テトラ=カルタ〜六生転輪な七賢者〜 その2
異世界生活百七十日目 場所ラグナ・ヴァルタ島、ヴァパリア黎明結社本部
「君がヴァパリア黎明結社に宣戦布告をしたっていう能因草子か。噂だと国家同盟での政治活動に大商会との交易に学園での教授に魔法薬の開発に八面六臂の活躍をしているんだよね? 冒険者ギルドに登録できないにーとだって聞いたけど、俺とは違うみたいだね」
……まあ、テトラ=カルタは本物の
「おい、仕事しろよ」
「初対面で最初の言葉がそれって手厳しいね。……まあ、全く働かず基本惰眠を貪っているか、惰眠を貪っているか、惰眠を貪っているかの俺と同列には扱われたくないよな。……俺は三度世界を救い、一度世界を支配し、もう世界相手に戦うとか世界のために戦うとか、そういうのに飽きたんだ。今世は普通のニートとしてニートらしくひっそりと生きたいと思ったんだけど、まあ紆余曲折あってね、今はヴァパリア黎明結社でニートをやっているんだよ」
まあ、気持ちはわからなくない訳でもない……と言おうとして、ヴァパリア黎明結社に所属して七賢者やっている時点でアウトだということに気づいたんだが、指摘してやるべきか?
「とにかく、ヴァパリア黎明結社で食事と寝床を貰っている身としては君を倒して……えっと、なんとかってコンピュータを手に入れないといけないんだよね。……えっとなんだっけ? 重要な会議で結局丸々寝過ごしちゃったし、基本結社の活動には関わらないから名前知らないんだけど、とにかく君は分かっているだろうし、とっとと現物出して死んでくれないかな? 俺、眠いし」
なんだろう。平然とワイバーンを即死させて非常事態なのに状況もロクに確認せずモ●ハンを始める別の即死チートさんを思わせるマイペースぶりなんだが……おい、一生オネンネさせてやろうか??
ってか、キスカヌの情報を渡した上に殺されるってそんな最悪の条件を呑むのは戯けだけだろ!? 農民が田畑を分割相続した結果、分割によって耕地が零細化し,担税能力が減少したことが由来の田分けと同じく言葉の意味から結果をろくに予測できない奴しかしないよな。
「キスカヌはやらねえし、そんでもってお前は殺すよ。お前が生きているだけで俺の大切な人達が危険に晒されることになり兼ねないからな。俺は危険な芽は摘んでおく質でね、セブンス・クライシス“即死”のテトラ=カルタ」
「随分と舐めてくれているみたいだけど、俺は即死チートだよ? 成長チート? 無限の魔力? 全属性魔法? 即死能力でそんなものは一撃粉砕さ」
……残念。この世界は即死に厳しい世界なのです。……
そもそもこの世界の【即死無効】は、既存の即死スキルを無効化するんじゃなくて、おか●し様の即死に対処するってのがメインじゃないかっていう感じのスペックだからね。無効化しようとしたのは夜●なのか、将又こいつなのか……。
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超越技:
あらゆる耐性を貫通して対象を即死させる超越技。ゼドゥーに敗北した際に発現した。
一時間に一度しか使えないため、奥の手として使うのがベター。
第一の前世、帝国の皇帝カエサル=ノーデムフェレダの能力。あらゆる物質を想像可能な高次元物質
超能力:略奪
第二の前世、超能力者ヴァシスハウル=モージュームの能力。あらゆる超能力者に憑依することで能力を略奪することができる。予知、凍結、発火、瞬間移動、物質変化、障壁、透明化、電撃、念動力、念写、崩壊、テレパシー、自動翻訳、探知能力、完全記憶、リセット(擬似的に世界の時間を巻き戻す)、声転送(時間と場所を超えて声を届ける)、幽体離脱、記憶操作、感情色視認、固定能力(対象を固定することであらゆる干渉を無効化する)などその数は万を超える。
第三の前世、三条慈水の能力。位階Ⅹで
魔子式魔法:
第四の前世、魔導皇グレーテスィト=グロウリーの能力。意思を反映させる魔法で願うだけで事象を発動させる究極魔法。
第五の前世、フェデリック=シュービッツの能力。時空や世界線を超越してその魂を探し出して
テトラ=カルタの即死能力。
・通常の即死。《通常即死》
・害する意思を持った相手に強制的に死を与える。《強制即死》
・害する意思がなくても対象に死の可能性がある場合に因果を収束させて死に至らしめることができる。《収束即死》
・殺意を持った時点で時間移動や時間移動を行おうとしても逃れられず、必ず死に至らしめられる。《時空即死》
・死の概念が存在しなくても死ぬ。《絶対即死》
・全世界線に存在する対象を纏めて殺す。《全敵即死》
・物質や空間、概念などでも殺せる。《概念即死》
・他者や他世界などを通して攻撃しようとした場合でも殺せる。《遠隔即死》
・無限に復活できる相手も完全に殺せる。《存在即死》
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とりあえず、奥の手の
【(――超越技の発動条件、受諾致しました。
【(――発動の成功を確認しました。即死耐性を貫通する攻撃の無効化スキル――【即死耐性貫通即死無効】を獲得しました)】
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【即死耐性貫通即死無効】LEVEL:MAX(限界突破)
→即死無効を貫通する即死攻撃を無効化するよ! 【即死無効】の上位互換だよ! 抗体スキルだよ!
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さて、勝負開始と行きますか。
【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】を発動して、虚数空間からエルダーワンドを取り出す。
「死ね」
一種類の力を放った……ように見せかけて、実際は俺を殺すための《通常即死》と《全敵即死》の複合と、俺のエルダーワンドを殺すために放った《絶対即死》と《概念即死》の複合か……危ない危ない、エルダーワンドに《時空即死》と《全敵即死》を使われていたらエルダーワンドの概念そのものが殺されていたわ。
虚数空間から二本目のエルダーワンドを取り出し、今度は【即死無効】を付与しておく。
「なるほど、【即死無効】を持っているのか……厄介だな。では、これならどうかな?
「狂ったように貪り喰らえ! 【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】」
俺の影が肥大化するように伸び、薄く引き伸ばされた闇が泡立ち、不浄な言葉を圧縮 したような、耳にしただけで気が狂いそうな咆哮のような音と共に狂ったように溢れた闇 が触手のような形を取り、三十の鏃の一切を喰らい尽くす。
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【創造之神】LEVEL:MAX(限界突破)
→あらゆる物質を想像可能な高次元物質である
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……前の超越技の希望も絶望も超える人間の最も深い感情の時もだけど、なんでポンポン希少能力をスキル化できるのかな? まあ、できるのに越したことはないんだけど。
というか……。
「あの、カエサル=ノーデムフェレダさん。フォード・クライシス“終焉”のノストラダムスことノストラダムス=アワリティアってヴァパリア黎明結社の七賢者にいますよね? 長年堕ちた創造神から世界を守ってきた者として見逃していていいんですか?」
「もう俺はカエサルじゃないからね。別にこの世界がどうなろうと知ったこっちゃないし、お互い不干渉だって七賢会議で会った時に取り決めをしたからこっちから喧嘩を吹っかけるつもりはないよ。前世は前世、今世は今世。前世敵対していた勇者と魔王が平和な世界の高校生に転生して、過去の因縁を引き摺って対立するってことはほとんどないだろ?」
いや、その手の話って結構あるよ? というか、テンプレじゃない、それ。
昨今、異世界行き過ぎって結構言われているし、新しい風でファンタジー世界から地球に転生っていう逆パターンが流行るんじゃないかな……流行らない??
「あちらさんも俺のニート生活を邪魔しないって約束してくれたし、俺としては別にノストラダムスさんがこの世界を滅ぼそうと俺の優雅なニート生活を邪魔しないなら放置でいいかなって思っている。ノストラダムスさんの手助けをするつもりは更々ないよ」
いや、見逃している時点で同罪と思うんだが……というか、ノストラダムスが世界を滅ぼしたらニート生活送れなくなるよね!?
まあ、ノストラダムスの方は思わず胸を撫で下ろしたと思うけど……この人、転生して即死チートになっているし。終わり切ったものの残滓そのものでと一撃で殺せるんだから、そりゃ触らぬ神に祟り無しで全力で対立を避けるよな。
「では、これならどうかな?
ユ●キが最終戦で使った時間停止と
《
「この程度じゃ俺を止めるのは無理だと思うけど? 如意の儘に貫き通せ――エルダー・ランス」
エルダーワンドを三叉に分かれた先端が槍の如意棒へと変化させ、テトラへと高速で真っ直ぐ伸ばす。
「
「刃を砕け――
第三の前世、三条慈水の防御の
ちっ、エルダーワンドの先端が砕けたか……どんだけ硬いんだよ!?
「盾を砕け――
そして攻撃を防いだところで万物を切り裂く光を宿す攻撃の
「まさか固定強化した
奥の手?
「
おいおい、ここに来て前世の嫁達を召喚するかよ……両手に花の俺羨ましいだろって言いてえのかァ!?
◆
つまり、
唯一の例外はテトラ=カルタ。
「
ユリシアとサラシャの抜け殻に魔法陣が展開され、二人の上からの上から同じ質量の半透明の何かが降ってくる。
「ここは…………どこ?」
「私は魔導宮に攻め入ろうとする不埒な連中と戦っていた筈だわ! ここはどこなの!? グレーテスィト様の元に返しなさい!!」
あゝ、魂を
「おーい、一度目の前世が堕ちた創造神と戦う帝国の皇帝カエサル=ノーデムフェレダで、二度目の前世が超能力者が戦争の兵器として使われるという最悪の未来を回避したヴァシスハウル=モージュームで、三度目の前世が月宮玉桂を倒し、とある技術により魂を形にする力を手に入れ、幼少の頃からの因縁に終止符を打った三条慈水で、四度目の前世が意思を反映させる魔法で願うだけで事象を発動させる究極魔法を操り、世界を支配した魔導帝国の魔導皇グレーテスィト=グロウリー、五度目の前世が時空や世界線を超越してその魂を探し出して
「…………ジスイ、なの?」
「グレーテスィト様、なのですか?」
全く気づかないから助け舟出してやったけどさ……うん、出さずに放置した方が楽に立ち回れたかな?
純銀を溶かし込んだような美しい銀髪をポニーテールにした、淡雪のような白肌、深紅の瞳を持つ少女。
緋色の髪を持つ黒いドレスを身に纏った妖艶な女性。
――この二人が、テトラが前世で出会った最も信頼を置く二人か。
「流石に姿形が変わったら分からないんじゃないかな? しかし、君も見た目に反して随分乙女チックなんだね」
「五月蠅いなァ。男に乙女チックとか、一部の例外を除いて似合わねえだろ? 特に俺とか。夢見がちな幼女に変身してやろうか!?」
まあ、弱体化するから絶対てめえの前ではやらねえけどな。
「そうだよ、ユリシアさん、サラシャさん。今はテトラ=カルタと名乗っているけど、俺は三条慈水でグレーテスィトだ。……二人とも、もう一度俺に力を貸してくれないか」
「勿論……ジスイは私の相棒。それは、生まれ変わっても決して変わらない」
「グレーテスィト様、私は貴方様に救われた時から貴方と共に歩むと心に決めました。それは生まれ変わっても決して変わりませんわ」
「ということだよ。ちなみに、俺の
まあ、
「
「世界で最も深い地獄で燃える炎よ! 地上を焼き払うべく顕現せよ!! 《
魂そのものである
「空を呑め――
空間に穴を開けることでワームホールを作成する
「【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】!!」
【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】で《
「…………ジスイ。この人、玉桂より強い」
「いや、
「……なんでもお見通しなんだね、君には。しかし、【物理無効】まで持っているのか? ……もしかして、耐性スキルでガチガチに固めていたりする?」
「Exactly!! 正解のご褒美にインスタントアップルティーを進呈しよう」
「……ありがとうございます。ジスイ、後で一緒に飲みましょう♪」
「なんでユリシアさんは戦闘中に敵からインスタントのアップルティーをもらって喜んでいるのかな!? というか、渡す方も渡す方だよね!? いや、このままだと攻撃が通用しないから倒せずに全滅ってことになるから結局アップルティーは飲めないと思うんだけど」
「…………そうでした。ジスイ、あの人を倒して一緒にアップルティーを飲みましょう」
「……それができたらいいんだけど。さっきので物理攻撃は通用しないって証明されちゃったし……こうなったら奥の手を使うしか」
「グレーテスィト様、魔法は? 魔法なら奴を倒すことができるのではないでしょうか!?」
いや、物理が封じられた時点で魔法も封じられると考えた方がいいと思うんだけど。寧ろなんで魔法だけ通用すると思ったのかな?
「俺は【物理無効】、【衝撃無効】、【魔法無効】、【状態異常無効】、【即死無効】、【因果無効】、【時空無効】、【自然影響無効】を持っている。まあ、ヴァパリア黎明結社もその辺りはきっちり固めているから普通だよね?」
まあ、本当は【存在証明】を持っているし、【即死無効】を上位互換化した【即死耐性貫通即死無効】も持っているんだけど。
「…………そうか、
「超越技――
テトラの奥の手が発動し、あらゆる耐性を貫通する《通常即死》が放たれる……えっと、無効化に成功しましたが。
「テトラ=カルタ。お前が生きているとこの世界で出会った俺の大切な人達が危機に瀕するかもしれない。それに、アルフレートさんが敵対するグリフィス=インビィーツトの前世はお前の第五の前世、フェデリック=シュービッツの弟子――リーフィンド=リュッシュだ。静かなニート生活を送りたいお前は絶対に協力しないとは思うが、可能性が完全にない訳ではない。危険な芽は摘んでおく質でね」
「な、何故! 俺の即死能力が! あらゆる耐性を貫通して死をもたらす俺の超越技が!?」
あからさまに動揺しているな。お前、その即死攻撃に絶対の自信があったんだろ?
「安心しろ。死んだと実感する前に一瞬で消し飛ばしてやる」
「――させません!!」
「グレーテスィト様には指一本触れさせません!!」
テトラがやられると思って攻撃を仕掛けてきたようだが……残念。
既に能力は発動しているのだよ。
「時間拘束能力――
サッカードと呼ばれる速い眼球運動の直後に目にした最初の映像が、長く続いて見えるという錯覚ではない。
【虚空ト異界ヲ統ベル創造ト破壊之究極神】の時間停止の応用で、時間停止の効果がある球体で包み込むというものだ。
「死ね」
三人分の時間停止の球体を《概念即死》で殺したようだが、もう遅い。
「七つの星の輝きよ! 全ての魂を浄化し無に帰せ!! 【
北斗七星の位置で【霊煌ト不見力之妖魂神】を発動し、物体のみならず魂さえも消滅させてしまう光の速度の神聖力で三人の体を魂諸共焼き尽くす。
テトラは危険だし、ユリシアとサラシャも既に死んでいる筈の人だからね。……まあ、流石に輪廻の輪に影響が出るとは思えないけど念には念を……えっ、お前の方が蘇生魔法で輪廻の輪に負荷をかけているって!? ナンノコトデショウ。
テトラ一人で消滅させるのは可哀想だし、三人纏めて消滅してもらった方がいいんじゃないかと思って……ほら、ユリシアとサラシャに恨みもたれてつけ狙われるのも面倒だし。……すみません、こっちが本音です。まあ、狙われたら狙われたで問題なく潰せるからいいんだけど。
テトラ達を消滅させ、勝利。さて、白崎達も問題なく戦っているみたいだし、まだ援護に行く必要はないだろう。……すみません、こんなモブキャラの援護とか必要ないですよね! 身の程知らずですみません!!
ということで、テトラの部屋を後にした俺は二人の反応しかない部屋に向かう。
――さて、約束を果たすとしますか。
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