文学少年(変態さん)は世界最恐!? 〜明らかにハズレの【書誌学】、【異食】、にーとと意味不明な【魔術文化学概論】を押し付けられて異世界召喚された筈なのに気づいたら厄災扱いされていました〜
高位付加術と魔法剣士の相性は最高なのだろうか?
高位付加術と魔法剣士の相性は最高なのだろうか?
異世界生活百四十七日目 場所コンラッセン大平原、能因草子の隠れ家(旧古びた洋館)
「ようこそ俺の部屋へ……散らかっていてごめんね」
「……これのどこが散らかっているのかな? 草子君?」
いや、机の上に書き掛けの原稿が置きっぱなしになっているし、実験用に取ってきたマンドラドラとマンドラゴラの鉢植えが置き去りになっているし、作りかけの魔法薬も置き去りになっているし……いや、散らかっているよね??
「さて、白崎さん、レーゲン君、照次郎君、孝徳君の四人を呼んだ理由なんだけど……」
「僕達に共通する
おっ、流石はレーゲン。察しがいいな。
「まあ、勇者だけじゃなくて魔王にも関係があるんだけどね。実は勇者と魔王に対応する聖剣と魔剣について解析を進めていたんだけど、なんかまだ明らかになっていない部分があるらしくて……」
「……もしかして、それを草子が見つけてくれたのか?」
「いや、全然?」
照次郎よ……そう落胆されてもな。そもそも俺はただのモブキャラだぞ?
「まあ、書物にも書いてないし
「……まあ、例えその力を使っても草子さんには勝てないと思いますけどね」
孝徳よ、なんでそんなネガティヴなことを言うんだ? というか、こんなモブキャラくらい簡単に超えないといけないと思うんだけどな。
「一応、こっちでも調べては見るよ。まあ、俺は勇者でも魔王でもないただのモブキャラだから大したことは調べられないと思うけどね」
「……草子君はただのモブキャラじゃないと思うけど、確かに勇者でも魔王でもないから試してみることはできないよね。ありがとう、草子君」
「いえいえ、なんの取り柄もないモブキャラにできることと言ったら主人公な皆様のお役に立つことですから」
なんか白崎達からジト目を向けられたんだが……何か変なこと言ったかな?
◆
「コンスタンスさん、前々から思っていたんだけど【付与魔法】って他の魔法よりもどうしても下に見られがちだよね。というか、実際に弱い……」
「やっぱり草子さんもそう思うのか……やっぱり、勇者パーティには
かつてのコンスタンスならば、【付与魔法】を馬鹿にした俺に敵意を抱いていただろう。
【付与魔法】でパーティを支えてきたコンスタンスは、しかしその縁の下で支えてきたありがたさを理解されずビッ……メイヴィスに絆されたアズールによっていとも簡単に解雇された。
コンスタンスは一ノ瀬と出会うまでアズール達のことを忘れるために、二度と仲間を頼らないために【付与魔法】を封印し、己だけで戦う術を模索した。
一ノ瀬に出会ってからは一ノ瀬達に頼ることも増え、【付与魔法】の封印も解いたようだが、かつてのような【付与魔法】一辺倒のバトルスタイルには戻っていない。
コンスタンスは聡明だ。なんたってアズール勇者パーティの影の……というか、真の
というか、経理やギルド相手の事務仕事を一手に引き受け、BUFFやDEBUFF、MPの管理……しかも作戦の立案までしていたみたいだし……いや、この人を追放するってなんなんだろうね? 勇者アズールとはアホの子なのだろうか?
「まあ、あくまで事実の確認だよ。もしコンスタンスさんを追放するという話になるなら、その前になんの取り柄もない無駄飯食らいのモブキャラさんはきっと
「無駄飯食らいどころか料理は全て引き受けてくれているし、寝床も無償で貸してくれているし、作戦立案から実行まで一人で全部できちゃうし、貴方を無駄飯食いと言える人は少なくとも草子さんの周囲にはいないと思いますよ?」
あらやだ。コンスタンスさんったら、お世辞までお上手ね……何キャラ?
「まあ、あくまで事実の整理だ。勇者アズールのように
「昔は……割と安かったわね。まあ、女だって理由と
「いや、別に瞬殺で作った装備だし、料理も最近は魔獣肉を変換した超お手軽料理だからお金なんて取れないし、場所も余っているからね。寧ろ使ってくれてありがとさんです。魔獣も自分達で狩っているんだし、部外者かつ冒険者でもなんでもない俺なんかに支払う必要はないよ」
「ホント……なんで冒険者ギルドはルールを曲げてでも取り込まなかったのか疑問よね」
いや、別に俺は大したことないし。異世界ガイアだと冒険者扱いしてもらえるから大丈夫だよ?
「話を戻すけど、【付与魔法】にはいくつか種類がある」
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・属性付与系
武器などに属性を付与する。
「〝真紅の炎よ、我が武器に宿れ〟――〝
炎を武器に付与する。
「〝流れる水よ、我が武器に宿れ〟――〝
水流を武器に付与する。
「〝凍てつく冷気よ、我が武器に宿れ〟――〝
冷気を武器に付与する。
「〝眩き電撃よ、我が武器に宿れ〟――〝
電撃を武器に付与する。
・強化付与系
ステータスを上昇させる。俗に言うBUFF。
「〝我が仲間に力の加護を与えよ〟――〝
味方筋力上昇。
「〝我が仲間に守りの加護を与えよ〟――〝
味方耐久力上昇。
「〝我が仲間に速さの加護を与えよ〟――〝
味方速度上昇。
「〝我が仲間の魔を強化する加護を与えよ〟――〝
味方魔法攻撃力上昇。
「〝敵より魔を奪う加護を与えよ〟――〝
味方に敵に攻撃した時にMPを吸収する加護を与える。
「〝癒しを助ける加護を与えよ〟――〝
味方回復力上昇。
「〝汝の刃に光の加護を〟――〝
武器に切れ味を上昇させる光を纏わせる。
「〝全ての制限を解除し、十全なる力を使わせ給え〟――〝
対象の味方一人の能力リミッターを解除し、一五秒ほどの全体的なステータスアップと同時にMPを無制限に使用できる状態にする。
・弱体付与系
ステータスを上昇させる。俗に言うDEBUFF。
「〝落ちろ落ちろ、速度よ落ちろ。鈍間な蝸牛の速さまで〟――〝
速度低下。
「〝その者より攻撃力と魔法攻撃力を奪え〟――〝
攻撃力低下。
「〝その者より防御力と魔法耐久力を奪え〟――〝
防御力低下。
・状態異常系
状態異常を引き起こす。
「〝沈黙せよ。静かなる夜のために〟――〝
詠唱禁止の状態異常を引き起こす。
「〝猛毒に苦しめ〟――〝
毒の状態異常を引き起こす。
「〝麻痺せよ〟――〝
麻痺の状態異常を引き起こす。
「〝果てしなき眠りに沈め〟――〝
眠りの状態異常を引き起こす。
・魔力系
MPの操作を行う。
「〝魔を操り分配せよ〟――〝
パーティ全員のMPをすべて吸収し、平均して返す。
「〝魔を操り移動させよ〟――〝
自らのMPを時間差でパーティーの仲間に移す呪文。
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紙に一覧を書き、コンスタンスに見せる。コンスタンスにとっては常識的な話なのだが、なんで今更初歩的なことをという表情は見せなかった。
「まず、属性付与系。これは【魔法剣】というスキルで代用が可能だ。【付与魔法】がなくても【魔法剣】さえ覚えて仕舞えば代用が効く。魔法剣士って異世界カオスだと割と取りやすい職だと思うから、必要性は薄いんじゃないか、と勝手に思っている」
属性付与系の隣に「魔法剣代用可」と書き込んでおく。
「次に強化付与系と弱体付与系。確かに長期戦において弱体付与系は大きな影響力を持つだろうが、短期戦では一発【爆裂魔法】を撃った方が良かったりする……まあ、弱体付与系にはまだ使い道があるということで。強化付与系の方はスキルで代用が可能だ。……まあ、そういう身体強化系は大体魔獣が持っているから当てはまらないんだけど」
強化付与系の隣に「スキルで代用可?」、弱体付与系の隣に「長期戦で真価を発揮?」と書き込んでおく。
「状態異常系だが、【無属性魔法】にも似たようなものがある。〝
状態異常系の隣に「【無属性魔法】の〝
「そして、最後に魔力系だが……これは勇者アズールのところでは重宝しただろうが、俺達には
魔力系の隣に「
「こうやって改めて説明されると
「いや、落ち込ませるつもりで言った訳じゃないよ? 実際、それだけの大役を一人でこなしていたのは凄いことだし……俺ならすぐにパンクしているよ」
「よく言うわね……で、草子さんの目的は【付与魔法】がいかに器用貧乏かを示すことだったのかしら?」
「いや、本題はここからだよ。……そうだな、『君はまだ本当の【付与魔法】を知らない』――って、稀代の
「この世に使えない魔法は存在しないとさえ言われる魔導王にして、ほぼ全ての武器を使えると言われる武器士、近接格闘術も人並み以上に使えるし、スキルも神話級のものばかり……もし、“
「いや、そんなことはないけどさ。俺ってどんなベクトルでも頑張りたいっていう人にはお節介を焼きたくなるから。俺はこんなモブキャラだからさ……俺の知っている知識で、得た技術で俺よりも評価される人が増えるのは嬉しいことなんだよね」
だからお金を積まれても、色仕掛けを掛けられても絶対に教えない。
本当に強くなりたいと願っているのに、そのためのきっかけがないのなら、そこで俺に背中を押せるのなら押してあげたい。
だが、俺ができるのはきっかけを与えるだけ。
だって俺はモブキャラだから。そして、本当に強くなっていく人は最終的に自分で考え、自分だけの方法を見つけて強くなっていくものだから。
「さて、本題に入るとしよう。今回、コンスタンスさんに紹介するのは【高位付加魔法】というものだ。……まあ、「緋色●絶望」って
まあ、応用力自体は高いけど、魔力の消費的に見れば普通に魔法を使用した方がコストが低く済む。応用力の対価に魔力を差し出しているって感じなのかな?
「その【高位付加魔法】というのを教えてください」
「オーケー。じゃあ、コンスタンスさんは今日から
「…………お〜い、草子さん戻ってきて。貴方じゃないから隕石を落とすのは無理だし、大地全体に魔法効果を付加するとか無理よ!!」
うーん、コンスタンスは俺のことをどうやって見ているのかな? とりあえず小一時間問い詰めたいけど……。
「とりあえず、呪文だけ教えるよ。呪文は〝付与は新たな境地に到達した。環境を変え、気候を変える力は最早付与術にあらず〟、魔法名は〝
「分かったわ。……流石にここでは試せないから、明日辺りに試してみる。楽しみにしておくわ」
……まあ、これで世界初にして最強の
ところで、これだけ強力な戦闘力を得て、勇者パーティは一体どこに向かっているのだろうか? ……これだけ強化されたら魔王が瞬殺されそうだ!!
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