんが受けですにゃ。きゃっきゃうふふですにゃ!!」
「もう明らかにシャリスさん敵と化しているよね!? そして、地味にシャリスさんの性癖が暴露されてびっくりなんですけど! カタリナさんなら同性でも恋人にしたいって気持ちは分からなくないでもないけど、シャリスさんが攻めなの!? というか、シャリスさんに攻められちゃうの、俺!?」
「……言わせないでください。
「どっちもいけるタイプだった!? いや、シャリスさんがドMでドSって、ちょっとおじさん受け止められないかも。……というか、こっちも我慢していたんだよ! シャリスさんが可愛過ぎるから大変で……でも、いいんだよな。もう我慢しなくていいんだよな」
「はい、私は
うん、何見せられているんだろう。きっと全ての戦いが終わったらベッドの上でめちゃくちゃするんだろうな。まあ、そこは想像にお任せするとして……。
「とりあえず、カタリナさんの貞操の危機だってことは分かりました」
カタリナモードから草子に戻る。……あの
「ふう、これで殴りやすくなったぜ」
「
「それ言い出したら誰とも戦えないじゃないか。それに、直接殴り合わない魔法とかの方が殺傷力高い気がするんですけど!?」
そもそも既存の法律を当てはめようとすると魔法とかスキルとかの概念があるからどうしても無理が出てくるよな。その辺、異世界の法律は緩々だし、死んだら死んだ方が悪いって風潮もあるから、殺人罪ってのもないんだよね。盗みとか奴隷商とかはかなり重い罪となります。
「大富豪の華麗なる分身-A splendid other self of millionaires-」
「大富豪の華麗なる転移-Millionaire's Amazing Warp-」
「大富豪の連撃-Millionaire continuous attack-」
アルフレートの分身と、分身の転移による包囲網の構成、そこから放たれる課金強化された右ストレート、左フック、アッパー、ボディーブロー、ワンツー・パンチ、ミドルキック、ハイキック、横肘打ち、膝蹴り、掌底打ち……金にモノを言わせた大火力な物理攻撃が殺到する……もしかしてボクシングじゃなくてムエタイだったのか? いや、掌底打ちあるから違うのか??
流石に十人のアルフレートを同時に相手するとか自殺行為なので【空間ト距離之神】で離脱し、アルフレートの分身の背後に瞬間移動――不意打ちでジャーマン・スープレックスを決めて一体撃破する。
すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――
すぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ――
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――
「――ィィィィィィィィィィヤァァァァァァァアッ」
【五行拳】の一つに分類される【鑚拳】を【剛力通】と【裏剛力通】で強化して放ち、アルフレートの分身一体を撃破……うん、やっぱり経費節減のために分身一体辺りの耐久力はかなり落としているな。
槍で突き刺すように拳を打ち出す【崩拳】、拳にひねりを加えながら、内から外へ半月上の軌道で打ち払う【横拳】、鉈を振り下ろすように拳を打ち込む【劈拳】を叩き込んで合計五体のアルフレートを撃破。
「大富豪の螺旋拳-Millionaire Corkscrew-」
アルフレートの分身の一体が放つコークスクリュー・ブローを利用して片方の腕を上段受けのように上に引きながら、もう片側の拳で突く【炮拳】を叩き込む。残るアルフレートは本物を入れて四体。
「大富豪の華麗なる転移-Millionaire's Amazing Warp-」
「「「大富豪の連続拳-Millionaire Rush-」」」
なるほど、分身三体で連続攻撃を仕掛けて、本体は離脱……そういう作戦か。
アルフレート三体の攻撃を【化勁】で躱し、女教師系魔法少女こと畑山魔梨子にも通用した渾身の回し蹴りを叩き込む。
三体撃破……さて、分身は消えたぞ、アルフレート。
「もう残高が残り僅かになっちまった。ずっと戦っていたいけど、これで終わりにするぜ!! 大富豪の光すら超えた一撃-A blow beyond the light of millionaire-」
アルフレートの強化の光が眩しいほど高まり、次の瞬間には拳が俺の腹を抉っていた……ゲフッ。グハッ……こりゃ、流石に効いたぜ。
今ので壁まで吹き飛ばされたが、膝はつかなかった。一方、アルフレートの方は今ので残高が消滅して無一文に。……よし、俺の勝ちだ!
◆
「残高尽きちまった……こりゃ、俺の負けだな。……まあ、約束は約束だ。俺はヴァパリア黎明結社と手を切る。…………すまないな、インディーズ、スペティア……二人の忘れ形見、守れなかったよ」
裏切り者でゼドゥーを焚きつけてインディーズとスペティアを殺させたグリフィス。
「力を持つ者が世界を支配するべきだ」という考えで実の両親を殺したゼドゥー。
裏切り者と仲間殺ししか残っていない世界で、アルフレートはそれでも義を貫き、仲間殺しの張本人であるゼドゥーをインディーズの遺言に従って守り続けてきた。
本当は誰よりもゼドゥーを殺したかったのはアルフレートやダニッシュだったのに……。
俺はもういいと思うんだよね。過去に縛られるのは……もうアルフレートには大切な人ができたんだから、前を向いて進むべきだと思う。勿論、忘れろとは言わない……その辛い記憶もアルフレートの一部なんだから。
「ゼドゥーのことは任せろ。グリフィスの思い通りには絶対にさせない。このエルダーワンド――リュート=オルゲルトの
「ああ、任せたぜ。……さて、シャリス。俺、無一文になっちまった。一緒に最初からやり直すの手伝ってくれないか?」
「勿論ですにゃ!
アルフレートが〝
「俺はこの戦いを全て終えたらエリシェラ学園にも行く。だから、エリシェラ学園で待っててくれないか?」
「そうか。じゃあ、待たせてもらうわ。フィードって奴とも話しておかないといけないだろうし。俺の戦いはまだ終わっていない。寧ろここからがスタートだ。そうだろう?
「ああ、俺もそう思っているよ。――必ずグリフィスを倒してくれ」
アルフレートが〝
「本当にありがとうございました。これで
「本当にアルフレートさんは幸せだよな。こんな可愛らしい嫁さんに出会えて」
「……これ、ブーメランですよ。とりあえず、可愛いと言ってくれてありがとうございます。それでは、私もこれで――」
「あっ、ちょっと待ってくれ」
持ち物の四●元ポケットな皮の袋に適当な量の虹金貨とその他諸々を詰め込んでシャリスに投げる。
「こいつは二人の新たな門出を祝うちょっとしたプレゼントだ。中にウェディングドレスと白スーツも入れてある。二人ってまだ結婚式挙げてないだろ?」
「……なんで草子さんが私のスリーサイズを知っているのか小一時間ほど問い詰めたいところですが。ありがとうございます……きっと草子さんはいいお嫁さんになれますよ」
「お嫁さんじゃなくて旦那さんな…………あっ」
「ふふふ、では失礼いたしますにゃ」
なんとなく最後の最後に負けたような気がするな。
でも、悪い気はしない。……まあ、白崎達とくっつくとかそんなライトノベルみたいな展開はないけどさ。
さて、俺もそろそろ行きますか。……というか、どこに行けばいいんだろ? こんなモブキャラの救援が必要な人っているのかな?
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